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こんにちはMasaユナイテッドです。
21-22プレミアリーグ第10節 アウェイ、トッテナム・ホットスパー・スタジアムでトッテナム(スパーズ)と対戦したユナイテッド。前節リバプール戦の大敗から立ち直る為にも勝利が必要なスールシャール監督は、この試合で3-5-2(5-3-2)システムを今シーズン初投入します。試合は前半39分にロナウドのゴールでユナイテッドが先制すると、後半の64分にカバーニのゴールで2点目。さらに、71分にピッチに入ったラッシュフォードが86分にダメ押しのゴールを決めて0-3で快勝!勝ち点3を獲得しました。
*試合のハイライトはこちら
今回はこの試合で見せた3-5-2システムに関しての記事。3-5-2システムの目的やポイント、また、このシステムがユナイテッドの救いの一手となるのかなどを考察します!
以下項目です。
👿ラインナップ

①3-5-2システムの目的
スパーズ戦、アタランタ戦、シティ戦の3試合の結果次第で解任もあり得るスールシャール監督。その初戦となったスパーズ戦でスールシャール監督は、これまでこだわってきた4-2-3-1システムを捨てる選択をしました。3人のCBにWBを置き、2人のストライカーを配した3-5-2(5-3-2)システムを使用。これまでも、スールシャール監督は主に強豪チーム相手に3バックシステムを使っています。3バックシステムを14回使用し、7試合で勝利し4試合で負けていますが、昨シーズンのCLアウェイのライプツィヒ戦で負けて以来このシステムは封印されていました。
スパーズ戦にこのシステムを使った最大の目的は
これに尽きるでしょう。失点しない事を最大の目的としており、今シーズン見られてきた緩慢な守備を改善するためのシステムでした。前半から、ユナイテッドはチーム全体で守備意識が高く、そこまで積極的なハイプレスは仕掛けないものの、右インサイドハーフ(IH)に入ったブルーノが、高い位置へプレスに行く時は後ろも連動して、人を捕まえに行っていました。4-2-3-1のスパーズに対して3-5-2を使うことで、フォーメーション的に噛み合う形なので、基本的にはマンマーク対応になります。今シーズン、ゾーンで守ってきたユナイテッドですが、1対1の対応やマークの受け渡し、カバーリングのなどに課題を抱えてきました。マンマークにし、各々の基準点をはっきりすることで判断に迷いがなくなり、対応しやすくなったことは明らかに見て取れましたね。

さらにリトリートする意識も高く、5-3-2でしっかりブロックを形成。ケインやソンなど強力なアタッカーを揃えるスパーズも、さすがに後ろ8人のブロックを崩すのは至難の業でした。スパーズのシュートは9本。枠内シュートは0本。ビッグチャンスは2回を記録していますが、どちらもセットピースからでした。数字からもスパーズに全くつけ入るスキを与えなかったことがわかります。皮肉なことに、このシステムに対して苦戦するというのは、昨シーズンまでヌーノ・サント監督率いるウルブスに対してユナイテッドが見せていた姿です。率いるチームが変わり、逆にユナイテッドにやられた形となりました。
ユナイテッドは過去22試合で2回目のクリーンシートを達成。目的を遂行できたと言えるでしょう。
②3-5-2システムのポイント
前項でも述べた通り、このシステムの目的は守備にあります。後ろに人数を掛けることで失点を抑えることが目的でしたが、いくつかのポイントがありました。まずは、先述したとおりマンマークを基本にしていることで、1対1の対応がしやすかったこと。この試合では、必ずボールホルダーに誰かがプレスを掛けにいっています。これは当たり前のことなのですが、今シーズンのユナイテッドは緩慢なシーンが多く、ドリブルで運ばれる場面が目立っていましたが、スパーズ戦は基準点をはっきりしたこともあり迷わずにプレスにいっています。
さらに、バックラインに3人のCBを置いたこと。今シーズン4バックで戦ってきたユナイテッドは、幅を取った攻撃に弱さを露呈してきました。相手の侵攻を止められないのでボールサイドにバックラインがスライドし、逆サイドからの侵入を許してきました。スパーズ戦では中央にヴァランを配し、両脇のマグワイアとリンデロフが思い切って迎撃に出ていくことでソリッドな守備組織を作っていました。もし、抜かれてもヴァランという最後の砦が控えているということは、メンタル的にも大きく作用しているように思いましたね。守備面に関してはヴァランありきのシステムといえ、マグワイアがディフェンスリーダーという重荷から解放されたようにも思えました。
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そして3人のセントラルミッドフィールダーを使ったこともポイント。アンカーのマクトミネイは11回の地上デュエルに勝利(今シーズンのユナイテッドで最多)し、フレッジはボックス・トゥ・ボックスで攻守の切り替えの場面で躍動。そしてブルーノはIHで攻守に高いレベルを披露しました。中盤に求められるタイトさ、運動量、創造性を見事に見せたこの3人の組み合わせは素晴らしかったと思います。
前線のポイントはやはり2トップにしたこと。そしてロナウドにカバーニを組み合わせたことです。これは多くの方が言っていましたが、ロナウドは運動量的にも、ネガトラの面でも明らかに2トップ向きの選手です。そして、そのパートナーには献身性が求められます。そういった意味でカバーニが最適解だと思います。これまで、加護にしてきたグリーンウッドでも、エースのラッシュフォードでもなく、カバーニをチョイスしたことはスールシャール監督の英断だったと思います。そして、この2人に向けてクロスを入れる事も主な戦術としていました。
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最後に両WB、ワン=ビサカとショーの2人もこのシステムで大きな役割を担いました。大外のレーンを1人で担当した2人。負担は大きかったと思いますが、後ろは人数がいるという安心感と、前は誰もいないので遠慮せずに上がれるということもあり、幅担当として攻守に貢献度が高かったです。特に先制するまでのワン=ビサカは文字通り躍動。本来の持ち味である思い切りの良さを発揮し、浮かい位置までオーバーラップし攻撃に厚みをもたらしていましたね。
③問題は解決されたのか
このように大胆なシステム変更で戦術面の改善を行ったユナイテッドですが、この1試合だけで、全ての問題が解決されたかというとそんなことはないでしょう。当たり前ですが付け焼刃感は否めず、先制してからはかなりラインを低く構えてカウンターを狙う戦い方は、ビッグクラブのそれではありません。後半には最終ラインに7~8人並ぶようなシーンもあり、個人的に能力の高い選手をこれだけ並べれば、「そりゃ失点しないよね...」という印象。
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さらに攻撃面でも、組織的な連携や崩しがあったというよりは、ブルーノ、ロナウドなどのクオリティに依存しており、連動したポジションチェンジや、可変などがあった訳ではありませんでした。やや厳しい言い方をすれば今回の5-3-2システムは、原始的であり世界のトップクラブの見せるレベルではなかったと思います。スパーズ戦は機能した5-3-2ですが、やはり今回だけのオプションと捉えておくべきでしょう。確かにシティ戦などは再び5バックを使う可能性は多いにありますが、本来の4バックに戻した時に攻守に機能して初めて、ユナイテッドが今シーズン抱える多くの問題が解決されたと見るべきだと思います。
とは言え、今回のシステムでその問題の解決の糸口となるような項目もいくつかありました。それはビルドアップと中盤の構成です。ビルドアップに関しては、以前の記事を参照してほしいのですが、今回のシステムでの組み立てはそこで述べた通りスムーズなビルドアップが可能な「3-2型」になっています。スパーズはそこまで積極的にハイプレスを仕掛けてきませんでしたが、時間帯によって発動された際にはユナイテッドはなんとか(笑)いなしていました。これは配置的にパスコースができやすかったことが大きかったと思います。
*ビルドアップ解析記事はこちら

そして中盤の構成で、ブルーノをIHで使うというのはかなり有効な手段になると感じました。本来は10番の位置で、トップの選手に近いところでプレーすべき選手ではありますが、攻守が分断されがちなユナイテッドにはブルーノがIHにいる事は何かとメリットがあります。視野の広いブルーノはそのポジションでも一流のパスセンスを見せましたし、攻守の橋渡しも問題なくこなせます。ポグバとのダブル8番はバランスを取りにくいですが、今回のブルーノ、フレッジ、マクトミネイ3人の組み合わせは4-3-3への本格移行をしても良いのではないかと思わせるのに充分でした。
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④システム変更により生まれる問題
仮に、今回のような3バックをデフォルトフォーメーションにする場合、発生する問題もあります。それは、システムとメンバー構成が合っていないためにCBの人員不足と、豊富な2列目の選手の出場機会が著しくなくなるという点です。特に2列目は大きな問題で、今回スタメンを外れたグリーンウッドを始め、ラッシュフォード、サンチョなども出場機会が減少します。もちろん3-4-3や3-4-2-1などウィングやシャドーを配した攻撃的な3バックも可能ではあります。しかし、ロナウドを主軸に考えた場合の組み合わせの相性や、そもそもスールシャール監督に今からシステムの落とし込みをさせるのかというと、少し無理があると思います。
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本来のクラブの方向性では、2トップに36歳と34歳を並べることを本意としていないはずです。やはり未来へ向けてラッシュフォード、グリーンウッド、サンチョを前線の核とすべきですし、それこそ多くのサポーターの望むことではないでしょうか。もちろん今シーズンの失速は、これが上手くいかなかった面もあります。ウィングが守備をしないという時代錯誤のやり方が、チームのシステムを4-2-3-1から実質的な「4-2-4」に変化させ、攻守の分断、守備崩壊を招いた面もあります。今シーズンのユナイテッドはウィングが機能していない事は明らかだったので、この崖っぷちの状況でウィングを排したシステムに変更したのは理解できます。
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しかし、それは先述したように根本の解決にはなっていなくて場当たり的です。確かにシステムとしての3バックには大きな可能性がありますし、戦術面で向上できる可能性は大きいのですが、チーム構成的にもクラブの将来性的にも3バックシステムはオプションに留めておくべきです。才能ある2列目の選手達をないがしろにするシステムを使うべきではないと思います。もしやるのなら相当の覚悟でポゼッション主体の、それこそトゥヘル・チェルシーレベルに近い3バックにする必要があります。しかしそれは、恐らくスールシャール監督には不可能でしょう。
👿まとめ
クラブがまだ死んでいない事、まだ野心があること、まだ改善できることを示すためにもどうしても結果が必要だった試合で大きなシステム変更を行い、アウェイで0-3の快勝を収めたことは評価に値しますし、うれしいのは確かです。しかし逆を言えば、ここまで守備に人数を掛けないと守れない程レベルが低下していることの表れでもあります。そして述べてきたように根本の解決には至っていませんし、場当たり的な対処だったと思います。
報道によると、この1週間チーム内で話し合い、意見をぶつけ、タフな時間を過ごした結果のスパーズ戦であり、選手達も納得した上での3バックだったと報じられています。今の状況ではなりふり構わずとにかく結果が必要であり、特に失点をなんとかする必要があったのは間違いなです。システム変更により取り敢えずの結果と、選手達の戦術と選手起用に関しての不満も一旦は軽減されたかもしれません。そういった意味では、今回のシステム変更は最適解だったといえます。スールシャール監督の解任危機が去ったわけではありませんが、この勝利により何かが吹っ切れ、上昇気流に乗っていく可能性もあるでしょう。
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しかししつこいようですが、この3バックはオプションに留めておくべきです。スパーズ戦には最適解でしたが、ユナイテッドの救いの一手にはならないと思います。そして、恐らくスールシャール監督もそう考えていると思います。アタランタ戦、シティ戦は3バックで臨む可能性はありますが、それ以降は戻すのではないかと思います。

21-22PL10 スパーズvsユナイテッド スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

21-22PL10 試合結果 出典:ユナイテッド公式
この結果ユナイテッドは勝ち点17の5位に浮上しています。
次の試合はCL グループステージ4回戦 ゲヴィス・スタジアムでのアタランタ戦。11月3日(水)5:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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