【21-22CL/GSラウンド5】ビジャレアルvsマンチェスター・ユナイテッド キャリック采配を徹底解説!

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22チャンピオンズ・リーグ グループステージ5回戦 アウェイ、エスタディオ・デ・ラ・セラミカでビジャレアルと対戦したユナイテッド。先日のスールシャール監督解任を受けて、暫定監督に就任したマイケル・キャリック監督の初采配となったこの試合。前半からホームのビジャレアルがゲームを支配しますが、ユナイテッドも整備されたハイプレスで決定的なチャンスは作らせません。後半に入り、さらにビジャレアルに押し込まれますが、ユナイテッドは66分にブルーノとラッシュフォードを投入。すると流れが一気に変わり、ユナイテッドがハイプレスから主導権を握り返します。そして78分、ネガトラの場面でフレッジがボールを奪いロナウドへ。これをロナウドが技ありのループシュートで決めてユナイテッドが先制します。さらに90分にはサンチョのクラブ初ゴールが決まり0-2でユナイテッドが勝利!グループステージ首位通過を決めています。

*この試合のハイライトはこちら

www.manutd.com

今回は、この試合で監督デビューを果たしたマイケル・キャリック監督の采配を分析、解説します!スールシャール前監督と何が変わったのか。この試合でキャリックがやりたかったことは何なのかなどについて考察しました。

以下項目です。

👿ラインナップ

f:id:masachesterutd:20211126222135p:plain
21-22CL/GS5 ビジャレアルvsユナイテッド ラインナップ

①前半

1-1.選手起用とシステム

スールシャール監督解任により、暫定監督に就任したマイケル・キャリック。初陣となったビジャレアル戦の采配を見ていきます。まず注目されるのは、その選手起用とシステムです。プレーメーカーで、ほぼスタメンが確約されていたブルーノをベンチに置き、変わってワトフォード戦で印象的な活躍を見せたファン・デ・ベークを先発に。そして、前線にはラッシュフォードではなくマルシャルをスタメン起用しました。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

スールシャール政権下では出場機会に恵まれなかったファンデベークは、チャンスを与えられた形だと思います。マルシャルに関しては、正直マルシャルである必要性はそこまで感じず、ラッシュフォードでも良かったと思いますが、マルシャルも出場機会や、トレーニングでの仕上がり具合、ロナウドとの相性などが選ばれた理由かもしれません。

システムは4-3-3っぽいですが、4-2-3-1の亜種という感じもありました。いずれにせよ、フェーズにより細かく配置を変えるやり方を取っており、スールシャール期にはなかった形です。これをわずか2〜3日で仕込んだキャリック監督は監督としてなかなかの才能があるかもしれないと思わせてくれましたね。

1-2.開始から20分まで

ユナイテッドは、開始から20分までとそれ以降でやり方を変えています。まずは20分までを見てみます。開始から見せたシステムの特徴は、ロナウドとマルシャルのポジションです。通常ならばロナウドがトップに入りますが、この試合ではロナウドを左サイドに配置。攻守両面で大きなタスクを貸しています。ユナイテッドはボール非保持時に4-4-2へ可変しています。スールシャールの時もリトリート時は4-4-2へ可変する形を使っていますが、ビジャレアル戦ではミドルサードから4-4-2の形になります。

そして最大の特徴は中盤4枚を右からサンチョ、ファンデベーク、マクトミネイ、フレッジと並べた点。左のロナウドは非保持の時にはビジャレアルの右CBであるアルビオルを牽制しつつ、SBのフォイスにボールを出させる役割を担いました。そこへフレッジが出て行く形でビジャレアルへハイプレスを掛けるシーンが開始から見られた形です。

f:id:masachesterutd:20211127001658g:plain
20分までのハイプレス

プレスに関してはこの試合の大きな変化点であり、テーマだったと思いますが、ビジャレアルの自陣からのビルドアップに対しては、しっかりと人を捕まえる事が決まり事としてある印象で、4-4-2でセットした状態から、ビジャレアルの4バック+2ボランチを捕まえるやり方でした。低い位置でボールを受けるキャプーにもマクトミネイが前へ出てプレスに行っており、掻い潜られると結構危ないシーンを作られるリスクはありましたが、リンデロフやマグワイアもしっかり前のプレスと連動してラインを上がる姿勢を取っていたことは評価できます。

そして保持に関しては、徹底した左偏重を見せました。正確には左に拘ったというよりは、ロナウドに拘ったのだと思います。これまでトップの位置で孤立しがちだったロナウドを、重要な起点とすることをキャリック監督は目指したと思います。ユナイテッドのビルドアップも左左にボールを動かしており、マクトミネイやワン=ビサカもボールを受けても左に戻すシーンがほとんどでした。さらにデ・ヘアのキックもほぼロナウド目掛けて蹴っており、左サイドのロナウドを起点としようとしたのは間違いないでしょう。ロナウドば前半のボールタッチ数が27回を記録。後半は15回になっています。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

しかしながらこの結果、右サイドのファン・デ・ベークやサンチョがほとんど絡めない状況に陥ります。さらに、先述した4-4-2からのハイプレスもロナウドとフレッジの負担が大きく、ビジャレアルの巧みなボール回しを思う様には止められなかった事もあり、このやり方は20分当たりで捨てることになります。

1-3.20分以降の戦い方

20分頃からキャリック監督はやり方を微調整。まず、ロナウドとマルシャルの基本ポジションを変えます。ロナウドをトップ、マルシャルを左へ。そして非保持時の4-4-2の並びをスールシャールと同じように、トップ下(右IH)のファンデベークが1列上がって最前線へ。左ウィングのマルシャルが下がってサイドハーフへという並びに変更しました。この方がハイプレスをハメるのも、ミドルプレスで4-4-2で構えるのも、ビルドアップ時に4-2-3-1に可変するにもスムーズで、攻守の切り替えは早くなりました。

f:id:masachesterutd:20211127001640g:plain
20分以降のハイプレス

このやり方はスールシャールと同様のやり方ですが、フェーズ事に決まりを設けてシステムを変えているのがキャリックの特徴でしょう。この変更により、ボールが持てるようになったユナイテッド。20分までのポゼッション率が27.6%だったのに対して、20分から前半終了までは61.4%となっています。

②後半

2-1.劣勢の後半

後半の入りも、ユナイテッドはそのままのやり方で試合に入りました。ところが、後半はビジャレアルがボールを持ち続ける展開に。ユナイテッドは後半、意識してハイプレスを控えたようにも見えましたが、プレスのスイッチを入れていたのはロナウドで、彼がハイプレスに行く時は後ろも必ず連動することに決めていた感があります。ペース配分を考えて引く時間にした可能性もありますが、それがチームとして決めたのか、ロナウドの判断だったのかははっきりわかりません。ユナイテッドは後半4-4-2でリトリートしてブロックを作る時間が多く、スールシャール時を思い起こさせる時間帯となりました。

ビジャレアルはこの試合、保持時4-2-2-2非保持時4-4-2の可変を使っていましたが、興味深かったのは保持時の形で、4-4-2の時は2トップの右に入るトリゲロスでしたが、4-2-2-2の時はシャドーに降りて中間ポジションを取り起点となり、代わりにピノが高い位置を取る形でした。左のダンジュマも4-2-2-2の時は左ウィングになるので2トップは実質ウィングという面白いフォーメーション でした。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

f:id:masachesterutd:20211127001626g:plain
ビジャレアルのシステム

後半ボールを握るビジャレアルは、62分にユナイテッドのスライドが間に合わなかったところを突いてダンジュマがシュートに行くシーンがありましたが、守備面の改善にはまだ本格的に手をつけられておらず、スールシャールの遺産を垣間見せるシーンもありましたね。ユナイテッドは結果的に今シーズン3試合目のクリーンシートを達成していますが、前線からのプレスと、メンタリティとデ・ヘアのセーブのお陰で達成できたクリーンシートだと思います。

2-2.選手交代

そんな劣勢の状況を打破する為、キャリック監督は動きます。66分にファンデベークとマルシャルに代わってブルーノとラッシュフォードをピッチへ送り、システムを4-2-3-1へ変更します。そしてこの交代から完全にユナイテッドがペースを掴みます。この2人の投入により、動きのスピード、インテンシティ、パススピード、チームの一体感が1ランクアップ。ラッシュフォードは左サイドとトップのポジションを自由に切り替え、前線の流動性を上げ、ブルーノは巧みなポジショニングで味方のパスを引き出し、攻撃を牽引。71分にはサンチョへ決定的なパスを送っています。この交代によりユナイテッドが押し込む展開でしたが、トランジッションも素晴らしかったです。これは、精神的なものも大きいですが、この試合でずっと続けていたハイプレスの形があったからこそ、ネガトラの時に素早く反応できていたと思います。そして78分、そのネガトラの場面で、フレッジの見事なボール奪取からロナウドが技ありのゴールを決めて先制に成功しました。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

さらに後半躍動したのがMOMにも選ばれたサンチョ。特にブルーノの投入から、右サイドでもボールが回るようになり、サンチョの関与も増えました。大外に張ってボールを受けてからのドリブルの仕掛が素晴らしかったですね。プレミアのワトフォード戦でも、躍動感がありましたが完全にユナイテッドにアジャストできてきた印象を受けます。90分には嬉しいユナイテッドでの初ゴールを豪快に決めたサンチョ。個人的にもマクトミネイに次ぐお気に入り選手となっています(笑)。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

👿まとめ

キャリック暫定監督のこの試合の采配のポイントをまとめると

✅ローテーションメンバーを組み込んだ選手起用
✅フェーズごとにシステムを可変
✅ハイプレスを整備 重要な戦術とする
✅ロナウドを起点とした戦略
✅プランBを用意していた
✅選手交代で流れを変える
✅チームのベクトルを合わせる

といったところでしょうか。このブログでも再三書いてきたように、スールシャール前監督には戦術面の整備不足という大きな問題がありました。キャリック暫定監督のプレスの整備や可変システム、試合中の修正などは正にスールシャール監督にやってほしかった事でした。チームにある一定の規則性を持たせ、同じ方向を向かせることで、チームの一体感、メンタリティが上がります。それをキャリック監督は実践してくれました。

個人的には選手同士が指示を出し合い、声掛けを積極的に行い、意図のわかるミスパスにはGoodサインを送る姿は、昨シーズンの好調時のユナイテッドを彷彿とさせ、この試合で特に嬉しかったポイントです。この雰囲気が戻ってきたことは大きいですし、この空気を維持してほしいと思います。

とはいえ、たった2、3日で戦術を落とし込むのは不可能ですし、改善点を全て修正できたわけではありません。攻守両面でまだ求めらるレベルに達しておらず、クオリティを上げる必要のあることもまだまだあり、試合内容的にはビジャレアルの方が勝っていたことも確かです。戦術面でも、今回はビルドアップの改善はほぼ見えませんでした。前半はマクトミネイとフレッジが同じ高さに並んでのこれまで通りの組立てでしたが、やはり上手くいったとは言えませんでした。後半は、マクトミネイをCB間に落とすやり方をしましたが、そこまで効果は実感できませんでしたね。

キャリック監督が何試合指揮するのかはっきりわかりませんが、このあたりの整備も、指揮する間は徐々に行っていくと思います。キャリック監督は終始ピッチ際に立って選手に指示を送っていました。スールシャール前監督に慣れた我々からしたら「これだよ!監督はこうでなくっちゃ!!」というなんとも素朴な喜び(笑)を与えてくれました。キャリックは戦い方と立ち居振る舞いで、サポーターがスールシャールに求めていたことをピッチ上で見せてくれたような気がしました。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

これを書いている時点では、暫定監督としてラルフ・ラングニック氏の就任が迫っているようです。恐らくキャリックはあと1試合ぐらいしか指揮しないかもしれません。しかし、その強い意志と決断力、アイデアはこれから監督業を生業としていくのだろうなと予感させるのに十分な初陣となりました。

この試合の結果ユナイテッドはCLグループステージを首位で突破。ノックアウトステージ進出を決めています

*スタッツはこちら

www.uefa.com

f:id:masachesterutd:20211126215411p:plain

21-22CL/GS5 試合結果

次の試合はプレミアリーグ第13節 スタンフォード・ブリッジでのチェルシー戦。11月29日(月)1:30キックオフ。キャリック監督の采配にも注目しましょう!カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました