【20-21EL準決勝 1stレグ】マンチェスター・ユナイテッドvsローマ マッチレビュー【戦術比較】

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こんにちはMasaユナイテッドです。

ヨーロッパリーグ準決勝1stレグ ホームでASローマと対戦したユナイテッド。試合は前半9分に、ポグバ、カバーニ、ブルーノの連携からブルーノがゴールを挙げ先制します。しかし、ボックス内でポグバがハンドを取られPKの判定に。これをペッレグリーニが決めて15分に同点とします。さらに33分にもジェコが決めてローマが逆転。しかし、ローマは前半に3選手が負傷交代する事態になり、後半は一転ユナイテッドが猛攻を仕掛けます。48分にカバーニのゴールで同点にすると、さらにカバーニ、ブルーノ(PK)、ポグバ、グリーンウッドと得点を重ねて6-2でユナイテッドが圧勝。決勝進出に向けて大きな勝利を飾っています。

試合の詳細はユナイテッド公式をご覧下さい。

www.manutd.com

今回はこの試合のマッチレビューです。ローマの戦い方と、ユナイテッドの戦術的狙いを比較してみました!

以下項目です。

👿ラインナップ

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EL1st ユナイテッドvsローマ ラインナップ

ベンチメンバー
ユナイテッド:グラント、ヘンダーソン、テレス、トゥアンゼベ、ウィリアムズ、バイリー、マティッチ、マタ、ジェームズ、ファン・デ・ベーク、グリーンウッド、アマド
ローマ:フザート、ミランテ、クンブラ、サントン、ビジャール、ダルボエ、Bペレス、チェルヴォ、マジョラル、Cペレス

①ローマの戦術

現在セリエAで7位に着けるローマ。守備戦術に重きを置くチームが多いセリエAにおいて、フォンセカ監督は攻撃重視のスタイルを貫いています。シーズン前半は好調でしたが、18節のラツィオとのダービーに敗れてから調子を落としているようです。ユベントス、ナポリ、アタランタなどの上位対決で負けていて、この辺りに課題が見え隠れしています。

1-1.ローマのビルドアップ

まずはローマのビルドアップから見てみましょう。ローマの基本フォーメーションは3-4-2-1。ビルドアップは3CB+2ボランチの5人で構築する事が多かったです。ボランチの1角、ディアワラがCB間に入り4バック化。もう1枚のボランチのビジャール(ヴェレトゥと5分に交代出場)がアンカーになってボールを回します。両WBを高い位置に上げ、前線の5人にボールを届けるのが狙い。リーグ戦ではビルドアップに定評があり、後方で失う事はほとんどないという評のあるローマのビルドアップ。後方に足元の技術の高い選手を配置し、選手間の距離を近く保つことでボールロストを減らしているようです。自陣でゆっくりボールを回すことで、相手を自陣に引き込み、前線にスペースを作り攻撃時に活かすという目的もあるとの分析がされていました。

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ローマのビルドアップ

しかし、ユナイテッド戦ではここが上手く機能しなかったことにより、ミドルサードでのボールロストが増えていました。左からの前進が多かったですが、攻撃の核となるスピナッツォーラに早くボールを渡す為なのか、ユナイテッドがワン=ビサカのサイドにプレス誘導したのかははっきりわかりませんが、アタッキングエリアは45%が左になっています。

1-2.ローマの守備

次にローマのディフェンスについて。基本的に、ハイプレスは掛けてきませんでしたが、ユナイテッドの低い位置でのボール保持に対しては、2CBにジェコペッレグリーニが正対し、マクトミネイとフレッジへのパスコースを塞ぎます。マクトミネイにはシャドーのムヒタリアンが、フレッジにはボランチのビジャールが前へ出て監視。ショーとワン=ビサカはWBが見る形をとります。

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ローマの守備

中央で4角形を作り、中央のパスコースを遮断する立ち位置でした。プレス強度は低く、ミドルゾーンから段階的にリトリート。自陣まで運ばれると、2シャドーもサイドの守備に加わり5-4-1でブロックを形成します。スモーリングはポグバにマンマーク気味についていましたし、ブルーノの監視はディアワラが担当していましたが(ユルユルでしたが...)、それ以外はタイトなマークはほとんどなく、この辺りが失点が多くなっている要因のように思えました。

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1-3.ローマの攻撃

続いてローマの攻撃について。ローマは前半に2度のチャンスから2得点奪っています。2得点ともに、起点となったのはポジトラでした。1点目のPKに繋がる場面では、ローマ陣内でのユナイテッドのスローインのボールを奪って一気にゴール前へ。ボックス内へ4人が侵入しています。2得点目は、ローマのビルドアップをユナイテッドが一旦は止めますが、再度ローマボールになり、スピナッツォーラがドリブルでゴール前まで一気に運んだところから生まれています。個人で見るとスピナッツォーラのドリブル、ジェコの起点となるポスト、ペッレグリーニのポジショニングなどがローマの攻撃の核となっているようです。リトリートで相手を自陣に引き込んでおいてから、ボールを奪ったら一気にカウンターで攻めるというのがローマの攻撃です。

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前半に3選手の負傷交代を余儀なくされ、用意したゲームプランが崩壊した可能性もありますが、最初からフォンセカ監督はこれまでの自分たちのやり方を貫く戦い方を選んだと思います。特徴はそのまま出ていましたし、前半だけ見ればローマらしい戦いでリードできました。しかし、ビルドアップ不全、守備の緩さなどから徐々に綻びが出たのは否めません。そこの修正は、交代カードを切り終わっていたのでできなかったことが敗因の1つです。

②ユナイテッドの戦術

そんなローマに対してユナイテッドはどのように戦ったのか見ていきましょう。不完全燃焼に終わったリーズ戦で、後半終盤まで温存したポグバとカバーニが予想通り先発。ポグバを左サイドに、ラッシュフォードを右に配し、中盤はマクトミネイ、フレッジのコンビで臨みました。ローマとの対戦が決まった時、スールシャール監督は「彼ら(ローマ)のことはわからない。彼らのプレーを見ていない」と発言し、フルボッコに合いましたが(笑)、いざ蓋を開ければしっかりローマ対策がなされていました

2-1.ユナイテッドのビルドアップ

まずはビルドアップから。ローマの項で見たように、ローマはユナイテッドのビルドアップに対して中盤を隠す形で対峙します。それに対してユナイテッドは、マクトミネイが右CBに落ちて数的優位を作ります。マクトミネイのこの動きはワン=ビサカを高い位置に上げるのに役立っています。ただし、ローマはそこまでハイプレスを仕掛けないので、プレス回避に苦労する事はあまりありませんでした。マクトミネイが落ちるのも限定的にといった感じ。

ユナイテッドのビルドアップに関しては左サイドが秀逸でした。鍵となったのはポグバ。フレッジへの対応の為にボランチのビジャールが前へ出ますが、それにより空いたスペースにポグバが降りてきます。ポグバにはスモーリングがタイトに付いて来るので、ポグバのいたスペースにカバーニ、もしくはブルーノがポジショニング。これに対応するためにローマの右WBカルスドルップは低い位置に。ショーが浮く形となり、ショーから前進する事が可能になっていました。

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ユナイテッドのビルドアップ

ショーはこの試合ドリブル・アテンプト3回で3回成功。キーパスこそ1回のみでしたが、SCAは5回を記録。後半は逆にポグバが大外に張って、ショーがインナーラップを度々見せ、厚みのある攻撃を作り出しました。

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2-2.ユナイテッドの狙い①

ユナイテッドがこの試合、明確に狙ったことがあります。まず1つ目はハイプレス

ローマのストロング・ポイントであるビルドアップに対して、ユナイテッドはハイプレスを掛け、ミドルゾーンでボールを奪う場面が多かったです。ローマは、3バック+2ボランチの5枚でビルドアップするのに対して、ユナイテッドは前線4人でプレスを掛けるので、基本的には数的不利なのですが、中盤の2人と、SB(特にワン=ビサカ)がボールの出どころにしっかりプレスを連動して掛ける事でボールを奪う、もしくはローマのミスを誘うという形が機能していました。ローマのビルアップのやり直しに対して、ポグバがインターセプトし、カバーニに繋いだ前半アディショナルタイムのシーンは象徴的でしたが、徐々にローマは後方からのつなぎを諦め、ロングボールをジェコ目がけて蹴るという形が増えていきました。

ある意味、ローマが後方から繋ぐことも、相手を自陣に引き込んでライン裏にスペースを作るという目的もあると思いますが、そこへ至る前に潰せるだけのプレスの勢いがユナイテッドにはありました。特に後半のフレッジのバイタリティーには脱帽。縦横無尽にピッチを走り回りどんどんプレスを仕掛けました。83分の交代時には不満の表情を見せましたが、本人もパフォーマンスに手ごたえがあったのでしょうね。

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プレスの回数トップ5はカバーニ(25)ブルーノ(25)マクトミネイ(24)フレッジ(20)ポグバ(17)となっていて数字からも前線のプレスが際立っていました。

2-3.ユナイテッドの狙い②

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もう一つ、ユナイテッドが狙ったのがローマの3CBの両脇のスペース。特に右のラッシュフォードは顕著に狙いましたが、ビルドアップの項でも書いたように、カバーニも右CBの外側を狙っています。前半に、デ・ヘアの右奥を狙ったキックに対してブルーノは拍手を送っていますが、チームとしてここを狙うのはこの試合のテーマだったと思います。CBを広げる事で中央にスペースを作り、ブルーノ、ポグバの攻撃力を活かす戦術はシンプルながら効果的でした。後半になるにつれて、ローマは5バック化を顕著にしていきますが、どうしてもネガトラの場面でWBが前へ出ているので、カウンター気味にユナイテッドがスペースを使うシーンが出てきます。

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ユナイテッドの狙い②

2点目、3点目、6点目は、得点に至るまでの過程でこのスペースを使っていて、チャンスシーンで言えばより多くの場面で使っています。ローマはもっと失点していた可能性も否定できない程、ここへの修正ができませんでした。ユナイテッドはワン=ビサカやショー(後半はポグバも)が大外に張る事でローマのWBをピン止め。中央ではブルーノがディアワラのマークの緩さで躍動し、後半はフレッジ、マクトミネイも積極的に飛び出し中央を攻略しました。ローマがメンタル的に戦えなくなったとはいえ、これほど上手くいく試合はプレミアではなかなかないと思います。

👿まとめ

2G2Aをそれぞれマークしたブルーノとカバーニは文句のつけようのないパフォーマンスでした。両者ともにSCAは最多の7回を記録。ブルーノは5本のキーパスを繰り出していますが、面白いようにパスでゲームメイクしていました。ポグバも左WGの仕事が板についてきましたね。圧巻のキープ力からの視野の広いパスで攻撃に絶妙なアクセントを加えています。さらにショーとの連携も良く、ポゼッション戦術時には現時点では最強のフォーメーションだと思います。

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9分に素晴らしい連携から先制するも、PKとカウンターから逆転され、前半終了までは浮足立ってしまいましたが、ハーフタイムのチームメイト同士の声掛けや、監督の話でモチベーションを上げ、後半は見事な積極性で5ゴールを挙げ逆転しました。前半に負傷により交代枠3つを使い切ってしまったローマにとっては不運な面もありましたが、個のクオリティでユナイテッドに付いていけなかったのは明らかでした。解任の噂も出ているフォンセカ監督は、戦術的な柔軟性に欠けるのかなという印象の1stレグ。リーグでも上位陣対決で勝てていなかったり、ユナイテッドに対しても、特別な対策を立てていないというのはビッグクラブの監督としては少し厳しいかなと思います。

*スタッツはこちら

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この結果、圧倒的優位の形で2ndレグを迎えるユナイテッドですが、今回の狙いがまた上手くいくとは限りません。ローマが2回のチャンスで2得点したという事は、スールシャール監督が試合後語ったように

(ローマは)それほど多くのチャンスは作っていなくても得点を決められるということだ。ローマでは(2ndレグでは)、彼らは4、5、6回とチャンスを作ることだろう。

という事。確実な試合運びを期待したいですね。

2ndレグはオリンピコで5月7日(金)4:00キックオフ。優勝が見えてきました!まずは決勝進出!カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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