こんにちはMasaユナイテッドです。
遂に迎えた20-21ヨーロッパ・リーグ決勝戦 ポーランドはグダニスクの地で観客9000人を迎えてビジャレアルと対戦したユナイテッド。試合はユナイテッドがボールを支配する展開でしたが、29分にセットプレーからジェラール・モレノが決めてビジャレアルが先制します。後半になってもブロックを作るビジャレアルを崩せない展開が続きますが、55分にユナイテッドもセットプレーの流れから最後はカバーニが決めて同点とします。しかし、120分の延長戦でも決着がつかず試合はPK戦へ。11人全員が決めたビジャレアルに対して、ユナイテッドは11人目のデ・ヘアのキックがルジに止められて敗北。ヨーロッパリーグのタイトル獲得はなりませんでした。
試合の詳細はユナイテッド公式をご覧下さい。
あと1歩のところで届かなかったタイトル...。今回はタイトルを逃した理由にスポットを当てて決勝戦を振り返りたいと思います。
以下項目です。
👿ラインナップ

ベンチメンバー
ビジャレアル:アセンホ、エストゥピニャン、ペーニャ、ガスパール、フネス=モリ、A.モレノ、コスタ、コクラン、モイ・ゴメス、ニーニョ、アルカセル、ラバ
ユナイテッド:グラント、ヘンダーソン、テレス、トゥアンゼベ、ウィリアムズ、マグワイア、マティッチ、マタ、ファン・デ・ベーク、フレッジ、ジェームズ、アマド
①戦術
カメレオン戦術で名高いウナイ・エメリ監督。「対戦相手を徹底的にスカウティングし、綿密に対策に立てる戦術家」という印象を個人的に持っています。決勝戦でのビジャレアルの戦い方は、まさにユナイテッドの長所を消す戦い方でした。ハイプレスを掛けずにリトリート。4-4のライン間を狭くし、ブロックを敷くやり方はユナイテッドが最も苦戦する方法です。スペースを素早く攻める事を得意とするユナイテッドにとって、スペースがない事は大きな問題を引き起こします。スペースを無くし、攻撃の核となるラッシュフォード、ブルーノを消すやり方は、ユナイテッドはこれまでのリーグ戦でも何度も経験している事です。しかし、それをユナイテッド相手に90分続ける事は至難の業ですし、ましてや今回のように120分続ける事は奇跡に近かったと思います。
外回りのボール運びを強いられ、両サイドからクロスを入れる場面が多くなりました。合計29本のクロスを入れたユナイテッド。ショーが最多の10本、ワン=ビサカも7本上げていますが、ことごとく中央でアルビオルとパウ・トーレスがはじき返しました。失点シーンのセットプレーからの流れぐらいしか決定機を作らせなかったビジャレアル。その分自らも、枠内シュートは得点となった1本のみに終わっています。自分たちの形であるハイラインや攻撃時にウィングを中へ絞らせSBを上げる形などを封印してまで、ユナイテッド封じに徹した戦術でした。
そんなビジャレアルの戦い方を攻略できなかったユナイテッド。スタメンの人選は怪我人を除いたメンバーでは最強の布陣でしたし、今シーズンやってきた基本戦術を貫いた決勝戦でした。フレッジは怪我のため先発ではなかったようですが、ポグバの中盤起用自体は悪くなかったと思います。というかカバーニ、ブルーノ、ラッシュフォード、グリーンウッド、ポグバ 全員を同時に起用しようとしたらこれしか選択肢がありません。しかし、結果論ですがそのポグバは精彩を欠いていましたし、相手が引いているにも関わらず、かなり後方でのプレーが目立ちました。
カバーニ、グリーンウッドはシーズン後半の好調を維持していましたし、ショー、ワン=ビサカの両サイドバックもプレーのキレはあったと思います。マクトミネイも素晴らしい推進力とエネルギーを見せました。しかし、ラッシュフォード、ブルーノ、ポグバの核となる3人が輝けなかった事は、最後まで勝ち越しゴールを奪えなかったことの大きな要因だと思います。
そして、またしてもセットプレーから失点したこと、フィジカルコンタクトを得意としていないリンデロフがジェラール・モレノをいとも簡単に離してしまったことも、今シーズンの弱点がそのまま出てしまった形となってしまいました。
②采配
この試合、いくつかの采配に対する批判がなされています。
✅ラッシュフォードを下げなかった
✅交代カードをギリギリまで切らなかった
✅PK戦にヘンダーソンを起用しなかった
など。
ラッシュフォードはこの試合、確かに効果的な働きができませんでした。キーパスは3本出していますし、カバーニのゴールに繋がるシュートを放っていますが、前半早々に負傷したフォイスに終始押さえ込まれた印象の方が強いです。抜けないドリブル、引っ掛かるパスやシュート、70分のブルーノのクロスを決められないなど、良くない時のラッシュフォードでした。そのラッシュフォードを後半、もしくは延長の頭から代えることを選択しなかったスールシャール監督。100分のフレッジの投入も、下げられたのはラッシュフォードではなくグリーンウッドでした。
その交代カードも切るのが非常に遅く、100分のフレッジが一番最初の交代。続いて116分にジェームズとトゥアンゼベが入りました。123分に入ったマタとテレスはPKの為の交代で、事態を打開しようとするメンバー交代はなかったと言って良いですね。
PKストップが苦手なデ・ヘアではなく、PK戦にはヘンダーソンを起用すべきだったという声もあります。デ・ヘアが前回PKストップに成功したのは2016年のFAカップ準決勝のエバートン戦で、ルカクを止めた時まで遡ります。逆にヘンダーソンは昨シーズンのシェフィールド時代と17-18シーズンのリーグ1時代に2度PKストップに成功しています。今回一度もPKを止められなかったデ・ヘアは、反応というか動き出しが一瞬遅く、思い切って飛べていない印象を受けました。本人にも苦手意識があったかもしれませんね。
このようにスールシャール監督の采配に対する批判が出ており、この事を敗因とする声もあるようです。
③メンタリティ
敗因にメンタルが挙げられる事は、負けたチームあるあるかもしれません。特に、一発勝負の大一番ではその傾向が強く、失点を恐れる余り積極性に掛けてしまうのも決勝戦ではよくある光景でしょう。ユナイテッドも、膠着した試合状況を変えるような、リスクを取る動きが少なく、タレント力では上回っているにも関わらず迫力に掛けたというのは事実でしょう。ただ、決勝戦に対するモチベーションは決して低くなかったと思いますし、サー・アレックスがチームに同行し、激励したこともチームのモチベーションを上げていたと思います。
ビジャレアルの方が勝ちたい気持ちが強かったのか?
こればっかりは数値化して比較できるものではないですが、個人的にはそんなことはないと思います。ユナイテッドもタイトル獲得に対して強い気持ちがあったと思います。ただ用意したプランがハマり、思うような試合展開に持ち込めたビジャレアルと、打開策を中々見いだせず、焦りに代わっていったユナイテッドの差。この差が時間が進むにつれて、より強くビジャレアルの方に「勝つイメージ」を植え付けていった可能性はあると思います(あるいはビジャレアルはメチェメチェPKの練習していたかも...)
一点、メンタル関係で気になったのは、やはりマグワイアの不在です。怪我の為ピッチに立てなかったキャプテン、マグワイアですが、ピッチサイドから声をかけチームを鼓舞していました。マグワイアがピッチ上にいなかった事が影響したと言い切る事はできませんが、キャプテンを任されたブルーノがいつもより覇気がなく(印象ですが...)チーム全体に影響を与えられるほどのエネルギーが不足していたかもしれません。
上手く表現できませんが、チームの【プレー面での一体感】はビジャレアルの方があり、ユナイテッドは各々が勝利の為に懸命にプレーしましたが、繋がりが弱かった...そんな印象を受けています。
しかし、PK戦でのユナイテッドのベンチメンバー、スタッフも含めて一丸となって見守る姿は胸を打つものがありましたし、負けたチームの方がメンタルで劣っていたように見えてしまうという側面も否めません。
④嫌われる勇気の欠如
目前まで迫っていたタイトルを逃したことで、様々な批判や戦犯探し、敗因分析がなされています。この記事でも、これまで書いたように様々な敗因を挙げてきました。しかし、タイトルを逃した最も大きな要因はスールシャール監督の「嫌われる勇気の欠如」と言えるかもしれません(ベストセラーの自己啓発本とは関係ありません(笑))。
何がなんでもこの試合に勝ち、タイトルを取るのであれば、②の采配の判断を、全て逆にする必要があったという事になります。つまり、後半早々にラッシュフォードを下げ、マタ、ジェームズ、ファン・デ・ベーク、アマドなどの攻撃的な選手を投入し、PK戦では、2014年のWカップでオランダ代表監督のファン・ハールが、PK戦でゴールキーパーをシレッセンからクルルに変更してコスタリカに勝利した試合のように、デ・ヘアをヘンダーソンに代える必要があったという事になります。
その結果、昨シーズン、そして今シーズンチームを牽引してきたラッシュフォードと、10年間ユナイテッドのゴールマウスを守ったデ・ヘアのプライドを著しく傷つける事になりますが構っていられません。
そうすれば勝てた...。と...。
勝負に徹するのであれば、そういった厳しさも時には必要だという意見は確かにそうでしょう。しかし、私はそのやり方には100%は賛同できません。ラッシュフォードを変えなかった決断。先発メンバーをできるだけ引っ張った決断。苦手なPK戦でしたが最後までデ・ヘアに賭けた決断。そのすべての決断にスールシャールの信念が見えますし、彼のマネジメントの長所を見ます。「選手を信頼し、選手がその信頼に応えることで勝負に勝つ」それがスールシャールの目指すところであり、確かにタイトルは取ったかもしれませんがモウリーニョとの決定的な違いです。スールシャール監督は、この決勝戦を「勝ちさえすればタイトルが取れる単なる1試合」としてではなく、「今シーズンの集大成としての1試合」と捉えていたと思います。
ただ、「そんな甘いことを言っているからタイトルを逃すんだ!」という声もごもっとも。今回タイトルを逃した事は重く受け止めるべきですし、個人的にもこのままずっとスールシャールで良いとは思っていません。批判や指摘はしっかり受け止め、敗因を冷静に分析し、来シーズンに繋げる必要がありますし、無冠に終わればその時はスールシャール政権も終わりを迎えるでしょう。このまま「良いチーム」で終わるのか、それとも「勝てるチーム」に変貌できるのか、スールシャール・ユナイテッドは真価を問われるシーズンとなります。
👿まとめ
20-21シーズンのクライマックスは、タイトルへあと1歩(スールシャール監督の表現ではあと1キック)届かず残念な結果で幕を閉じました。ブルーノの涙、ラッシュフォードの肩を落とす姿、エメリの元でもプレーしたマタやカバーニの複雑な表情、ポグバの眉間に皺を寄せた顔、そして責任を感じまくっているデ・ヘア...。これでユナイテッドを去るかもしれず、最後の試合でヒーローになるチャンスを活かせなかったデ・ヘア。10年間ユナイテッドのピンチを救ってきたデ・ヘアが最後、PKを失敗して敗れたというのは、なんと神様は残酷なのか...。
表彰式で、首に掛けられた「準優勝」メダルをすぐさま外すユナイテッドの面々の表情を見れば、戦犯探しなどしようとは思いません...。自分たちの能力を存分に発揮できなかった一方、失点の仕方やブロックを崩せない攻撃など、今シーズンの悪い所が全部出たような試合になってしまいました。しかし、コロナの影響でプレシーズンが行えず、過密日程で肉体的にもきつく、街はロックダウンで精神的にリフレッシュできない状況の中で、チームとして本当によく戦い成長してくれたと思います。
*スタッツはこちら

試合結果 EL決勝 出典:ユナイテッド公式
「来シーズンは、さらにビッグな情熱とともに帰ってくる」
というラッシュフォードの言葉を信じて待ちたいと思います。
ユナサポの皆さん1年間応援お疲れさまでした!
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いや、ホントは悔しいです(涙)…。
「祝!タイトル獲得」っていう記事を書きたかったです(笑)。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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