こんにちはMasaユナイテッドです。
プレミアリーグ第34節 リバプールとの大一番を戦うはずだったユナイテッドですが、ユナイテッドの一部ファンが、オールド・トラッフォードへ侵入しオーナーに抗議する騒動が起こったため延期となりました。4月に起こった欧州スーパーリーグ騒動以降、各クラブでもオーナーに対する抗議活動が起こっています。ユナイテッドも先日、キャリントンの練習場にファンが侵入し、抗議の声を上げていました。サポーターは、2005年のクラブ買収当時からオーナーであるグレイザー・ファミリーに対して不満を抱いていましたが、4月半ばの欧州スーパーリーグ騒動で怒りが頂点に達し、今回の大規模な抗議デモに発展したと思われます。
*抗議デモに関してはこちらを参照下さい。
*欧州スーパーリーグ騒動に関してはこちらの記事をどうぞ

今回はこの抗議デモに関するコラムです。
事の経緯や、抗議の目的、意義などについて書いてみました。
以下項目です。
①抗議活動の経緯
5月2日、22時ごろTwitterを見ていると衝撃的な映像が流れてきました。オールド・トラッフォード(OT)のピッチにファンが乱入。発煙筒を焚き、芝生の上を歩き回り、中にはゴールに這い上がっている人の姿も...。
www.youtube.com
この日はリバプールとの大一番。シティの優勝にも影響する大事な試合が控えていました。その試合前のピッチにユナイテッドのファン約100人ほどが乱入。発煙筒を焚き、ゴールに這い上がったり、コーナーフラッグを持ち帰るなどの行為に及びました。その他にもガラス窓を割ったり、ドレッシングルームにも侵入したと報じられています。スタジアムの外にも約1000人のファンが抗議デモを行い、一部は警官隊と衝突。放火や、ボトルを投げるなどし6人の警察官が負傷しています。
さらに、ユナイテッドの選手やスタッフが宿泊するThe Lowry Hotel(ローリー・ホテル)前には約200人のファンが集合していました。彼らはチームがホテルから出られないように出入り口を封鎖しており、この集結は実に試合開始の4時間半前から行われています(現地時間の正午前)。
この抗議デモの結果試合は延期に。プレミアリーグは関係者の安全を守るために試合の延期を決めたと説明、「気持ちは分かるし尊重もするが、全ての暴力行為や器物損壊、不法侵入を非難する」との声明を発表しています。ユナイテッドも声明を発表し、ファンには「表現の自由と平和的な抗議活動」の権利があるとした上で、「チームを混乱させ、ほかのファンやスタッフ、警察を危険にさらした行為を遺憾に思う」としています。
*ユナイテッドの声明文
②抗議活動の目的
この抗議デモの目的は、もちろん
「オーナーであるグレイザーズに対する退陣要求」
です。先月に発生した欧州スーパーリーグ騒動により、積年のオーナー陣に対する不満が沸点を超え、今回の大規模な抗議デモに繋がったことは明らかでしょう。
*こちらの過去記事も参照下さい。

しかし、オーナーへの抗議であるなら、先日アーセナル・ファンがスタジアムの外で見せたような抗議の仕方でよかったはず。今回のユナイテッドの抗議の真の目的は、
「試合をさせない事」
でした。現地ファンのソーシャルメディアの間で、午後2時にOT前へ集合し、抗議デモを行い、試合までにはみんな家に帰るという計画が存在したようですが、いわばそれは囮で秘密裏にローリー・ホテルでチームの動きを止める事が計画されていました。
さらに、このホテルでの計画が失敗した時に、OTのバス入り口を封鎖する計画もあったということ。時系列で見ると、正午前にホテルを封鎖。午前11時58分、Red Issue(ユナイテッドサポーターの同人誌)のTwitterアカウントは、ローリー・ホテルでの抗議の意図を明らかにしました。「SkySportsの放送を停止すれば、グレイザーズを止める事ができる。これが今日の唯一の意味のある抗議です。」と発信しています。
OTへの乱入は午後2時。この行動がホテル封鎖とどこまで連動した動きだったのかはわかりませんが、ピッチへの侵入や、不特定多数がドレッシングルームにまで入ったとなると、コロナの事を考えても試合をできる状況ではなくなっていました。まぁ、OTが仮に無事だったとしてもチームが来れないのでは試合になりませんが...。約5時間の時間をかけて、この抗議の目的は達成されたという事です。
日本の報道だと、OTへの侵入がセンセーショナルに取り上げられていますが、今回の抗議活動の肝はホテル封鎖の方だったと言えるのです。
*なおこれに関してはこちらの記事を参考に書いています。
www.manchestereveningnews.co.uk
③各方面の反応
個人的にはこの騒動のさなかに、「このような抗議のやり方は容認できない。彼らはサポーターではない」という趣旨のツイートをしました。私は、
①破壊や暴力を伴うやり方は認めない
②ペナルティが課せられるなど、チームに迷惑をかけることは許されない
③楽しみにしていた試合が無くなったという恨み(笑)
という3つの理由でこのツイートをしました。この考えは今も変わらないのですが、時間が経ち、様々な状況が明らかになってくると、
①破壊や暴力はごく一部のファンで99%は平和的に抗議した事
②中止の決定は市と警察の判断であり、ポイントはく奪などのペナルティの可能性は低い事
③チームへの迷惑は断腸の思いだが、リバプール戦という大一番にインパクトを与える事が最も効果があると判断した事
などが分かってきました。
ガリー・ネビルやロイ・キーンなどのクラブOBも
「マンチェスター・ユナイテッドのファンは限界に達した。彼らはよく耐えていた。ユナイテッドには世界最高のファンがいる。オーナーには、もうこりごりだと思っている」(ロイ・キーン)
「2週間前のユナイテッドオーナーの行動(ESL騒動)が生み出した結果だ。マンチェスター・ユナイテッドのファンがやったことに対してはあらゆるフットボールファンが団結すべきこと。なぜなら、2週間前に起こったことはイングランドフットボールにとって本当に危険なことだったからだ」(ガリー・ネビル)
と擁護するコメントをしています。また、ライバルであるリバプールのOBジェイミー・ギャラガー氏や、KOPからも賛同の声があったのは意外でした。
デモや激しい抗議活動に対して、ネガティブな印象を抱きがちな日本人に対して、現地の方々は「当然の権利であり行動」という認識が多いようです。破壊や暴力はただの暴動ですし、ピッチへの乱入は少々やり過ぎだったかもしれませんが、今回の抗議デモは比較的好意的に受け止められています(もちろん暴力行為を除いてです)。
④オーナーへの要求と抗議の意義
5月3日、ユナイテッドのサポーターズ・トラストは、オーナーであるジョエル・グレイザー会長に対して公開レターを発表しました。手紙は昨日のデモに関して、これを恒例行事にするつもりはない事、一部サポーターの暴力的行為は容認しない事などで始まります。さらに
「今回起きたことはあなたの家族がオーナーシップを保有していた16年間の集大成だ。クラブは借金と衰退に追い込まれ、われわれはこれまで以上に無視され、見捨てられたと感じている。これまでの16年間、グレイザー家はサポーターズトラストと一度も会話をしたことがなかった」。
という根本原因に触れた後、以下の4つの要求をオーナーに突き付けています。
①政府が先導しているように、サッカーをファン主導な形に見直すよう積極的かつオープンに取り組み、オーナーシップ構造をサポーターに利益があるものに変えていくこと。
②株主ではなく、クラブの利益を守ることをただ一つの目的とする独立した取締役をただちに取締役会に任命すること。
③マンチェスター・ユナイテッド・サポーターズ・トラストや個々のサポーターと幅広く協力し、グレイザー家が保有する株式と同様の議決権を持つ株式スキームを誰もがアクセスできる形で導入すること。またもしもサポーターからの強い要望があれば、グレイザー家の持ち数が少数派になったり、完全に買い取られることをも歓迎し、反対しないこと。
④われわれが参加する大会も含めたクラブの将来に関わる重要な変更については、シーズンチケットホルダーとの十分な協議にコミットすること。
そして、サポーターズ・トラストはこれらの4点について、5月7日(金)までに返答することを要求。「これがこの問題を前進させる唯一の方法だ。やってみることを強く要望する」としています。ESL騒動後、グレイザーは「サポーターとのコミュニケーションを図り、信頼関係を再構築していく」と述べていました。サポーターの最終的な目的はグレイザーズを追い出す事ですが、今回のサポーターズ・クラブの要求はグレイザーズに、「良いオーナーになるためのチャンス」を与えています。この要求を、そう簡単に飲むことができない事を見越していますが、こうする事で、
誰がクラブの真の保有者なのか
誰が主導権を持っているのか
を思い知らせています。
今回のデモは少々過激だったかもしれませんし、オーナー退陣まで同様の出来事が続くかもしれませんが、1878年創設、世界でも有数の歴史あるクラブであるマンチェスター・ユナイテッドの、歴史的ターニング・ポイントとなる出来事として語り継がれていくことになるでしょう。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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