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こんにちはMasaユナイテッドです。
開幕から3戦、ユナイテッドは特にアウェイの2試合(セインツ戦、ウルブス戦)でプレスやビルドアップなどの組織的プレーが上手く機能しませんでした。
*アウェイ2戦のレビュー記事はこちら


特に、スールシャール監督になってから、ビルドアップに関してはあまり改善が見られず、安定したパフォーマンスが見られていません。
そこで今回はユナイテッドのビルドアップはなぜ上手く機能しないのか。そしてこれを改善する方法はないのか考察してみたいと思います。
*なお、記事中のフォーメーション図のメンバーは、セインツ戦の先発メンバーを表記しています。「なぜアイツがスタメンなんだ!?」というクレームはご遠慮下さい(笑)。
以下項目です。
①2-4型ビルドアップの目的と問題点
スールシャール監督はここ数シーズン、4-2-3-1フォーメーションを基本とし、ダブルボランチの使用に拘って戦ってきました。ダブルボランチシステムを採用する主な目的は2つあります。1つは前線の4枚に攻撃的な自由を与える為。ディフェンシブな中盤を2枚置くことで、前線の選手は自由と流動性を持って攻撃に専念することができます。もう1つは両サイドバックを攻撃に参加させる為。ユナイテッドは相手を自陣へ押し込む時に、ショーとワン=ビサカの両SBが高い位置を取るシーンは度々見ますね。ダブルボランチを置くとこで同時に左右両サイドバックの上がりを可能にし、ボールサイドと逆のサイドバックはインナーレーンへ入り込む事も可能にしています。
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ダブルボランチを採用している事により、ユナイテッドのビルドアップは2センターバックの前に、サイドバック2人とダブルボランチが並ぶ「2-4」型に可変します。この2-4型は2トップでハイプレスをかけてくる、例えばセインツのようなチームに、いくつかの問題を引き起こされます。
ビルドアップの目的はボールを前線へ運ぶ事ですが、この際重要になるのが「パスの角度」「パスコース」「三角形の形成」「受け手のサポート」の4つです。しかしユナイテッドのビルドアップはしばしばこのどれも上手くできておらず、スムーズなビルドアップを行うことが難しくなっています。
ビルドアップの起点となるマグワイアがボールを持った時、選択肢は2つしかありません。ショーに出すかリンデロフにパスするかです。ダブルボランチは相手2トップのカバーシャドウ(自分の背後に相手選手がいるようにパスコースを塞ぐポジションを取ること)で隠されており、パスを着けることがでかないのです。
そして高い位置のショーに出した場合、ショーは身体を閉じて(後ろ向きで)ボールを受けるため次のパスを出しにくくなる上に、相手の右ウィングと距離が近い為すぐに寄せられます。結果マグワイアに戻すことになりますね。

通常、2トップでハイプレスを掛けてくる場合はこのようにサイドへボールを誘導し、そこでボールを止めることを狙っています。ユナイテッドの2-4型はこれにまんまとハマってしまい、回避するには適していないやり方だと思います。
②2-4型ビルドアップの改善策
次にこの2-4型ビルドアップの改善案を見ていきます。
結論からいうと、サイドバックのポジションを下げることで、よりスムーズなビルドアップが可能になると思います。サイドバックの位置をダブルボランチと同じ高さではなくてセンターバックより少し高い位置に配置します。こうする事でサイドバックは時間とスペースがある状態でボールを受けられる上に、ボランチへのパスの角度も確保する事ができます。相手ウィングがプレスに来るまでには時間があるので、サイドバックは余裕を持ってビルドアップする事が可能になります。仮にこの位置まで相手のウィングがプレスに来れば、センターバックがスペースのできた左ウィングへのパスコースを見つけることも可能です。
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通常のユナイテッドの2-4型の場合、ボランチ(マティッチ)はカバーシャドウのマークを外してボールを受けても、後ろ向きでボールをもらうためにすぐに相手のボランチからプレッシャーを受ける事になります。この場合、相手の陣形は崩れるているのですが、サイドバック(ショー)が同じか、より高い位置にいるとパスを出すのが難しくなり結果的にドタバタのビルドアップになってしまいます。しかしサイドバック(ショー)の位置を下げるだけで、ボランチ(マティッチ)は簡単にサイドバック(ショー)にボールを預けることができ、サイドバック(ショー)は前を向いてプレーする事が可能になります。

さらに、相手ウィングに選択を迫ることができるようになります。サイドバック(ショー)が引いた状態の時、相手のウィングはいくつかのプレーの選択肢を持つことになります。そのままの高さに留まり、ユナイテッドのボランチ(マティッチ)にプレスを掛けるか。あるいは、ユナイテッドのサイドバック(ショー)までプレスしにいくか。または、パスコースを塞ぎにいくか...など。選択を迫られたウィングの選手はプレスのスピードも強度も弱くなるのは言うまでないですし、プレーの主導権をユナイテッドが握る事になります
こういった事すべてがサイドバックのポジションを下げるだけで実現します。
③3-1型ビルドアップの問題点
2-4型のビルドアップが上手くいかない場合、ユナイテッドはボランチの1人がセンターバックに落ちて、相手の前線のプレスに対して数的優位を作る形もよく見られます。特にマティッチは落ちる動きをよく見ると思います。このビルドアップの形は3-1型と言われるものですが、3人のセンターバック(内1人はボランチから降りてくる)と1人のボランチでビルドアップをスタートします。

ミッドフィールダーがセンターバックに降りる形の組み立ては、多くのクラブが採用している形なのですが、ユナイテッドがこれを行う場合ある問題が生じています。それは、1人残ったボランチ(フレッジ)が相手の2トップのどちらかに常にカバーシャドーでマークされパスコースを塞がれてしまいます。3人のセンターバックがどのようにボールを持っていても、1人残ったボランチは孤立し、中央を遮断され外回りのボール回しを強いられることになります。そして、サイドは相手がボールの奪いどころとして設定しているエリアになっているという事です。
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顕著に表れていたのは2節のセインツ戦。セインツは中央で六角形を作り、その中にフレッジが入り込んでいましたが、3人のセンターバックはそこへパスを着けることができませんでした。降りること自体は悪い選択ではないのですが、この場合多くは両サイドバックは目いっぱいワイドに開き、そして高い位置を取っているためによりビルドアップが困難になっていると思われます。つまりは「受け手のサポート」が不足している状態ですね。
④3-1型ビルドアップの改善策
この3-1型ブルドアップの改善案は、3-2型に変更するというもの。2人のセントラルミッドフィールダーを置くことで、中央のパスコースは増えますし、パスの角度も確保しやすくなります。1人は相手2トップのカバーシャドウの外に出てボールを受ける事も可能になりますし、分裂して2人ともブロックの外へポジショニングすることもできます。ユナイテッドがこの3人のセンターバックでオーバーロードを作ってビルドアップする事に拘るのであれば、2人のセントラルミッドフィールダーを配置する事は有効な手段になると思います。
では次に、どのように「3-2」を作るのか見ていきます。まず最も簡単な方法はトゥヘル・チェルシーのように3-4-3システムを採用することです。ユーロ2020でも多くのチームが3-4-3(3-4-2-1)システムを採用していました。それこそイングランド代表も3バックシステムで戦っています。このシステムは安定したビルドアップを可能にし、主導権を握るのに適しています。逆に、足元のテクニックに欠けたメンバー構成でこれを行うと、主導権を握れず自陣に押し込まれ5バック化し、守備的になるというシステムでもあります。
しかしながら、今シーズンのユナイテッドは3バックシステムを採用する可能性は低そうです。とするとビルドアップ時だけ3-2へ可変するというやり方が考えられます。それには2つの案があります。1つは片側のサイドバックを上げて、もう1方のサイドバックを下げてセンターバックに組み込む形。左右どちらのサイドバックでも良いのですが、個人的にはショーを上げてワン=ビサカをセンターバックに下げる方が良いと考えます。
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そしてもう1つは現在やっているように、ボランチの1人がCBに降りて、サイドバックがボランチに入り込む形。いわゆる「偽SB」ですね。これもワン=ビサカをボランチにした方が良いと思います。これはショーの攻撃力を活かすためです。さらに言うと、ユナイテッドは採用が難しいですが、ゴールキーパーを「3」のうちの1人に組み込むことで前線の枚数や配置を変えずに3-2型が達成できます。シティなど足元の上手いゴールキーパーを有しているチームならば可能ですね。
多くの三角形を形成でき、中央からの侵攻も可能にする3-2型ビルドアップは試す価値があると思います。

👿まとめ
いかがでしたか?このようにユナイテッドのビルドアップには課題があり、それを改善する事も理論上は可能です。個人的には批判が集中する中盤問題の解決には、個人のスキルだけではなくて、こういった組織的な改善も必要だと考えています。ビルドアップもその中の重要なファクターで、これを改善できれば安定したゲーム運びが可能になり、中盤のパフォーマンスも改善されるはずです。
しかしながら、実際はスールシャール監督は現在のビルドアップの形は変えないと思います。なぜなら、今回示した2つの改善案はどちらもサイドバックを低い位置に置いているためです。冒頭でも触れたように、ユナイテッドの攻撃において両サイドバックが高い位置を取るということはとても重要です。不甲斐ない前半から、後半ギアを上げ、両サイドバックが高い位置を取って相手を押し込むというシーンは度々見かけると思います。不安定なビルドアップながらなんとか個の力でチャンスを作り出すことができている限り、根本的なやり方は変えないでしょう。
スールシャールにとってはビルドアップの質<前線の破壊力だという事です。そしてそれはこの夏の移籍市場で象徴的に表れたと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント
Re.kaiaskunさん
コメントありがとうございます!
返信が遅くなり申し訳ありません。現状のユナイテッドの前線のタレントは世界屈指の破壊力を持ちます。戦術に長けた監督ならビルドアップや崩しの形など整備して、タレント力を組織で上手く活かしますが、スールシャールはそういったタイプではないですね。それよりも能力の高い前線に自由を与えて、その破壊力で粉砕するスタイルです。もちろん試合巧者の相手なら、ロナウドを孤立させることもできると思いますが、ブルーノやポグバ、ラッシュやサンチョといったワールドクラスのアタッカーを90分凌ぐのは容易でないと思いますよ。