【考察】ミッドフィールダー問題解決の一手 コンバート策の有効性 〜適任者は誰だ!?~【マンチェスター・ユナイテッド】

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

こんにちはMasaユナイテッドです。

今シーズンの開幕前、ユナイテッドは多くのメディアで中盤(セントラルミッドフィールダー)のクオリティ不足が指摘されていました。これを受けて、補強ポイントの1つとされていましたが、結局補強は行なわれませんでした。開幕から3戦を戦い特にアウェイの2戦で中盤の問題を露呈。何らかの対応が必要だと言われています。その策の一つが誰かを中盤センターへコンバートするというもの。

そこで今回はこの中盤コンバート策に関しての考察です。仮に中盤へのコンバートを行うのであれば適任者は誰なのかを導き出し、コンバート策の有効性を考えたいと思います。

*なお人選に関しては主に名前が挙がっている選手に限定しました。中には他の選手を挙げる方もいるかもしれませんがご了承下さい(ファン・デ・ベークに関しては自分の中では3列目適性を有しており、コンバートには該当しないと考えています)。

以下項目です。

①ビクトル・リンデロフ

「中盤センターにコンバートするには誰が最適か?」という質問に最も多くの人がリンデロフの名前を挙げています。リンデロフが選ばれる理由はいくつかあります。まずは、キャリアのスタートが中盤であり、スウェーデン時代とベンフィカの初期、リンデロフはこのポジションでプレーしています。そして、モウリーニョ監督はリンデロフのボランチ起用というアイデアを持っていたという話があります。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

リンデロフはパス精度が90%台と高く、もちろん守備的な能力も高いので適正的にはマッチしているように見えます。リンデロフの20-21シーズンのパス成功率は91.5%、特にミドルパス(15~30ヤード)の精度が高く、95.9%を記録しています。ポジションが違うのであまり比べる意味はないのですが、参考としてマティッチと比べると、マティッチのパス成功率は90.5%、ミドルパス精度は92.9%となります。またタックルに関しては、リンデロフは0.91回/90分のタックルを繰り出していますがマティッチは1.95/90分です。対ドリブルタックル成功率はリンデロフ57.1%、マティッチ32.3%とやや差が出ます。プレス回数はリンデロフ6.69回/90分に対してマティッチ14.2回/90分となっています。

数字的に見ても、パスに関してはマティッチとそれほど大きな差はありませんが、ディフェンス面に関しては積極性に差があるのがわかります。リンデロフの方が積極的な守備はしませんが、ドリブルを止めるという事に関してはリンデロフの方が得意だということですね。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

このようにMF起用も問題ないように思いますが、不安材料があるとすればプレッシャー下でも同様のパス精度をキープできるのかという事と、運動量、スピードといったところでしょう。特にCBとMFではプレスの受け方が全く違ってきます。リンデロフ得意のロングフィードが中盤の激しいプレッシャー下でも打てるのか、疑問が残るところですね。

また積極的な対人守備を得意としない(ように見える)事も懸念すべき項目かもしれません。SofaScoreのデータによると、昨シーズンの地上デュエル勝利回数でリンデロフは32回となっています。出場時間も考慮した比較ができていないのですが、プレミアのディフェンダーの中では109位の成績。ユナイテッドでは13番目。これは25試合以上出場した選手の中ではワースト2位(1位はカバーニ)です。

結論を言うとリンデロフのコンバートは「あり」です。オプションの域を出ませんが、試す機会があるなら試す価値はありそうです。そもそも、リンデロフを中盤で使うというアイデアは、中盤の問題を解決するというよりは、中盤のオプションを増やす、そしてヴァラン加入により出番を大きく失う可能性の高いリンデロフの救済策という側面の方が大きいです。それだけ、リンデロフはこれまでチームに貢献してきましたし、サブにしておくのは勿体ない実力の持ち主でもあります。チームとしても使える駒なら使うに越したことはありません。

②フィル・ジョーンズ

2人目はフィル・ジョーンズです。ジョーンズはブラックバーン時代、そしてユナイテッド加入後も度々ボランチで出場。CBに固定されたのは14-15シーズン、ファン・ハールが監督になってからです。特にブラックバーン時代は持ち前のガッツ溢れるディフェンスでこのポジションで印象的な仕事をしていました。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

そいった意味では再度、守備的MFへコンバートとなっても比較的すぐに対応はできる可能性があります。ジョーンズはパス精度が高いことが取り上げられたりします。確かに数字だけ見ると18-19シーズンには93.2%という高いスタッツを残してもいます。ジョーンズは基本的にリスクを犯すパスを出さないことと、左足でもパスが出せるためこのような数字になっていると思います。ボランチでプレーした場合、無難にパスを繋ぐというプレーはできそうであり、CB時でも時折ズバッと楔を入れる事もあります。

寧ろ心配なのは守備面です。基本的にボールに喰らい付いていくスタイルなので、危ないスペースに気付いてカバーしたり、インターセプトしたりといったプレーは苦手で、対応が後手になる事が多いです。もちろんガッツはあるので、後手を踏んでもなんとか身体を張って止めようとはしますが、ドタバタとしたボランチになりそうな予感はします(笑)。

ジョーンズの状況としては、やはり怪我で2020年の1月以来19ヶ月プレーできていない事が大問題です。先日の非公開のストーク戦で実戦復帰しましたが、コンバート云々よりもまずはトップレベルでプレーできるコンディションに持っていくのが先でしょう。

③ジェシー・リンガード

リンガードに関しては、トップ下や左右のウィングを主戦場としていて、攻撃的な選手ですが、一部で3列目へのコンバート案が出ています。もちろん、守備的MFではなく、ボックス・トゥ・ボックスとしてですが、リンガードについても適正から見ていきましょう。

リンガードが3列目に適応できるかもしれないと思わせる要因は献身性と運動量、そしてリズミカルなパスを使える、この辺りではないでしょうか。確かにトップ下で出場している時も、頻繁に降りてきて守備を助けてに行きますし、自陣まで戻ってプレスも掛けにいくシーンも多いです。リンガードのプレス回数は平均26.8回/90分となっていて確かに悪くない数字(フレッジとほぼ同じ)です。ちなみにパス精度は84.1%を記録。しかしコレはポジションが違うので余り参考にはなりませんね。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

逆に3列目が厳しい理由はやはり守備面。献身的にプレスバックはしますが、守備の質は低いです。昨シーズンの(ハマーズでの)デュエル勝率は40.3%。これはだいたいブルーノと同じぐらいで、下から数えた方が早いです。そして174cmと上背がないため空中戦での貢献は見込めないのもマイナス要因でしょう。

適正はないとは言い切れませんが、リンガードもリンデロフと同じ理由でコンバート説が出ていると思います。つまり、代表クラスの実力を持つリンガードをベンチに置いておくのは勿体ないというのが根本にあり、改善が必要な中盤センターに起用してみてはどうかということでしょう。

しかしリンガードの特徴は攻撃にあります。昨シーズンのハマーズでのパフォーマンスをユナイテッドで見せてもらう。それが今シーズンリンガードに求められている事であって、出場機会がないからと言って、最大の武器を封印してまで無理やり3列目で使う必要は無いと思います。

確かに2列目はブルーノ、ラッシュフォード、ポグバ 、サンチョ、グリーンウッドなどリンガードでさえも出場できないほどの陣容を有しています。出場機会はごく限られたものになりますが、リンガードを3列目に使うぐらいならファン・デ・ベークを3列目にフィットさせる方が早いでしょう。

④若手選手の抜擢

番外編として、セントラルミッドフィールダーを主戦場とする若手選手の中で、トップチーム昇格の可能性も見ておきましょう。

本来であれば、ジェームズ・ガーナーを残しておきたかったというのが本音です。ガーナー、レヴィット、ガルブレイスの3人は実力的にはトップで試してほしい人材です。しかし、3人ともレンタルに出してしまったので、それより下の世代から選びます。

現在のU-23でプレーしている2人。ジダン・イクバル(18)とチャーリー・サヴェージ(18)です。イクバルは非常にテクニカルな選手で、どちらかというと10番の選手なのですが、昨シーズンのU-18ではダブルボランチの1角でのプレーが多かったです。パス精度が高く、低い位置から精度の高い散らしのパスが出せます。ドリブルもテクニックがあり、ゴール前などではトリッキーな動きで相手を翻弄します。視野も広く両足も使えるという非常にクオリティの高い選手です。この夏にはユナイテッドと最初のプロ契約を結び、イラクU-23にも召集されています(父親がパキスタン人、母親がイラク人でイラク国籍を取得)。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

サヴェージは、ユナイテッドアカデミー出身でレスターなどでプレーした父、ロビー・サヴェージの息子。左利きのセントラルミッドフィールダーです。昨シーズンはU-18でイクバルと並んでボランチを形成。攻撃色の強いイクバルに対してサヴェージはより深い位置でビルドアップの起点としての役割を担いました。182cmの恵まれた体系で当たりにも強く、運動量が豊富。ボールを受けて前を向くのがとても速いです。左足の精度も高く、足元のテクニックもあります。左利きのハーグリーブス。そんな印象の選手です。なおサヴェージもU-19のウェールズ代表に呼ばれています。

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

2人とも、今シーズンU-23に昇格したばかりでトップチームデビューはまだ先の話ですが、毎年アカデミーから数人トップチームデビューさせているスールシャール監督だけに、今シーズンの活躍次第では終盤戦にトップデビューも夢ではありません。それだけの才能を持った2人だと思います。

👿まとめ

以上見てきたように、仮に中盤にコンバートするとしたらリンデロフが適正的には「マシ」といったところ。しかしながら、現状中盤はマクトミネイ、フレッジ、ポグバ の4人(ファン・デ・ベークも入れたら5人)で、ダブルボランチシステムの場合6パターンの組み合わせがあります。夏の移籍で中盤の補強に動かなかったのはこの為で、駒としては充分と判断されました。

しかし、中盤の問題は量ではなく質です。クオリティを上げる事が課題です。とすると、リンデロフをコンバートしてもクオリティの問題が解決されるとは思えません。上でも書いたようにリンデロフのコンバートは、リンデロフに出場機会を与えるという意味では試す価値があります。しかし実際は、トレーニング時などに試してよほど手応えがない限り、上記4人とファン・デ・ベークを差し置いて出場できる試合はほとんどないですし、普通にCBのローテーションで出番が回ってくる方が多いでしょう。リンデロフのコンバートは「あり」ですが、新しいポジションではなく、ヴァランと組んでCBで出られるように準備しておくことの方がはるかに重要です。

結論を言うと、中盤の問題を根本的に解決するには現在のメンバーの覚醒か補強しかないということです。補強ができなかった今、個人的にはその中でもマクトミネイ(とファン・デ・ベーク)の成長が中盤の問題解決の鍵を握ると考えています。伸びしろ的にも、攻守両面のクオリティでもマクトミネイが伸びる可能性が1番あります。

しかしながら、ウルブス戦の記事でも書いたように中盤の良し悪しは前後のパフォーマンスの影響も大きいという事も忘れるべきではありません。中盤コンバートを考える前にもっとやるべき事はあるはずです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました