[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
こんにちはMasaユナイテッドです。
21-22プレミアリーグ第23節。ホームでウェスト ハム・ユナイテッドと対戦したマンチェスター・ユナイテッド。試合は前半ホームのユナイテッドが主導権を握りますが、なかなかチャンスらしいチャンスは作れません。ハマーズも同様にチャンスメイクできず、膠着状態で後半を迎えます。49分にはフレッジが抜け出しシュートを放ちますがアレオラに弾かれ、ハマーズもボーウェンのシュートはサイドネットへ。ユナイテッドは62分にエランガに替えてラッシュフォードを投入しますが、徐々にカウンターやセットプレーからハマーズがペースを握ります。なんとしても勝ち点3がほしいユナイテッドは82分にマルシャル 、カバーニを入れて4トップへ。そしてこの交代策がズバリ的中しアディショナルタイムの92分、ついにラッシュフォードがゴールをこじ開けます。これがラストプレーで決勝点となり1-0。ユナイテッドがホームで劇的な勝利を挙げています。
*ハイライトはこちら
今回はこの試合で見せたユナイテッドの攻守バランスに関しての記事。鉄壁だった守備とチャンスメイクできなかった攻撃、それぞれの要因を考察します!
以下項目です。
👿ラインナップ

①守備
1-1.バックラインの集中力
前節ブレントフォード戦のバックラインから、自宅強盗被害にあったリンデロフに変わってマグワイアが入ったハマーズ戦。マグワイアは12月31日バーンリー戦以来の先発復帰となりました。ハマーズのシュートをわずかに6本、枠内シュートは1本、ゴール期待値(xG)も0.24に抑え、全くチャンスらしいチャンスを与えずクリーンシートを達成しました。
ハマーズ戦における堅守の要因の1つ目は、バックラインの高い集中力です。CBの2人はハマーズの1トップ、アントニオを完封、両SBのダロトとテレスはフォルナルスとボーウェンの突破を許しませんでした。マグワイアは4回のクリアと67%の地上デュエル勝利、63%の空中戦勝利を達成。7分のボーウェンにボックス内に持ち込まれたシーンでは鋭いタックルでこれを阻止しています。ヴァランも手堅い守備で貢献。パートナーを選ばないカバー範囲の広さと、冷静な読みはリンデロフ、マグワイアのパフォーマンス向上に大きな役割を果たしています。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
ダロト、テレスは試合を重ねるごとに存在感を増している印象。2人とも攻撃時にはしっかり高い位置まで上がって厚みをもたらしますが、ボール非保持にはしっかり戻ってバックラインを形成。かなりの運動量を強いられていますが、高い集中力で攻守に貢献しています。テレスはチーム2番目の8回のボールリカバリー、タックルは5回中5回成功(最多)。ダロトは3番目となる6回のボールリカバリー、タックルは7回(内4回成功)と回数では最高の数字、インターセプト2回(チーム1位)、4回のクリア(最高)と守備面で最高のパフォーマンスを見せています。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
いつもは被シュート数が多く、デ・ヘアのセーブに救われているユナイテッドディフェンスですが、ハマーズの攻撃の要となるアントニオ、ボーウェン、フォルナルス、ランシーニの4人にほとんど仕事をさせませんでした。今回はチーム全体としてもプレスが掛かっていたこともありますが、バックラインの危ない所に入られる前に潰す意識が堅守の大きな要因となりましたね。
1-2.中盤の連携
もう1つの堅守の要因は中盤です。ヴィラ戦、ブレントフォード戦と同様に4-3-3で臨んだユナイテッドですが、ハマーズ戦の3センターはかなり高度な連携を見せています。前回のように、単純な1人の6番と2人の8番ではなく、3人全員が6番でもあり8番にもなるという形。4-3-3と表記していますが、4-2-3-1と4-3-3を人を変えながら変化させるやりかたでした。
基本の配置ではブルーノが右IH、フレッジを左IHとしましたが、フレッジは前へ出過ぎずマッチアップするソウチェクを見ながらマクトミネイのポジショニングに合わせて場所を埋める意識が強かったです。ブルーノはやや前へ出て、時には10番となりライスとマッチアップ。ミドルプレス時には4-4-2の最前線に入ってロナウドとハマーズCBを牽制する役割を担当しました。マクトミネイはアンカーとしてランシーニとマッチアップする事が基本の仕事ですが、右ハーフスペースに侵入してくる相手は誰でもケアしています。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
12分のユナイテッドがハイプレスを仕掛けたシーンでは、フレッジがボーウェンにプレスに行き、浮いたソウチェクにはマクトミネイが付き、さらに浮いたランシーニにはブルーノが自陣に戻ってケアしています。このようにお互いのコミュニケーション、連携が素晴らしく、各々の役割に縛られ過ぎずに状況に応じた対応ができていたのがハマーズ戦の中盤です。これがラングニックの指示によるものだったのか、個人の判断によるものだったのかはわかりませんが、後半にはよりフレッジとマクトミネイがダブルボランチ気味になりバイタルを開けない守備を見せ、堅守に貢献しました。フレッジは最多の11回のボールリカバリー、マクトミネイは空中戦(守備)9回(内7回勝利)と最多の数字をマークしています。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
前回ブレントフォード戦の記事でも、この3センターがもっともバランスが取れていると書きましたが、ハマーズ戦でも最もレベルの高いセクションだったと思います。そしてハマーズの中盤のライスとソウチェクとのハイレベルな攻防はこの試合の大きな見どころだったと思います。

21-22PL23 ディフェンシブ・デュエル 出典:TOTAL FOOTBALL ANALYSIS
②攻撃
2-1.剥がせない中盤
守備の面ではかなりの強固さを見せたハマーズ戦でしたが、攻撃面では持てる能力を発揮できたとは言えません。18本ものシュートを放ちますが、90分までのゴール期待値xGは0.72と、決勝点まではチャンスらしいチャンスを作れなかったことが数字からもわかります。ハマーズ戦の攻撃の停滞の要因の1つに、「中盤剥がし」が上手くできなかったことが挙げられます。これはユナイテッドの攻撃が上手くいかない時には必ずといって良いほど見られる症状ですが、相手の中盤を吊り出してその背後を突いたり、逆に中盤を深くに押し込めておいてその手前のスペースを有効に使ったりといったシーンがほとんどありません。
ハマーズ戦で言えば、ライスとソウチェクのダブルボランチのポジションを大きく崩すことができなかったわけですが、守備の項で書いたようにユナイテッドの3センターは守備面の連携は完璧でした。しかし、リスクを冒して飛び出すことがほとんどなかったために、ライス、ソウチェクが慌てなければならないシーンはほぼ生まれていません。ハマーズ戦で言えば4度だけ、中盤剥がしが上手くいったシーンがありました。最初は49分のフレッジ。これはライスのパスをフレッジが引っ掛けてゴール前へ抜け出た決定機でした。そして2回目は67分のラッシュフォードがソウチェクの背後を取り、ロナウドがそこへパスを出したシーンで、ドーソンにシュートブロックされますがこれも惜しいシーンとなりました。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
そして3つ目は91分のマルシャルのシュートシーン。ブルーノが中央でボールを持ち、ライス、ソーチェクの背後を取ったマルシャルにパスを出したシーンで、しっかりヒットできていればゴールになっていたかもしれないシーンでした。そして最後は決勝点のシーン。フレデリクスのヘディングでのクリアがロナウドにこぼれますが、この時ソウチェクは上がっており不在。ライスがスライドしてきますが間に合わずマルシャル→カバーニ→ラッシュフォードと繋がりました。
このように、中盤のポジションを動かしたり、その背後を取ることはチャンスに繋がりやすくなります。しかしながら、ハマーズ戦の4度の中盤剥がしにしても狙っているというよりは偶発的な事が多く、スールシャール時代から崩しの形がないと言われる要因の1つだと思います。ちなみにハマーズ戦のxTマップ(脅威期待値マップ)を見てもバイタル付近で危険なアクションができきていないことが良く分かります。

21-22PL23 ユナイテッドxTマップ 出典:TOTAL FOOTBALL ANALYSIS
2-2.創造性の欠如
もう一つの攻撃不全の要因はアタッキングサードでの創造性の欠如でしょう。これはラングニックが監督になってからより顕著になっています。攻撃陣に自由を与えていたスールシャール監督から、縦への素早い攻撃を義務付けているラングニック監督に変わって頻度が増している現象です。直線的にゴールを目指すスタイルは相手の陣形が崩れていれば有効ですが、ハマーズのように組織がしっかりしているチームは帰陣も速く、ブロックを作るのもスムーズなので通用しにくいです。むしろスピードを上げようとするあまりミスが増える傾向になります。
ハマーズ戦ではボール保持率が57%と、保持する時間が若干長かったユナイテッドですが、アタッキングサードに入ったところからのアイデアは乏しく、前項の中盤剥がしもそうですが、ギャップを作るような動きもパスもあまり見られませんでした。サイドからの仕掛は多かったですが、グルーンウッドの判断は精彩を欠き、4分のカウンターの場面ではブルーノ、ロナウドと2人ゴール前でフリーだったにも関わらず自らシュートを選択しチャンスを不意にしています。エランガも、プレスバックなど守備面ではかなり貢献しましたが肝心の攻撃には効果的に関与できず、62分にラッシュフォードと交代となっています。
[http://Embed from Getty Images:embed:cite]
下の図は、ユナイテッドの選手別の「脅威アクション」のスタッツです。これを見るとパスで脅威を与えているのはブルーノ1人。ドリブルはダロトとグリーンウッドの右翼だった事が分かります。やはりパスにしてもドリブルにしても、もう少し「脅威を与える」人数が必要ですし、最終的な崩しのシーンではワンタッチプレーやワンツー、3人目の動きなど意表を突くプレーが必要だと思います(この辺りはサンチョ、ポグバ 、ショーの復帰にも期待!)。

21-22PL23 xTアクション 出典:TOTAL FOOTBALL ANALYSIS
またチャンスが少ないのであれば、フィニッシュ精度を上げて確実に仕留める必要もあるでしょう。90分までのxGが0.72というのは決定的なシュートはそれまでなかったということですが、やはり49分のフレッジのシュートは決めるべきでしたし、4分のグリーンウッドもより確実性の高い選択をすべきだったと思います。
👿まとめ
鉄壁のディフェンスを見せたハマーズ戦。1度コーナーでヴァランがマークを外しソウチェクにヘディングシュートを打たれた以外は、恐らく完璧な守備対応を90分間続けたと思います。デ・ヘアも今回はシュートセーブ1回のみで、ほとんど仕事がなかったですが、本来なら毎試合これぐらいの守備強度を見せるべきかもしれませんね。
一方で92分までゴールを割る事ができなかった攻撃は、今回もアイデア、創造性、クオリティ全てにおいて標準以下の出来だったと言えます。ラングニック監督になって10試合となりますが、1得点のみで終わったのが実に6試合。また、複数得点した3試合全てで失点を喫しているように、攻守のバランスを取ることに苦労しているのは継続中です。
攻守のバランスという課題はありつつも、今回の試合は2週間の中断期間前、さらに4位ハマーズが相手とあって絶対に勝たなければならない試合でした。そういった意味では最後の最後に劇的なゴールで勝ち点3を獲得出来たことはチームの勢いを増す大きな勝利でしたし、少しづつですが、内容も選手のメンタリティも改善が見られているという点でも重要な勝利でした。
最後には4人のフォワードを投入し、その途中出場のマルシャル 、カバーニ、ラッシュフォードが絡んでの得点はラングニック監督にとっても、チームにとってもサポーターにとっても大興奮のゴールとなりました。まさに気持ちでもぎ取った勝利。ホームのサポーターの声援の分だけユナイテッドが上回りましたね。中断明けもこの調子を維持して、なおかつ更なるレベルアップを期待したいです。
*大興奮のセレブレーションはこちら!
– Edi’s knee slide
– Marcus in the pile on
– Scott from outta nowhere
– Rapha absolutely buzzing
– Telles vs the corner flag
– Fred from the dugout
– Bruno’s passionThis video footage has it all…😅🤷♂️pic.twitter.com/tTXMqn9jMZ
— Nick Speakman (@_Nick) 2022年1月22日

21-22PL23 ユナイテッドvsハマーズ スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

21-22PL23 試合結果 出典:ユナイテッド公式
この試合の結果、ユナイテッドは勝ち点38でついに4位浮上!3位チェルシーより2試合少なく、勝ち点差は9となっています。
2週間のウィンターブレイク&代表マッチウィークを挟んで次の試合はFAカップ4回戦、オールド・トラッフォードでのミドルスブラ戦。2月5日(土)5:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
コメント