【21-22PL第28節】マンチェスター・ダービーに見るシティと決定的に差のある4項目【シティvsユナイテッド】

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こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22プレミアリーグ第28節 アウェイ エティハド・スタジアムでマンチェスター・シティと対戦したユナイテッド。試合は開始6分でシティがデ・ブライネのゴールで先制する展開に。ユナイテッドも22分にカウンターからサンチョが決めて同点に追いつきます。しかしながらその6分後、フォーデンのシュートをデ・ヘアが弾きますが、セカンドボールをデ・ブライネに蹴り込まれて2-1とされます。後半、ギアを上げたシティは圧倒的にボールを支配。68分にはコーナーキックからマフレズにボレーシュートを決められ2点差とされます。その後ユナイテッドは運動量が落ち、シティのボールを奪えません。アディショナルタイムにはマフレズに2点目を奪われ、4-1でマンチェスター・ダービーを落とすという屈辱の結果に終わりました

*試合のハイライトはこちら

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今回はこのマンチェスター・ダービーに見る、シティと決定的に差のある4つの項目についての考察です!

以外項目です。

👿ラインナップ

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21-22PL28 シティvsユナイテッド ラインナップ

①組織力・戦術

前スールシャール監督は、アウェイ エティハド・スタジアムで19-20シーズンから20-21シーズンに掛けて3連勝を飾っています。時には5バック、時にはマンツーマンを使いながら、引いて守ってからのカウンター戦術でダービーでの勝利を掴んできました。決して、戦術家ではないスールシャールがペップ相手にここまでやれた要因は「組織力」...ではなく「個で組織を破壊する」ことを基本コンセプトとして持っていた為です。今でこそ絶不調のラッシュフォードを始め、セビージャへローン移籍中のマルシャル、リーズへ旅立っていったジェームズなどのスピードを存分に生かした戦法は、対シティという意味では完璧な戦術だったと言えます。さらに、中盤ではマクトミネイ、フレッジが番犬のごとくボールホルダーを追いかけ、幅を取ろうとするシティのウィングにはワン=ビサカとショーの粘り強いディフェンスで対抗。守備に関しても組織的に守ったというよりは個の特徴を最大限に活かしたやり方でした。

スールシャールが去り、新たにやってきたラングニックは、近代ドイツサッカーの礎を築いたと言っても過言ではない戦術家です。プレミアで初めて相まみえた戦術家同士の対戦は、拍子抜けなほどペップの圧勝に終わりました。ラングニック監督はロナウド、カバーニという2人のストライカーを欠いて、奇策であるブルーノの偽9番システムを使いました。基本フォーメーションを4-2-3-1。ブルーノをトップ、ポグバをトップ下とするシステムを基本に、ミドルゾーン以降は4-4-2に可変しブロック守備を敷くやり方でした。ラングニック監督がこの試合で特に強調したのは「陣形のコンパクトさ」です。前半開始からシティがボールを支配し、わずか6分でデ・ブライネのゴールにより失点しますが、その後も丁寧なハイプレス、ミドルプレス、リトリートの使い分けで陣形はかなりコンパクトに保っていました。

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攻撃面でも、素早いトランジッションからシティのディフェンスラインの裏を狙うということを意識しており、22分のサンチョの得点シーンはその狙い通りだったと言えます。ボールをほとんど支配され28分にはフォーデンのシュートをデ・ヘアが弾き、こぼれ球に詰めたデ・ブライネに2点目を決められますが、ユナイテッドも追加点のチャンスを作れており、それほど悪い内容ではありませんでした。

しかし後半に入り、スピードとインテンシティを上げたシティに攻め込まれ、ほとんどボールに触ることすらできなくなっていきます。ユナイテッドは組織的なプレッシングも乱れ、曖昧なハイプレスにより陣形は徐々に間延び。トランジッションも効かなくなりました。

そこには組織としての圧倒的な差が見え、ラングニック就任以降守備の改善が行われているというのが嘘であるかのような貧弱さを露呈しました。戦術面でも、ラングニックの基本となるプレッシングとトランジッションは安定感に掛け、どちらもシティの方が遥かに効率的でした。加えて陣形のコンパクトさを保つことを意識し過ぎて、肝心の人に当たりに行くのが疎かになっている面も…。ラングニックとペップ、率いている年数が違うので当たり前ですが、戦術面の成熟度でも雲泥の差があります。

②選手のクオリティ

「ユナイテッドにはロナウド、ブルーノ、ポグバ を始めとしたワールドクラスの選手が多く在籍し、タレント力は世界屈指である」というのは色々なところで言われることですが、これはある意味正解だと思います。ただし、そこには条件があります。彼らが実力を発揮するにはプレッシャーがなく、スペースがあり、コンディションが整っている場合に限られます

ロナウドは衰えもありゴールを奪えませんし、ブルーノもハードワークの為プレー精度を落としています。ポグバは波がありシーズンを通しての活躍はなかなか難しい状況です。シティ戦でゴールを決め好調を維持するサンチョも、前半決定的なシュートを大きく外し、指揮官の信頼を得ているエランガも独力で守備網を破壊するシーンはありません。

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守備陣にしても実力を発揮できるのは、敵陣でのプレー時間が多く、単発的な仕掛けを受ける時だけで、幅を使った揺さぶりや、スピードのある一対一の仕掛けをしてこない相手に限られます。マグワイアはますますスピードのある仕掛け対して自信を失っており、ヴァランは離脱を繰り返しています。リンデロフはフィジカル勝負が苦手ですし、サイドバック陣もスライド守備を得意としません。

シティ戦は4失点を喫しましたが、全ての失点で対応の不味さやミスがあり、もう少しなんとか出来たはずです。決定的となった3失点目のコーナーにしても、デ・ブライネのキック精度とマフレズのシュートテクニックは素晴らしかったですが、ペナルティアーク付近のマークを全く無視してるのは、いつもユナイテッドがしている事であり、シティは分析した結果あのコーナーをデザインしたはずです。

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とまぁ、イライラしているためにネガティブなことを羅列しましたが(笑)、プレッシャーが掛かった時のミスの多さはユナイテッドが長年抱えている課題であり、ポジショニングなどの組織的な問題が根本にあるとしても、能力を発揮できている選手が少ないのは事実でしょう。

シティの選手たちはデ・ブライネ、シルバ、ロドリ、カンセロ、フォーデンなど持っているクオリティはもちろん高いですが、プレッシャーを受けてもAがダメならBというように複数の選択肢を持っているために、余裕を持ってプレーできています。ユナイテッドの選手と比べて、技術的な差はそれほどなかったとしても、シティの選手の認知、判断、決断、実行の正確さとスピードは次元が違うと感じました。

タイトルを目指すなら、選手のクオリティはシティのレベルが基準になるということです。果たして今のユナイテッドの選手の中で、この基準を満たしているのは何人いるでしょう?

③メンタリティ

シティ戦後、最も多くの批判を浴びたのはユナイテッドの戦う姿勢、メンタリティに関してでしょう。クラブOBであるロイ・キーンは

「ユナイテッドはあきらめた。こともあろうにダービーでだ。これは絶対に許せない。もちろん試合に負けることはある。しかし問題はその負け方だ。ミスは許せる。しかし、ボールを追わない、タックルはしないというのは論外。この試合に出た数人の選手は2度とユナイテッドでプレーをしてはならない」

と断罪するとリオ・ファーディナンドも

「毎日一生懸命働く気がないのなら、クラブから出ていけ」

と切り捨てました。確かに後半はボール保持率21%シュート0本と何もさせてもらえず、特に3失点目を喫してから明らかに動きがなくなりました。3失点目の直前の64分に投入されたリンガードとラッシュフォードですら、シティのボール回しに対して積極的なプレスを行わないなど、無惨な光景が...。

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選手たちは明らかに戦意と自信を喪失しており、今シーズン幾度となく見られる気持ちが折れてしまっている状態でした。ラングニック監督も、就任当初からユナイテッドの選手に逆境を跳ね返す精神力が欠如していると感じているようですが、以前の記事でも書いたように、選手に自信と目的意識を与え、モチベーションを上げるのも監督の仕事です。

もちろんプロである以上、選手の責任なのは間違いないのですが、ラングニックがこれまで指導してきたレッドブルグループの若い選手たちとは違い、すでにサッカー界では成功者であるユナイテッドの選手は、ハンガリー精神が欠けているというのはあるかもしれません。しかし、スールシャール時代にはビッグゲームでメンタルの強さとインテンシティの高さを見せることもあったので、上手く導いてやればできるはずだ とも思います。

ただ、ダービーであのような情けない姿を晒したことは当然非難されるべきです。たとえ相手が世界1、2の実力を持つ最強のチームであっても、ダービーで気持ちで負けることは許されないと思い出して欲しいですね。

④アイデンティティ

シティ戦で感じたのは「ユナイテッドのアイデンティティが揺らいでいる」ということでした。アイデンティティという言葉は、とても曖昧で言語化が難しい概念ですが、上記してきた組織力、戦術、選手の質、精神力全ての根底に存在し、影響を与えています。家の土台となる柱のようなもので、そこが不安定であればその家はモロく崩れやすくなります。

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”YOUTH COURAGE SUCCESS”【若さ、勇気、成功】 ユナイテッドのコアバリュー

アイデンティティを「そのクラブの持つサッカー観、在り方」とすると、ユナイテッドのアイデンティティは「高いクオリティを待ち、攻撃的で勇敢な姿勢で戦い、最後まで諦めないメンタリティを持つクラブ」というのが個人的な認識です。コレを当てはめてシティ戦を振り返った時に、果たしてそのアイデンティティを体現できていたと言えるでしょうか?

2013年のファーガソン退任以降、4人の正式監督と4人の暫定監督(スールシャールはどちらもカウント)が率いてきましたが、モウリーニョまででクラブのアイデンティティは失われ、それを取り戻そうとしたスールシャールは道半ばで舞台袖へ退きました。そしてラングニックがやってきたわけですが、正直ラングニック監督になってからアイデンティティの濃度は薄まっているように感じます。

そしてそのラングニックは来シーズンからコンサルタントという立場でクラブの重要な決定事項に関与していくことになります。レッドブルグループで、ザルツブルグ、ライプツィヒ、ニューヨークなど数々のクラブをオーバーホールしてきた実績は期待できる反面、ユナイテッドのアイデンティティに対してどのように距離を取っていくのかも注目すべきポイントとなります。

一方のシティは2008年にUAEの投資グループADUG(アブダビ・ユナイテッド・グループ)に買収されると、徐々にスカッドを強化。11-12シーズンにプレミアを44シーズン振りに制覇すると、16-17シーズンにはペップ・グアルディオラ監督を迎え常勝軍団へと変貌を遂げます。ペップの就任と共にクラブの哲学やアイデンティティもより強固なものとなり、2008年以前のシティとはまるで別のクラブへと進化しました。そのペップの就任と同時にクレストも変更しており、文字通り生まれ変わったのが現在のシティです。買収から14年、ペップ就任から6年の間にDNAを完全に書き換えたということですね。

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シティ戦の惨敗は、「本当にこのアイデンティティで良いのか?本当にコレで勝てるのか?時代遅れのアイデンティティになってないのか?」と問われているような気分でした。これだけ多くの監督を使っても、一向にタイトルに近づかない...。もしかしたらユナイテッドも、一からクラブを再建する時期が近づいているのかもしれません。それこそかつてのシティやチェルシーのようにクレストを変更するところから...。その新クレストには翼はないと思いますが(笑)。

👿まとめ

シティ戦の無惨な敗戦の責任は選手、監督、両方ともにあります。多くのところで指摘されている通り、試合を諦めハードワークを怠るというのは、ダービーでなくても許されるべきではありません。前半は決して悪くなく、ブルーノ偽9番システムや、サンチョの活躍などポジティブな面もなかったわけではありませんが、やはりこの試合は選手達もしっかり反省すべきでしょう。

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ラングニック監督にしても試合のアプローチには少々疑問が残ります。やはりラングニック監督は、モチベーションを上げる工夫が必要でした。シティ対抗するために、戦術的に陣形のコンパクトさは重要だったと思いますが、それよりもユナイテッドのアイデンティティを思い出させ、まず気持ちで負ける事があってはならないとわからせる必要がありました。それができなかったことで良いのか悪いのか、現在のユナイテッドの実力が丸裸にされた印象を受けます。逆に冒頭に書いたようにスールシャール前監督は、こういったビッグゲームで士気を上げ、実際の実力差を小さく見せる事に長けていました(褒めてます(笑))。

しかしこれが偽りないユナイテッドの現在地であり、シティとの差なのです。来シーズン、新監督がやってくることは大きな楽しみですし、期待もありますが現実的にタイトル獲得までにはまだまだ時間が掛かると思います。3年...いや5年...。柱であるアイデンティティやクラブ哲学を再度見直し、古くて役に立たなくなったものは新しいものと交換する必要があるかもしれません。全く一からの再建は難しいにせよ、新監督招聘は大きな転機になり得ます。ラングニック監督がシティ戦の前に語ったように計画な補強戦略のもと、システムに合う選手と契約する事もすごく重要になります。ラングニックのコンサルも含めて「これでダメなら解散!」っていうぐらいの気持ちで臨んでほしいと思います。

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21-22PL28 シティvsユナイテッド スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

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21-22PL28 試合結果 出典:ユナイテッド公式

この試合の結果、ユナイテッドは5位に後退。アーセナルに抜かれています

次節はオールド・トラッフォードでのトッテナム・ホットスパー戦。3月13日(日)2:30キックオフ。負ければ終了 勝つしかない!カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

  1. kaiaskun より:

    仰る様に実力差を見せつけられましたね。
    もう自分の中ではCLも諦めて、チェルシーがあれなのでトゥヘル来て欲しいとか現実逃避してますw
    現実的ではないですが、もしトゥヘルの様に、崩壊したチームを立て直してきた実績のある監督が就任すればユナイテッドも立ち直るのか、それともMasaさんが仰る様に根本的なアイデンティティーを改善しなければ難しいのか分かりませんがとにかく悔しいです。
    口を出すOBは多いですがバルサのシャビの様な生え抜きの監督候補もいないですし、ここまで来たら外圧に負けずドイツ流を貫いて欲しいですね。

  2. masachesterutd より:

    Re.kaiaskunさん
    コメントありがとうございます!
    チェルシーの件でトゥヘルも候補に挙がる可能性はありますが、恐らく色々精査した上で、テン・ハーグやポチェッティーノに絞っていると思われるので、あまりブレないで欲しいです...。もちろんトゥヘルは素晴らしい監督ですが、それならチェルシーの前に来てほしかったですね(笑)。ラングニックは暫定監督という難しい立場ですが、何とか少しでも形にして来シーズンへ繋げて欲しいです。

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