【21-22CLラウンド16第2戦】アトレティコ・マドリー戦に見るユナイテッドの実力と来シーズンの展望【コラム】

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こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22チャンピオンズリーグ ラウンド16第2戦。ホームでアトレティコ・マドリーと対戦したユナイテッド。試合はユナイテッドが開始からボールを保持し、エランガが果敢にボックス内へ侵入。チャンスを作ります。しかし、不可解な判定に冷静さを失っていったユナイテッドは、徐々にペースをアトレティコへ渡してしまいます。そして41分、エランガへのファールが流され、アトレティコがカウンターに。その流れからロディにヘディングで決められ先制を許します。後半になり反撃に出たいユナイテッドでしたが、アトレティコの狡猾に時間を使ったプレーにペースを握れません。ラングニック監督はラッシュフォード、マティッチ、ポグバ、カバーニ、マタと交代カードを切ってなんとか得点を狙いますが、堅守のアトレティコを崩せず0-1で敗北。チャンピオンズリーグからの敗退が決定しました。

*試合のハイライトはこちら

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今回はこの試合の総括と、チャンピオンズリーグ敗退の意義、そして来シーズンへの展望などをコラム形式で!

以下項目です。

👿ラインナップ

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21-22CL-R16-2 ユナイテッドvsアトレティコ ラインナップ

①アトレティコ戦総括

アトレティコの勝ち抜けは妥当。一言で言うとそのような内容でした。第1戦はなんとかエランガのゴールで同点に追いつき、第2戦のホームに望みを繋いだユナイテッドでしたが、前半の1失点により敗退しました。

開始から自分たちのやりたい事ができていたのはユナイテッドの方でしょう。スパーズ戦の素晴らしい勝利同様に、ロナウドがビルドアップに絡みながらブルーノ、フレッジのダブル8番を高い位置に上げ、アトレティコの5-3-2のブロックを崩そうとします。特に右サイドはダロトとエランガの良さが出ており、13分にはダロトの持ち上がりからブルーノの折り返しにエランガが合わせて惜しい場面を作りました。

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しかし、ユナイテッドは思うよな判定をしてくれないスラフコ・ビンチッチ主審に対して徐々にイライラが募っていきます。キッカケとなったのは21分のボックス内でブルーノがヘイニウドに倒されたシーンでした。この時の判定はゴールキックとなりますが、フレッジは長い間主審とやり取りしています。その直後のプレーでもブルーノへのファールを流され、マクトミネイのファールは取られるなど不可解な判定が多く、ユナイテッドの選手たちは感情的な反応を強めていきます。

その状況を冷静に読み取り、自分たちの仕事に集中し始めたアトレティコは徐々にビルドアップのレベルを上げていきます。自陣からの繋ぎには3、4パターンの形が見られ、ユナイテッドにハイプレスの機会を与えませんでした。さらに、右のトップとして出場したグリーズマンは非保持の場面で右サイドに出る動きをします。もちろんその事で5-4-1になり、より守備ブロックを強化する狙いだったとは思いますが、トランジションではそのまま内側に入ってくるので(フレッジのポジション)、マグワイアが釣り出される事になります。この裏をダイアゴナルのランニングでジョアン・フェリックスが狙うのがシメオネの攻撃の作戦でした。失点シーンもまさにこの狙い通りにマグワイアが釣り出された所が起点となっています。

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その失点シーンには、2つのユナイテッドに対するファールがスルーされたように思います。エランガに対するヘイニウドのファールとフレッジに対するジョレンテのファールです。チーム全体としてもエランガのファールに対する判定に動揺したところを突かれた格好でした。特にエランガ自身は怒りから帰陣も遅れましたし、ロディをフリーにさせてしまいました。責めるつもりはありませんが、19歳にとっては苦い経験となったでしょう。

普段、ジャッジに関して必要以上に言及しないようにしていますが、今回のビンチッチ主審は試合を壊したと思います。特に後半、最後の30分間のボールプレー時間が僅かに11分だったと言われており、すぐに倒れるアトレティコのペースに乗せられ笛を吹きまくり試合の流れを寸断しました。アトレティコは前半の試合運びにしても、後半の審判を巻き込み自分たちの良いように時間を使う戦い方にしても、ユナイテッドより1枚も2枚も上でした。まさに試合巧者だったという事でしょう。

しかしながら、ユナイテッドから見ればある意味「自滅」です。判定に対して冷静さを失い、試合のコントロールどころではなくなった上に、ラングニック監督も選手交代以外のプランが存在しませんでした(用意していたとしても使えるような状況ではなくなった)。試合終了時に30オーバーの選手がピッチに5人(デ・ヘア、マティッチ、マタ、カバーニ、ロナウド)いたというのは皮肉です。レッドブル時代に「23歳以上の選手は才能として考えていない」と豪語したラングニック監督が、最終的にベテランに頼るしかないほどチームとして地に足がついていなかったという事です。まして、こういった時にチームをまとめるべきキャプテンのマグワイアを下げたことは、かなり重要な意味を持つと思います。

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組織力、戦術、能力、試合運びのみならずメンタリティの部分で大きくアトレティコに劣ったユナイテッドの敗退は妥当。そう言わざるを得ない試合でした。

②ヨーロッパでの敗退

ベスト16で大会を後にしたユナイテッド。CLではファーガソン退任以降は13-14シーズンと18-19シーズンのベスト8が最高です。さらに13-14シーズンのオリンピアコス戦以降、決勝トーナメントのホームゲームで勝っていないという驚きの事実があります。ファーガソン時代は「要塞」として恐れられたオールド・トラッフォードですが、もはやその力は失っているという証拠でしょう。そしてこれはヨーロッパのカップ戦のみならず、国内リーグにおいても同様です。悪魔の魔力は衰えています。今回のCL敗退にしても、5年連続の無冠がほぼ確定したことにしても、厳しい言い方をすれば「当然」です。これが現在のユナイテッドの実力なのです。国内リーグ戦においても5位、6位を争うチーム力しかもっていません。

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以前にも少し書きましたが、スールシャール時代は時折「魔法」が発動され実力以上のパフォーマンスを見せることがありました。しかし、ラングニック就任以降、そういった要素は消え去ったと思います。この要因は「戦術的アプローチ」で、ユナイテッドは文化的に戦術的な戦い方に上手く適応できないのだと思います。あくまでもユナイテッドの体質が古いままなのが要因であって、ランニングが悪いというのは違う気がします。恐らく、誰が暫定監督の座に就いていても状況はあまり変わらなかったと思います。

加えて、OBや私のような古参のサポーターが思い描く古い「ユナイテッド像」を押し付けることが足枷となり、前へ進めないというのもあります。情熱、闘争心、ハードワークはもちろん大事です。ただ「それこそがユナイテッドだ!」をいつまで続ければ復権できるのでしょう...。

どう考えても現代フットボールにおいて戦術の重要度は大きいです。ここをいつまでも無視していては、どんどんトップチームとの差は開いていくでしょう。例えば、ラッシュフォードやマグワイアに必要なのは情熱やハードワークでしょうか?彼らに必要なのは戦術的にプレーする思考であったり、判断力や技術ではないでしょうか?そういったことも感じ取ってのラングニック招聘だったはずです。確かに思ったような結果ではないかもしれませんが、それだけ根の深い問題がユナイテッドには存在しているということです。個人的にはラングニック招聘は正しい道だと思います。ただ、そう思えないという意見もわかります。目の前の結果と「ユナイテッドは最強であるべき」という考えだと、ラングニックの成績では満足できなくて当然です。

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しかし今見ているユナイテッドが嘘、偽りのない真実のユナイテッドの姿です。かつて栄華を誇ったユナイテッドはもうありません。ある意味ではラングニックの理路整然とした思考法や戦術論は、選手たちのモチベーションになっていない為にユナイテッドの能力を丸裸にたところもあります。どれだけ能力の高い選手が揃っていてもケミストリーが起きない組織になっているのです。...。来シーズン、たとえハーランドやムバッペなどがユナイテッドに来たとしても、リーグタイトルを取る事はないでしょう。誰を獲っても関係ありません。ユナイテッドを進化させるのは、適切な監督と戦術のみならず、文化的な書き換えが避けて通れないと思います。情熱、闘争心、ハードワークという精神を無くす必要はありませんが、ちょっと優先順位を下げてもっと賢く戦える組織になるべきではないでしょうか。

アトレティコとは経験値が決定的に違いました。ユナイテッドはまるで産まれたての赤子のように戦い方を知らなかった…(ちょっと言い過ぎた笑)。今回のCL敗退はそのことを思い知らされました。

③来シーズンの成功を思い描けるか

ガリー・ネビルが皮肉交じりに語ったように、CL敗退によって国内リーグに集中できるというメリットはあります。基本的に週1でゲームをこなしていくことになるので、フィジカル的にも戦術的な準備という意味でも、アーセナル(消化試合数が今後多くなる)やウェスト・ハム(ELラウンド8へ進出)に対してはアドバンテージとなるかもしれません。最終的に4位以内に入ることを信じて残りの試合も応援しますが、たとえどんな結果になっても受け入れるつもりです。CL出場権を逃して選手の給料はカットされ、契約満了の選手をはじめその他多くの選手が去ったとしても、仕方ないと受け入れます。その結果、思うような補強ができなくても受け入れます。

「これが今のユナイテッドなんだ」と現実を受け入れる事から再スタートを切るべきです。22-23シーズンから新生ユナイテッドの始まり。そのぐらいの気持ちで新シーズンを迎える方が良いかもしれません...。そのためには、やはり新指揮官が誰になるのかというのはかなり重要な要素です。現在名前が挙がっているのはポチェッティーノ、テン・ハーグ、トゥヘル、ロペテギ、エンリケなどですが、ポチェッティーノ、テン・ハーグ、トゥヘルに絞られている印象もあります。

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トゥヘルに関しては、アブラモビッチオーナーの資金凍結により打撃を受けたチェルシーの事情により急浮上しています。もちろん能力的には申し分ないですし、ラングニックとも旧知の仲ですが、チェルシーの事情に左右されるためシーズン終了後にならないと先行きが分からないというのは少し遅い気もします。まぁ誰になるにせよ、タイトル獲得、そして復権までにはまだまだ時間が掛かる事を覚悟しておくべきでしょう。ユナイテッドの抱える問題はそう簡単に解決できません。長期的視野で監督人事は行うべきですし、上層部もそのように考えているはずです。

もう一度スカッドを精査し、新指揮官のスタイルに合った選手を獲得するところから始めることになります。スールシャールが築き上げた若く、魅力あるスカッドは大好きでしたが、新生ユナイテッドの為にはある程度の血が流れるのも仕方ないと思います…。

今回のチャンピオンズリーグ敗退後、デ・ヘアは

「もちろん、このクラブにとってベストな結果を望んでいる。僕自身、何年もここにいるし、このクラブを愛している。また難しいシーズンになる。僕は信じているけど、クラブがいつトップに返り咲くかはわからない。僕らは大きなものを求めて戦うんだ」

とコメントしました。個人的にはデヘアの意見に同感です。ユナイテッドのことを愛してますし、いつの日かトップに返り咲くと信じています。しかし、来シーズンの成功を思い描けるだけの根拠も確信も今はないというのが本当のところです。

👿まとめ

ヨーロッパのカップ戦の敗退はいつだって心を引き裂かれる想いがします…。まして、今回のように自分たちの力を存分に発揮したわけでもなく、とはいえ発揮できないのが実力だということを痛感させられての敗北は尚更応えます…。ロナウドやサンチョ、ブルーノなどの攻撃のキーマンをマンマークされ、先制点を奪ってからは撤退守備と時間稼ぎに徹したアトレティコは本当にタフな相手でした。ブルーノのキーパスは2本、サンチョは1本のみ。ロナウドに至ってはシュート0本という屈辱的なスタッツです。

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確かに勝てる見込みも充分にあった試合でしたが、ここで散るのも仕方ないと思うぐらい、点差以上のチーム力の差を感じました。ラングニック監督になって20試合で9勝、勝率が45%になったこともあり、色々書かれる事態になると思いますが、ユナイテッド上層部はブレずに今シーズンのリーグ戦4位以内の為に全力を尽くすべきですし、同時に来シーズンへ向けての準備を本格的に始動させるべきでしょう(グレイザーズよ!クリケットチームに投資してる場合じゃないぞ!!)。

今回もネガティブな記事になってしまいましたが、最後はキング・カントナのありがたいお言葉で締めたいと思います(笑)。

「妻だって、政治思想だって、宗教だって変えることはできる。でも、愛するクラブだけは決して変えられないんだ。」

By エリック・カントナ

*試合のスタッツはこちら

www.uefa.com

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21-22CL-R16-2 試合結果 出典:ユナイテッド公式

次の試合はプレミアリーグ第30節 オールド・トラッフォードでのレスター・シティ戦。4月3日(日)1:30キックオフ。残り試合全勝目指して!カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

  1. kaiaskun より:

    情熱やハードワークを言い続けても…身につまされる言葉です。自分も本当に反省です。
    ただオーレのアンバランスな所は懐かしく、無性に心を掻き立てられる所があって、ここに戦術が加わればと思ってしまってました。
    考えてみればファギー以降アカデミーから順調に伸びた選手もおらず補強しても空回り。
    これを監督に押し付けるのは気の毒ですね。
    来季のビジョンは不透明ですけど、このままだとトゥヘルが来ても勝てないと思いますし、当初の予定通りラングニックに補強は任せて欲しいです。頼むから辞任とかは止めて欲しいです。

  2. masachesterutd より:

    Re,kaiaskunさん
    ユナイテッドの抱える問題は、根が深いので単純に監督を変えれば解決するというものではないですね。組織として、統一されたコンセプトのもと動いていく必要があります。そのためのラングニック招聘だと思うので、今の段階でラングニックを切るのは間違っていると思います。

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