【22-23ユナイテッド新監督候補】テン・ハーグ/アヤックスの戦術分析 Part.2 ~守備戦術&ユナイテッドへの適合性~

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こんにちはMasaユナイテッドです。

今回は22-23シーズンの新指揮官候補、アヤックスを率いるエリック・テン・ハーグ監督の戦術分析Part.2です。

*Part.1はこちら!

【22-23ユナイテッド新監督候補】テン・ハーグ/アヤックスの戦術分析 Part.1 ~ビルドアップ&崩し~
22-23シーズンの新指揮官候補 エリック・テン・ハーグ監督の戦術分析Part.1!ビルドアップと崩しに付いて分析しました!

Part.1ではアヤックスの強さの秘密、そしてテン・ハーグ/アヤックスのビルドアップと崩しについて分析しました。Part.2では守備戦術の分析と、はたしてテン・ハーグはユナイテッドの指揮官にふさわしいのかを紐解きます!

以下項目です。

④守備の安定性

最後の分析はディフェンス面です。今シーズンのアヤックスはリーグ戦わずかに13失点です(3/25現在)。これはヨーロッパ5大リーグのどのチームよりも少ない失点数です。もちろんリーグレベルが大きく関係する数字なので、じゃあ18失点のシティより守備が固いのかというとそういう話ではありませんが、その守備戦術においてもテン・ハーグ/アヤックスは特徴的な構造をしています。

一言で言うとアヤックスの守備のポイントはトランジッションです。アヤックスはビルドアップや崩しの局面で見てきたように、ユニットとして近い距離感でプレーしながら前進し、ファイナルサードにもCB2人とアンカーのアルバレス以外の7人が入り込むほど縦陣形がコンパクトです。ボールサイドでは常にオーバーロードの状態が維持されているので、失った瞬間にすぐに取り返し、攻撃を再開する体制が整っています。さらに、ポジションチェンジし、たとえサイドバックの選手がボールを失ってもそのポジションをカバーしている選手がいるのでバランスが崩れる事も少なくなります。

守備の局面でキーマンとなるのはアンカーのエドソン・アルバレスと、もう1人はインサイドハーフのライアン・グラーフェンベルフ。アヤックスの6番はフランキー・デ・ヨングに代表されるようにボールテクニックとインテリジェンスに優れるタイプというイメージですが、アルバレスはハードワーカータイプ。危機察知能力と粘り強い守備が最大の特徴で、被カウンター対応も素晴らしく上手いです。両サイドバックが思い切って高い位置を取れるのも、後方でアルバレスが控えていることが大きいです。

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そして左インサイドハーフに入ることが多いグラーフェンベルフですが、本来はボックス・トゥ・ボックスでドリブルやパスなど攻撃面に特徴のある選手です。190cmの長身でフィジカルも強く、ポグバとも比較される19歳ですが、6番にも8番にも10番にもなれるプレービジョンを持っています。ファイナルサードでボールを失った際に、フィジカルを活かしてボールを奪うことも可能ですし、相手が強豪チームの場合はアルバレスと並んでダブルボランチを形成するシーンも見られます。また、攻め上がったブリントのカバーの意識も植え付けられており、トランジッションの場面で大きな役割を任されています。

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アヤックスのプレッシングに関しては、基本的にハイプレスから開始します。ハラーがボールを持つ相手CBにプレスを開始し、ボールサイドのサイドバックにはウィングが付き、相手の中盤に対しても基本的にマンツーマン気味にプレスを掛けていきます。ボールと逆サイドの相手CBには逆サイドのウィングがサイドバックへのパスコースを切りながらプレスします。言葉で書くと簡単に聞こえますが、だれ1人サボることなく連動してプレスを掛ける姿勢はよく訓練されている事を表しています。ただ、プレス回避に秀でたチームとの対戦では、後方のマンツーマン対応を逆手に取られ1本のパスでやられてしまう場面も...。

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アヤックスの守備戦術(ハイプレス)

プレスに関してはハイプレスが掛けられるような陣形でない場合は、横幅をコンパクトにして中央を閉じた陣形を作ります。こうする事でサイドへパスを誘導。パスが出たところをミツバチのように人数を掛けて奪いにいくというシーンも見られました。

このようにアヤックスの守備戦術はトランジッションとプレッシングに大きな特徴がありました。しかし、それも全ては攻撃へ繋げるためのもので、まさに「攻守一体」の概念が根底にあることが伺えます。あくまでも「攻撃マインド」を持った守備であるというのがテン・ハーグの特徴です。

⑤ユナイテッドへの適合性は?

これまでテン・ハーグの戦術を見てきました。幅と深さを意識し、細かく素早くパスを繋ぐ。ポジションチェンジやオーバーロード、囮のランニングを使いながらユニットとして前進、ニアゾーンを狙い仕留める、トランジションを重視など多くのキーワードが挙がりました。アヤックスの組織的な動きの完成度からしても戦術レベル的には申し分ないと思います。

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しかし、一部の方からはテン・ハーグの手腕を疑問視する声があがっているのも事実。デメリットとして挙がっているのは

✅5大リーグでの実績がない
✅試合中の修正力が弱い
✅ターンオーバーをあまり行わない
✅メディア対応が下手

などです。この記事を読んでいるユナイテッドサポーターの方々も、次期監督として果たしてテン・ハーグがふさわしいのか?テン・ハーグが監督になって上手くいくのか?ユナイテッドは結果的に強くなりタイトルに近づけるのか?というところが知りたいと思います。

これに関しては論理的に考えると「難しい」というのが結論です。最も大きな理由は現在のユナイテッドのスカッドとテン・ハーグ・アヤックスの戦術があまりにもかけ離れている為です。戦術分析で見てきたように、トランジッションの部分を除けば、戦術の根本概念はポジショナルプレーであり、ユナイテッドの選手たちが最も苦手としている組織的な動きがかなり重要です。

前線や中盤の選手はまだしも、キーパーと最終ラインはショーを除いてほぼテン・ハーグのやりたいことを実践できない可能性が高いです。仮にテン・ハーグを招聘するならば、根本的な補強プランの見直しが必要になるでしょう。それこそパス出しに優れた左利きのCBは必須だと思います。

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しかしながら、これはあくまでもテン・ハーグがユナイテッドでいきなりアヤックススタイルを再現しようとした場合の話です。ラングニックがユナイテッドに来て、ランニングスタイルの落とし込みを途中で辞めたように、恐らくはユナイテッドの選手特性にある程度合わせながら徐々にテン・ハーグのやりたい形を落とし込んでいくことになるはずです。テン・ハーグは確かに確固たる戦術信念を持っていますが、同時に2017年のアヤックス就任以降、主力選手が毎シーズン入れ替わる中で選手特性に合わせたプレー原則を当てはめてチームを微調整してきました。もちろんそこにはクラブ全体としてのブレないコンセプトと育成・補強方針があってのことだというのは①の項で述べた通りです。しかし、やはりテン・ハーグ自身の選手特性を活かす手腕もかなり大きいです。

さらに逆を考えれば、テン・ハーグの戦術特性である丁寧なビルドアップや、チームの必殺技となる崩しの形、そして前からの積極的な守備はユナイテッドが手に入れたい要素でもあります。戦術の落とし込みが完了し、安定した強さを手に入れタイトル争いに食い込めるようになるまでにはかなりの時間が掛かりますが、トライする価値はあると個人的には思います。

というのも、前回の記事で書いたように、今こそユナイテッドが変わるための転換期だと思うからです。それこそ、テン・ハーグ招聘により文化的な書き換えが必須になりますが、今変わらなければいつ変わるのか...という想いもあります。いつまでも昔の強かった姿を取り戻そうともがくのではなく、新しい、現代型のユナイテッドを見たいと個人的には思います。たとえ、多くの選手が去ることになったとしても...。

*前回の記事はこちら!

【21-22CLラウンド16第2戦】アトレティコ・マドリー戦に見るユナイテッドの実力と来シーズンの展望【コラム】
21-22チャンピオンズリーグ ラウンド16第2戦。アトレティコに0-1で敗れた試合の総括と、ユナイテッドの実力、来シーズンの展望をコラム形式で!

⑥選手別の戦術適合性

最後に主観以外の何物でもないですが、現ユナイテッド主要選手のテン・ハーグ戦術への適合性を評価してみたいと思います(笑)。同ポジションのアヤックスの選手と比較しながら10点満点で評価します。

GK
ダビド・デ・ヘア・・・3 (vsレンコ・パスフェール)
ディーン・ヘンダーソン・・・5 (vsレンコ・パスフェール)
DF
ハリー・マグワイア・・・3 (vsリサンドロ・マルティネス)
ラファエル・ヴァラン・・・6 (vsリサンドロ・マルティネス)
ビクトル・リンデロフ・・・5 (vsユリエン・ティンバー)
エリック・バイリー・・・7 (vsユリエン・ティンバー)
フィル・ジョーンズ・・・5 (vsユリエン・ティンバー)
アーロン・ワンビサカ・・・4 (vsヌサイル・マズラウィ)
ディオゴ・ダロト・・・7 (vsヌサイル・マズラウィ)
ルーク・ショー・・・9 (vsダレイ・ブリント)
アレックス・テレス・・・4 (vsダレイ・ブリント)
MF
ネマニャ・マティッチ・・・5 (vsエドソン・アルバレス)
スコット・マクトミネイ・・・6 (vsエドソン・アルバレス)
フレッジ・・・6 (vsライアン・グラーフェンベルフ)
ポール・ポグバ・・・8 (vsライアン・グラーフェンベルフ)
ブルーノ・フェルナンデス・・・7 (vsスティーブン・ベルフハウス)
ドニ―・ファン・デ・ベーク・・・10 (vsスティーブン・ベルフハウス)
ジェシー・リンガード・・・6 (vsスティーブン・ベルフハウス)
ファン・マタ・・・8 (vsスティーブン・ベルフハウス)
FW
マーカス・ラッシュフォード・・・3 (vsアントニー/ドゥサン・タディッチ)
ジェイドン・サンチョ・・・9 (vsアントニー/ドゥサン・タディッチ)
アントニー・エランガ・・・4 (vsアントニー/ドゥサン・タディッチ)
エディンソン・カバーニ・・・9 (vsセバスティアン・ハラー)
クリスティアーノ・ロナウド・・・7 (vsセバスティアン・ハラー)
アントニー・マルシャル・・・4 (vsセバスティアン・ハラー)

ざっとこんな感じですかね...。キーパーに関しては組立への参加というところをポイントにしました。CBはパス精度とポジショニング、機動力とアグレッシブな守備。SBはウィンガーとの連携とインナーレーンでのランニング、戦術理解度。アンカーはカバー範囲とアグレッシグさ。IHはハーフスペースのランニングとボールスキル。ウィンガーはボールスキルとクロス精度。センターフォワードはヘディングでの得点力と降りて受けるポストプレーを主な評価ポイントにしました。

これを見るとデ・ヘア、マグワイア、ラッシュフォードはかなりプレーを改善しなければ難しいと思いますし、攻撃陣はエランガにしてもそうですが、全体的にアスリート能力が高くスピードを重視してきたユナイテッドにおいて、よりボールスキルが求められると考えられます。アヤックスと全く違うポジションはやはりCBで、よりボール保持の時間が長くなるという前提に立てば現メンバーは苦しくなりますね...。

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ただ、これはあくまでもアヤックスと比べてという話なので、ユナイテッドではもう少しボール保持の時間が減り、カウンターなどのスピードに乗った攻撃が増えると思いますし、そうなれば現メンバーの良さは活きてくるでしょう。CB陣にしても、プレミアでの守備強度を考えれば逆にアヤックスのCBでは不十分だと考えられるので、アンカーにパス出しタイプを置いて(それこそガーナー!)ビルドアップの起点にするなど、現有メンバーを活かす策はあるとも思います。

👿まとめ

3月25日現在、ユナイテッドの来シーズンの監督はまだ決まっていません。FD(フットボール・ディレクター)であるジョン・マートフとTD(テクニカル・ディレクター)であるダレン・フレッチャーが候補者の面談を行なっているようですが、テン・ハーグは2人に感銘を与えたと報じられており、来シーズンの新指揮官のボールポジションにいると見られています。また、もしテン・ハーグが招聘された場合、コーチとしてユナイテッドに加わるかもしれない人物の中には、ロビン・ファン・ペルシ、ルート・ファン・ニステルローイ、ヤープ・スタム、レネ・ミューレンスティーン(2007~2013までユナイテッドのファーストチームコーチを務めた)など、ユナイテッドと関わりの深かったオランダ人達が含めれているのもテンションが上がります(笑)。

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ラングニックが推薦しているという報道もあり、早ければ3月中に正式決定となる可能性もあります。サポーターの間でも意見は分かれると思いますが、正直もっとリスクの少ない選択肢もあるでしょう(ポチェッティーノとか...)。それでも個人的にはテン・ハーグに魅力を感じます。ラングニック仕込みのゲーゲンプレスとテン・ハーグのポゼッションの融合は、その響きだけでペップにもクロップにも、トゥヘルにも勝てる気がするからです(笑)。テン・ハーグ/ユナイテッドは「できるかできないか」ではなくて、単純に「見たい」です。

ただ、就任後すぐにというわけにはいかないでしょう。恐らく長い時間が掛かりますが、それでも腹をくくってテン・ハーグに任せるのか...。それはクラブだけでなく、ファン、サポーターの忍耐も試されることになります。

と、ここまで書いて新監督がテン・ハーグでない可能性も充分にあります...。そうなったらこの記事もあまり意味がなくなってしまいますね...(笑)。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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