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こんにちはMasaユナイテッドです。
21-22プレミアリーグ第32節 アウェイ、グディソン・パークでエバートンと対戦したユナイテッド。試合は開始からユナイテッドがチャンスを作ります。9分、12分とラッシュフォードがゴールに迫りますがジョーダン・ピックフォードが対応します。すると27分にアントニー・ゴードンのシュートがマグワイアに当たってディフレクト。ゴールに吸い込まれ先制を許します。36分にもリシャルリソンのシュートがディフレクトしゴールへ向かいますが、なんとかデ・ヘアがかき出します。39分にはフレッジが負傷しポグバと交代するアクシデントが発生。なかなかゴールへ迫れないユナイテッドは64分にマタとエランガを投入しますが決定的なチャンスを作ることができません。アディショナルタイムにはロナウドの惜しいシュートがありましたが決まらず。試合は1-0でホームのエバートンが勝ち点3を獲得しています。
*試合のハイライトはこちら
今回はエバートン戦で見られたユナイテッドの両サイドの機能不全について取り上げます。左右のクオリティの違いやサイドバックとウィンガーの関係などを考察し、改善方法や来シーズンの取り組みへ繋げたいと思います!
以下項目です。
👿ラインナップ

①左右のアンバランス
前節レスター戦同様不甲斐ないパフォーマンスとなったユナイテッド。エバートン戦は、正直何がしたいのかよくわからない試合内容でしたが(笑)、1つだけ顕著に現れていた現象がありました。この試合のユナイテッドは実に52.8%が左サイドから攻撃で、右サイドはわずかに26%でした。これまでもユナイテッドは左過多の傾向があり、めずらしい事ではないのですが、エバートンも左過多だった事もあり(右サイドが押し込まれた)少々極端な数字を示しています。
*前節の記事はこちら!

長年ユナイテッドは右サイドからの攻撃に課題があり、スールシャール政権下ではラッシュフォードをはじめ、マルシャル 、ポグバやリンガードなど左サイドでのプレーを得意とする選手が多い一方で、右サイドはマタ、ペレイラ、ダン・ジェームズなどを使いますが、攻撃面でインパクトを残した選手は不在でした。唯一、右サイドで機能していたのがグリーンウッドで、昨シーズン終盤の活躍から今シーズンは右サイドの攻撃も武器になると予想されていました。さらにドルトムントからサンチョを獲得。長年の課題に終止符が打たれるはずでした...。
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しかし、蓋を開ければ相変わらずの左偏重が続く事になります。新加入のサンチョは、肩の手術で不在となったラッシュフォードの穴を埋めるために左に回り、グリーンウッドもロナウド加入の影響やカバーニの離脱を埋める為にポジションが安定せず、パフォーマンスが上がりませんでした。スールシャールが解任されラングニック監督になり、当初はウィンガー不在のダブル10番システム(4-2-2-2)を試しますが上手く機能せず。その後、4-2-3-1と4-3-3のミックス型へ移行し、サンチョを左サイドで輝かせることには成功しますが、今度は左サイドから外されたラッシュフォードのパフォーマンスが著しく低下します。さらに追い討ちを掛けるようにグリーンウッドが事件を起こし登録抹消に…。エランガというヤングパワーは出現しますが、まだまだ充分な働きを披露しているとは言い難いでしょう。
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このように、ユナイテッドは攻撃面における左右のアンバランスを解消できていません。そして、ここ数試合それが顕著に出ており、エバートン戦は特に酷い状態でした。チームとして左サイドの崩しを狙っているならまだしも、無秩序に左に集まるという状況だったと思います。
②サイドバック問題
サイドの攻撃において、ウィンガーを支えるサイドバックの存在はとても大きなものです。エバートン戦では、足の怪我で離脱したショーに代わってテレス。右サイドはリシャルリソンを抑える為にダロトではなくワン=ビサカが先発起用されました。
エバートン戦最多の109回のボールタッチと13本のクロスを上げ、チャンスクリエイト2回、SCAは最多の5回を記録したテレス。数字が示す通りこの試合で最も攻撃に関与した選手でした。しかしながら、クロスの成功数は僅かに2回とプレーの質は高くなく、プレー選択もワンパターンで工夫が見られませんでした。ウィンガーの外をオーバーラップしてクロスを上げていましたが、深くえぐってからのクロスは効果が薄く、もっとアーリークロスを使ったり、クロスの高さを変えたり、マイナスのクロスを送ったり、インナーラップでギャップを作ったりといった工夫がほしいところです。百歩譲ってテレスのクロスを活かす作戦だったとしても、中に人がいないことには意味がないです...。ロナウドはいつにも増してサイドに流れることが多かった印象を受けます。
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ワン=ビサカは、リシャルリソンを抑えるというタスクを与えられていたため、攻撃面での貢献は二の次だったのは確かでしょう。そういう意味では、スタメンで唯一自分の役割を理解し、忠実にプレーした選手だと評価できます。その一方で、やはり攻撃面での貢献が物足りないというのも事実。シンプルな話ですが、高い位置を取ってくれないワン=ビサカの為に右ウィンガーがボールを受ける位置も低くなり、攻撃面で力を発揮できなくなっているところもあります。
今回のエバートン戦では、サンチョが右サイドで先発しましたが、サンチョがボールを受ける位置はハーフウェイライン付近と低く、ボックスへ侵入した時に脅威となれるサンチョにとっては、ゴールまでの距離が遠すぎるという状態でした。後半、サンチョは左に移ってからチャンスメイクの回数が増えたのは偶然ではないでしょう。
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サイドバックの中で最も攻撃センスがあるのはショーでしょう。オーバーラップ、インナーラップ、アンダーラップとランニングでウィンガーをサポートする動きはチーム一。ダロトも高い位置を取り、ハーフスペースのランニングを見せるなど攻撃に意識が向いてる時はまずまずですが、オーバーラップのタイミングやクロスの質は物足りないところがありますね。
このように、サイドバックに関しては選手個々のキャラクターが攻撃陣(ウィンガー)に与える影響が大きく、チームとしてのパフォーマンスを不安定にしている要因の一つとなっています。ラングニック体制になり、サイドバックが幅を取り、高い位置で攻撃に関与することが求められていたはずですが、気付けばその意識は希薄になり、いつの間にか個の判断頼みのプレー選択になっています。そして、ウィンガーはこの影響をモロに受けます。
③ウィング問題
3-1.ラッシュフォードの場合
エバートン戦の先発はラッシュフォードを右、サンチョを左と、これまでのラングニックでは見られなかった配置となりました。ラッシュフォードに配慮しての入れ替えだったのか、単純に右サイドの守備の為だったのかはわかりませんが、開始15分までの間に2本のシュートを放ったラッシュフォードにとっては、ここ最近ではほんの少しだけ存在感を示せたのではないでしょうか?
ラッシュフォードは明らかに右サイドでのプレーが合っていません。しかしながら、左でのプレーが最高のラッシュフォードを体現しているかと言われれば「Yes!!」とも言えないと思います。ラッシュフォードは、デビューシーズンとなった15-16にはセンターフォワードを中心に、セカンドトップや右ウィングでもプレーしています。本来ラッシュフォードはスタートポジションがどこであっても、最終的にゴールを奪う能力を持った逸材としてトップチームに現れました。ラッシュフォードは決してウィンガーではなく、あくまでもストライカーの気質を持った選手だと思います。
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しかし、ある時点でラッシュフォードは進化の方向性を間違った...。彼はゴール前でのポジショニングやヘディングを練習する代わりにナツメグに喜びを見出し、相手ディフェンダーをスピードでブチ抜くことこそが最高のラッシュフォードを見せられると勘違いしました。スールシャール監督は、ラッシュフォードにフィニッシュの改善に取り組むようにアドバイスする一方で、ラッシュフォードをカウンターの重要な起点としてサイドに置き、そのアスリート能力を如何なく発揮する事を要求しました。
その結果ラッシュフォードはスピードに特化したウィンガーのようになってしまいますが、本来であればラッシュフォードは、リバプールのサディオ・マネのような選手になるべきだったのだと思います。サイドにいながらボックス内に入り込みフィニッシュを決める...。この動きを習得すべきだったのではないでしょうか。左にいる時の方がカットインからシュートが狙いやすいので動きが良く見えます。しかし、今のユナイテッドにはラッシュフォードが余裕を持ってシュートできるだけのスペースを作ってくれるチームメイトがいませんし(例えばルーニーのような)、ラッシュフォード自身もフィニッシュまでの動きを磨いてこなかった為に動きがワンパターンで相手からすれば予想できてしまっています。さらにローブロックを敷くチームとの対戦ではスピードを活かせるスペースがないので、当然ながら消えてしましまいます。
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ラッシュフォードはこのままではどちらのサイドにいても輝かないでしょう。自身のプレーを見直して、マネなようなプレーヤーになるべく舵を切るか、それともサポート意識の高いフォワードと2トップを組むかのどちらかしかないと思います。ラッシュフォードに関しては、ファン・ハール、モウリーニョ、スールシャールと一貫性のない指導の犠牲者だという側面もあるでしょう。しかし、忘れてならないのは本人さえその気ならば、個人コーチを付けてチーム練習後に改善に取り組む事もできるということです。ロナウドがかつて誰よりも残って練習したように、ブルーノやマルシャル 、フレッジがマタと共にフリーキックの練習を残ってやったように...。ラッシュフォードにその意志があるかという事も問われている気がします(慈善活動とのバランス)。
3-2.サンチョの場合
そして、右ウィンガーとして期待されての入団だったはずのサンチョ。ユナイテッドは19-20シーズンの後にサンチョを獲得すべく動いていました。その19-20シーズン、ブンデスで17ゴール17アシストを記録したサンチョは50%をトップ下(3-4-2-1の攻撃的MF)、29%を右ウィング、12%を左ウィングでプレーしています。右ウィング兼ブルーノを欠いた時のバックアッパーとしてユナイテッドが欲したのがサンチョでした。しかし、この年は獲得に至らず。代わりにファン・デ・ベークを迎え入れます。1年後にサンチョはユナイテッドへ加入しますが、20-21シーズンのサンチョは15%がトップ下、33%が右ウィング、そして39%が左ウィングでのプレーに変わっていました。
サンチョのドルトムント時代のプレーは極端に表すと、左サイドの時はスコアラーであり、右サイドの時はチャンスメイカーと言えます。20-21シーズン、サンチョはヨーロッパでプレーする23歳以下の選手の中でもっとも優れたチャンスメイカーの1人であり、ユナイテッドの右サイドを活性化する事を期待されていました。
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しかし、現状サンチョは多くの試合で左ウィングとしてプレーしています。ラッシュフォードの不調や、マルシャルのローン移籍などのチーム事情もありますが、右よりも左でのプレーの方が輝いていることは誰の目にも明らかでしょう。ドルトムントで出来ていたことがなぜできなくなっているのか...。もちろんスペースの有無やスピード、インテンシティもブンデスとプレミアでは違うということもありますが、個人的にはサイドバックとの関係が大きく影響しているのではないかと思います。
19-20シーズン大車輪の活躍を見せたサンチョは、アクラフ・ハキミやウカシュ・ピスチェク、ラファエル・ゲレーロといったオーバーラップに長けたサイドバックと共にプレーしました。20-21シーズンのスタート時には、ハキミが去りトーマス・ムニエが加入しますが、サポートが十分でなくサンチョは序盤戦調子を崩します。それもあってか中盤戦から左ウィングへ移り、ゲレーロに後方を支えられるとサンチョは躍動し始めました。
この事はユナイテッドでも同じです。ユナイテッドのサイドバックの中で最もサポートのランニングに長けているのはショーでしょう。そしてもっとも劣っているのがワン=ビサカです。テレスとダロトも悪くはないですが、ウィンガーの欲しいタイミングで上がってくることはそう多くありません。サンチョは自分がボールを持った時に、背後から走り込む味方の動きを鋭く捉えてそれを利用します。時には自らカットインし、時にはリーズ戦のフレッジへのアシストのようにパスを出します。これがサンチョが最も得意とするプレーであり、相手に脅威を与えるプレーです。
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そして、サンチョがボールを受ける位置も重要です。エヴァートン戦では右サイドの時にボールを受ける位置が低すぎました。これはワン=ビサカのポジションが低すぎる為ですが、ゴールまで遠い上にサポートもない状態ではいくらサンチョといえども局面を打開するのは困難です。試合を見て分かるようにサンチョが脅威となるのはボックス内に侵入した時です。できるだけその近くでサンチョがボールを受けられる環境が望ましいのは明らかでしょう。そして、その環境を提供できるのは左サイドであり、もっと言えばショーが後ろにいる時に最もプレーしやすいはずです。
このように、ウィンガーも各々問題を抱えています。プレーの方向性を見失った感のあるラッシュフォードとサイドバックの質とキャラクターの影響を受けるサンチョ。どちらの選手も一流のクオリティを持っていますが、現状は活かしきれていません。その背景には指導が十分でないという事ももちろんあります。
👿まとめ
エバートン戦で見せた極端な左偏重は結果的に効果を発揮しませんでした。どちらかのサイドをストロングポイントとすること自体は多くのチームが行っており、悪い事ではありませんが、ユナイテッドのそれは組織的動きや狙いに欠け、ただ闇雲に左から攻めている印象です。今回見てきたように、サイドの抱える問題はサイドバックの質やウィンガーの個人的な課題が大きく関係しています。しかし、適切な指導があればある程度は改善が可能だとも思います。根本的にユナイテッドは、周囲の選手に対するサポート意識が薄すぎます。味方を助けるポジショニングやマーカーを引っ張ってスペースを作る動きなどがほとんどないというのは大きな課題でしょう。
来シーズン新監督のもと、新たなチームとして生まれ変わる必要があります。当然ながら補強も重要になります。現状プライオリティの高いのはアンカーとストライカーだというのは間違いありません。しかし、今回のサイド問題からは右ウィングと右サイドバックも補強の必要性があるかもしれないということを示唆しています。
現在、右ウィングはアヤックスのブラジル人、アントニーの名前も挙がっています。アヤックスで素晴らしい活躍を見せるレフティは右ウィングでその才能を発揮しています。彼を獲得するというのも一つの解決策かもしれませんが、注意しなければならないのは、アントニーもまた右サイドバックのマズラウィの質の高いランニングの恩恵を受けているということです。つまり、いくらクオリティの高い選手を連れてくることができても、現状のユナイテッドの右サイドバックでは不発に終わる可能性があるという事です。そういった意味でも、新指揮官が現在のユナイテッドの選手の動きをどこまで改善できるかも重要になります。
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エバートン戦のよくわからない戦い方は、チーム状態がかなり良くないことの現れだと思います。それぞれの選手が何をすべきかわかっておらず、とにかく近場の選手にボールを預けるだけで攻撃の形は見えませんでした。「左サイドは頑張った!」と見ることもできるかもしれませんが、個人的には逆にユナイテッドの抱えるサイドの問題が浮き彫りになったと感じました。

21-22PL32 エバートンvsユナイテッド スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

21-22PL32 試合結果 出典:ユナイテッド公式
この試合の結果、ユナイテッドは7位のままですが、4位スパーズとは6ポイント差に広がっています。
次節はオールド・トラッフォードでのノリッジ・シティ戦。4月16日(土)23:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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