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こんにちはMasaユナイテッド
21-22プレミアリーグ第33節 ホームでノリッジ・シティと対戦したユナイテッド。試合は7分にハイプレスからエランガがボールを奪いゴール前のロナウドへパス。これをロナウドが沈めて先制に成功します。ポグバをアンカー起用し攻撃に多くの人数を割いたユナイテッドは、32分にもコーナーキックから再びロナウドがヘディングを決めて2点目。最下位ノリッジ相手に優位に試合を進めます。しかし、前掛かりなチームはカウンターを浴びるシーンが多く、中盤の空洞化が顕著に...。前半アディショナルタイムにドゥウェルに決められ1点返されます。さらに52分にはプッキにもゴールを割られ同点に追いつかれます。63分、ユナイテッドは攻守のバランスを戻すためにマティッチを投入。74分にはマタとラッシュフォードを投入し勝ち越しを狙います。すると76分エランガが倒されゴール正面のフリーキックを獲得。これをロナウドが矢のように突き刺しハットトリック達成!最下位相手に苦戦を強いられましたが、3-2でユナイテッドが勝利。勝ち点3を獲得しました。
*試合のハイライトはこちら
今回はこの試合から、「ロナウドの活躍と貧弱な組織力」というテーマでコラムを書きます。エースの大活躍の裏に見えるユナイテッドの組織力を紐解きます。
以下項目です。
👿ラインナップ

①圧巻のロナウド
29節スパーズ戦に続く今シーズン2回目のハットトリック。クラブキャリア通算50回目のハットトリック(代表も合わせると60回目!)という脅威の記録を達成したロナウド。開始7分でエランガのボール奪取からパスを貰い1点目を決めると、32分にはコーナーキックをヘディングで合わせて2点目。ノリッジに同点に追いつかれ劣勢のなか、76分には素晴らし過ぎる直接フリーキックを決めて3点目!文句のつけようのない大活躍でチームを勝利に導きました。
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フラストレーションの溜まる前節エバートン戦と、試合後に発生したスマホはたき落とし事件により、ロナウドかボールを持つとブーイングか起こる状態でしたが、逆境でこそピッチ上で結果を出すのは流石の一言。入場前にはチームメイト全員に声をかけ、試合中も味方の繋がらなかったパスに対しても「サムアップ」でメッセージを送るなど、ノリッジ戦のロナウドは気合、集中力、責任感共に充実した状態だったことが伺えます。加えて、開始7分で得点できたことでどんどん調子が出てきた側面もあったでしょう。このような状態になったロナウドは手が付けられませんね(笑)。
最多の8本のシュートを放ったロナウド。ブルーノ、リンガードのダブル8番とサンチョ、エランガの両ウィング、そして両サイドバックを攻撃に全振りした布陣で、ロナウドの近くで多くの選手がプレーできたことが大きかったのでしょう。「ゴールを奪う」という仕事に集中できたことが、ロナウドが快適にプレーできたことに繋がりました。12年ぶりにユナイテッドに戻ったロナウドは、当時のままのようなわがままで子供っぽい態度と、今回のような成熟したフットボーラーの側面を併せ持っています。それこそが、37歳になっても第一線で活躍できる秘訣であり、ロナウドの魅力の一部でしょう。チームメイトにとっても時には「厄介」であると同時に「頼もしい」存在ですね。
なお、少し余談ですがこの試合で初めてトップチームのベンチに入った17歳のウィンガー、アレハンドロ・ガルナチョは子供のころからロナウドをアイドルとして育った選手です。目の前で憧れの先輩のハットトリックを見られ、試合後にはマッチボールを渡されたことは忘れられない記憶として残るでしょう。そしていつの日か、ロナウドのような活躍を見せてくれることを期待しています。
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*ガルナチョに関してはこちらの記事を参照!

②ロナウド頼みから見えるもの
ロナウドのハットトリックによる勝利は、結果が重要なCL出場権争いにおいてとても大きかったのは間違いありません。4位争いを繰り広げるスパーズとアーセナルが同時に黒星を喫したことでなおさらです。しかしながら、個人的には手放しで喜べなかったところがあります。最下位ノリッジ相手に苦戦したということもそうですが、やはり組織としての欠陥が浮き彫りになった試合という印象...。
攻撃に関しては、人数を割き敵陣でのプレー時間が多かったですが、前回の記事で指摘した様にサイドバックの攻撃はクオリティとアイデアに掛け、ポジションチェンジを繰り返す2列目は良く言えば「流動的」ですが、悪く言えば「無秩序」という状態で不用意にボールを失うシーンも多かったです。ロナウド以外の前線の選手は、シュートチャンスがありながらなかなか決めきることができず、相変わらずの貧打傾向は変わっていません。
*前回の記事はこちら

加えて攻守のバランスは酷い状態で、開始3分でカウンターからノリッジに決定機を作られましたが、ポグバを1アンカーに置くシステムは全く機能しませんでした。2人のCBはよく対応していましたし、リンデロフは危ないシーンを何度か救っています。しかしながら怖くてラインを上げる事ができず、中盤の空洞化に拍車を掛けました。そもそもは、あれだけ前線に人数を掛けるなら、ネガトラの局面で高い位置で止めることが絶対条件のはずです。しかしその意識は薄く、ポグバも攻撃寄りにポジションを取っている為にあっさりカウンターを許していました。
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もう何度指摘しているかわかりませんが、組織としての意思統一はほとんど見られませんし、こんなにメチャクチャな状態でプレーしているチームはプレミア全チームを見てもないのではないでしょうか。得点するには手が掛かり過ぎている割に、失点はあっさり喫していますし、ノリッジに決定力があれば確実に負けています。ノリッジはビッグチャンス3回、ゴール期待値xGはユナイテッドの1.67を上回る1.80でした。
この試合で守備面の責任を押し付けられ、ユナイテッドサポーターからブーイングを浴びたポグバと、大車輪の活躍を見せたロナウド。両極端の個人評価ですが、その根本原因はまぎれもなくチーム全体にあります。ロナウドは「救世主」の役割を担い、ポグバは「生贄」の役を押し付けられたにすぎません。ロナウド頼みのチームに見えるのは「貧弱な組織」としての姿です。
③ラングニックの責任は?
ノリッジ戦では中盤の要であるフレッジとマクトミネイという2人のハードワーカーを欠いて試合に臨みました。そのようなチーム事情でラングニック監督が敷いたシステムは、ポグバアンカーの4-3-3であり、インサイドハーフにリンガードを起用するというものでした。無難にマティッチとポグバのダブルボランチという選択肢もありましたが相手は最下位ということと、ミッドウィークにリバプール戦を控えマティッチを温存したいという思惑もあったと推測できますが、スタメン発表で多くの方が感じた不安は見事的中する事になります。
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攻守のバランスは崩壊、カウンターを浴びまくる...。この状況をラングニック監督は事前にシミュレーションできていなかったのでしょうか?ポグバという守備面で不安のある選手をアンカーに置くというからには、大前提として「ボール保持」があるはずです。少なくとも70%以上の保持率でほとんどを敵陣でプレーし、ハイラインで縦のコンパクトさを維持。ボールを失ったら人数がいる高い位置で素早くボールを奪還することが必要です。これができるならばポグバの1アンカーシステムも機能したでしょう。
しかし、前項で見た通りチームを機能させるための必要条件は何1つ達成できていませんでした。開始3分でカウンターを喰らっていますが、リンガードもブルーノも少し下がり気味でバランスを気にする素振りもありませんでした。バックライン(特に2CB)はハイラインを意識しているようにも見えませんでした。ネガトラを重要視しているようにも見えませんでした。この試合のシステムと選手の動きはチグハグでした...。なぜこのような事が起こるのでしょう?
その要因はやはりラングニック監督にもあると言わざるをえません。ポグバのアンカーシステムが機能しない事は、少なくとも前半のうちにハッキリしていましたし、前半終了間際に失点。後半に入っても修正しないまま52分に同点に追いつかれています。にも関わらず何の手立ても講じないまま62分になってようやくマティッチが投入されます。ラングニック監督の思い描いた「理論上の勝つための方法」はピッチ上で再現されることはありませんでした。そしてこれは、ラングニック監督になってから多くの試合で出現している現象といえます。
上記したこのシステムを機能させるために重要となる項目を、ラングニック監督は一体どこまで試合前に選手に説明できているのか...。どれだけ時間をとって戦術トレーニングをしているのか...。リスクマネジメントはどう設定していたのか...。こういったところに大きな疑問符があります。一部の報道通りラングニック監督と選手間に溝があるとしても言い訳にはなりませんし、仮にそうならこんなに大胆な戦術を使わないでしょう。個人的に気になっているのは、選手の個性を引き出し戦おうとしたスールシャール前監督に対して、ラングニック監督は選手の弱点をさらけ出す状況に陥っているという事です。マグワイアが、ラッシュフォードが、そして時にはポグバやロナウドといった一流選手達が、批判に晒されるようなパフォーマンスを頻繁に見せてしまうというのは、やはり監督にも責任の一端はあるはずです。
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何も「ラングニックが無能だ」と言いたいわけではありません。それだけ難しい状態のチームをシーズン途中で引き受けたということです。そして敢えて言うなら、ラングニック監督のやり方は、今のユナイテッドというグループに合っていないという事です。ラングニック監督は就任当初、守備の改善に取り組むと宣言しました。前からプレスを掛け、素早く攻めるチームにすると...。そして4ヶ月半経った結果が最下位ノリッジに辛勝するチームになっているという事実が全てを物語っています。
④来シーズンへ
しかしこういった状況を変えるために、今シーズン残り試合を来シーズンに向けて取り組む必要があります。幸か不幸かラングニックが来シーズンもチームを率いることはありませんし、現時点で新監督もだいたい決まっています。ノリッジ戦の前日にはマティッチが今シーズン限りでの退団を発表しました。ポグバ、リンガード、マタ、カバーニも退団の可能性が大。マルシャル、バイリーなどの出場機会に不満のある選手も複数人がいなくなるでしょう。今シーズンでユナイテッドは古い章を閉じることになります。多くのサポーターが現状を嘆いているでしょう。古き良きユナイテッドを想い出し、あの頃に戻りたいと思うファンもいるでしょう。現在のメンバーに愛着が強い人もたくさんいると思います。
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しかし、ユナイテッドは来シーズン腹を括って変わる必要があります。仮に原型がないほど今の選手がいなくなっても、戦術ガチガチのチームになっても、新監督の元確固たる意志で変わる必要があります。
何も捨てることができない人には何も変えることはできないだろう
何かを変えることのできる人間がいるとすれば その人はきっと...大事なものを捨てることができる人だ
By:アルミン・アルレルト
某有名人の名言ですが、真理を突いていると思います(笑)。ユナイテッドも来シーズン変化を起こし、チーム力を上げる必要があります。そして、必ずできると信じています。
👿まとめ
故障者を複数抱え、ポグバのアンカー起用という奇策を用いたラングニック監督ですが、エースロナウドの活躍がなければ最下位ノリッジ相手に不覚もあり得た内容でした。前節エバートン戦のような無気力感はなく、選手たちは勝利の為に力を出そうとしたのは伝わりました。久々に先発起用されたリンガードも、ファイナルサードでハブとして振る舞い、最多の4本のキーパスと7回のSCAを記録。マティッチ投入の為に63分で交代となりますが、もうユナイテッドでの残り出場回数が多くないであろうリンガードのパフォーマンスは良かったと思います。エランガも3本のキーパスを通し最多の4回のGCAをマーク。先制のきっかけとなったプレスと、74分からは右サイドバックもこなしました。
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デ・ヘアは今回も56分のラシカの決定的なシュートをセーブ。チームを救いました。左右を入替えたマグワイアとリンデロフも気合は伝わりましたし、リンデロフはフィルターが掛からないチームにイライラしながらも危ないシーンを抑える活躍を披露しました。このように個々を見ればそこまで悪い出来ではなかった選手が多く、結果も得たこともあり、そこまで悲観することはないかもしれません。
しかし、個人的には述べてきたように組織力という面でかなりレベルが低いと感じました。批判を浴びたポグバは、通常とは違う役割を押し付けられ少々酷でしたし、ロナウドの大活躍も、彼に頼り切りな状況が逆に組織的な欠陥を浮き彫りに...という印象に。デ・ヘアやラングニック監督も試合後のインタビューでは「手放しでは喜べない」的なコメントでしたが、その通りだと思います。残り6試合、リバプール、アーセナル、チェルシーと強豪チームとの対戦が残っており、4位に入るのは難しい状況ですが、来期に向けて少しでも改善できるのか、それとも「不甲斐ないシーズン」と刻印して終わるのかはユナイテッド次第です。

21-22PL33 ユナイテッドvsノリッジ スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

21-22PL33 試合結果 出典:ユナイテッド公式
この試合の結果、ユナイテッドは5位浮上。4位スパーズとは3ポイント差となっています。
次節はアンフィールドでのリバプール戦。4月20日(水)4:00キックオフ。前回0-5の雪辱を晴らせ!カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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