【21-22PL第30節】リバプールvsマンチェスター・ユナイテッド ~ライバルと呼べる日まで~【コラム】

[http://Embed from Getty Images:embed:cite]

こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22プレミアリーグ第30節(延期分) アウェイ、アンフィールドでリバプールと対戦したユナイテッド。試合は5バックで臨んだユナイテッドでしたが、開始5分でサラーのクロスからディアスに決められ失点。さらに10分にはポグバが足を負傷し、リンガードと交代するアクシデントも発生します。さらに22分には素晴らしいマネのパスに抜け出したサラーが決めて2点目。ユナイテッドはさらに苦しくなります。後半開始と共にジョーンズを下げ、サンチョを投入。システムをいつもの4-2-3-1に戻したユナイテッドはハイプレスとサンチョの仕掛けからリズムを掴むかに思われました。しかし68分に今度はマネに決められ3失点。ユナイテッドは84分に闘争心溢れるハンニバルを投入しますが、直後に再びサラーに決められ4点目。ユナイテッドはライバル、リバプール相手になす術なく4-0で敗れました。

*この試合のハイライトはこちら

www.manutd.com

今回はこの試合のレビューをコラム形式で。ラングニック監督の采配と選手のメンタリティ、そしてリバプールとの関係について書きます!

以下項目です。

👿ラインナップ

21-22PL30 リバプールvsユナイテッド ラインナップ

①ラングニックの失策

今シーズン、リバプールにシーズンダブルを喰らった形となったユナイテッド。スールシャール末期の第9節、ホームで0-5の敗戦。そして今回アウェイでも4-0となす術なく敗れました。昨シーズンのユナイテッドは、FAカップで見事なカウンター攻撃でリバプールを撃破し、リーグ戦でも1分け1敗とまだ許容できる戦いを演じています。さらにロナウド、サンチョ、ヴァランが加入し単純な「戦力」という点では今シーズンの方が勝っているはず...。今シーズンのホームでの試合は、スールシャール政権が事実上崩壊している時なのでまだわかりますが、戦術家のラングニックを暫定監督に招聘し、CL出場権獲得を目指すチームが、結果的にスールシャール末期と同等の醜態を晒したというのは一体どういうことなのでしょうか?

リバプール戦のラングニックの采配には少し疑問があります。まずはシステムです。5-2-2-1(3-4-2-1)という重心の低いフォーメーションを採用したユナイテッド。個人的には3バックももちろん考えましたが、シティやリバプール相手に組織化されていない3バックは意味をなさないと思っていました。まさにスールシャールがシティに最後に敗れた第11節と同じです。相手の強力なサイドのプレーヤーに対するケアが5バックでは不十分になります。開始5分であっさり失点しましたが、リバプールは右サイドから進行し、マネに斜めのパスを入れて再度サイドに展開しクロスから仕留めています。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

リバプールの1点目は自陣からの繋ぎでしたが、ユナイテッドの中途半端なハイプレス(とも呼べないですが)を簡単に剥がされて右サイド(ユナイテッドの左)のアレクサンダー=アーノルドとサラー、ヘンダーソンの三角形を利用し、降りてくるマネに楔を入れるというこの試合で再三使われる形でした。ユナイテッドの5-2-2-1では、DAZN解説の戸田さんがご指摘されていたようにマティッチとエランガの間に大きなギャップができます。ここにマネやヘンダーソン、時にはチアゴが入り込むことはかなり効果的で、試合開始わずか2、3分でシステム上の欠陥を見抜いていた(スタメン発表の段階でシミレーションした可能性も)クロップ、もしくはリバプールの選手の戦術脳の高さにはただただ脱帽です。

しかし、元をただせば付け焼刃的なシステムで臨んだラングニックの失策だと言えます。このシステムの発想はとても貧弱で、そのことはわずか10分しかプレーしなかったポグバが、全く誰を見て良いのか把握できていなかったことによく現れていました。ハイプレスを構える姿勢は見せますが、試合を重ねるごとにその中途半端さを増すプレスは恥ずかしささえ覚えます。ラングニックの代名詞がこのような出来栄えになっているというところに、絶望を通り越して呆れる感覚です...。そして業を煮やしてアリソンまでプレスに出ていくブルーノ。しかし後ろは連動しないので、ただただファビーニョやチアゴがフリーになるというお粗末さ...。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

2得点後の23分頃に、リバプールはユナイテッドへハイプレスを仕掛けます。良かったらそのシーンをもう一度見て欲しいのですが、これが「プレス(圧)」であり、ユナイテッドがやるべき組織的なプレッシングです。もちろん、訓練している年月が違いますが、リバプールは冬に加入したルイス・ディアスも何の問題もなくプレスに参加しています。選手だけの問題だけでなく、ラングニックのトレーニング方法、コーチングにも問題はあると感じます。ご存じのようにクロップは、ラングニックのゲーゲンプレスを進化させた人物です。本来であればラングニックが元祖なのですが、リバプール戦ではその面影はもはやありませんでした。

ラングニックは武器を持たずにリバプールに立ち向かいました。昨シーズンのFAカップでは「カウンター」という武器がユナイテッドにはありました。戦術の落とし込みが上手くいかなかった時点でラングニックは詰んでいた可能性も…。いわゆる「ラングニックスタイル」しか引き出しの中には入っていなかった為です。柔軟性に欠けるラングニックの監督としての限界をハッキリ露呈した試合ともなってしまいましたね...。

②選手たちの心理状態

試合後のロイ・キーンのコメントが一部で話題になっていました。

「シーズン序盤は怒りに満ちていたが、今は悲しい。今日のチームを見ると、心も魂もリーダーもなく、真のクオリティに欠けている。もう私がいたクラブではないよ。自分がプレーしていた頃のユナイテッドがどうであったかを反映していない。ロブソン、ブルースパリスター、ベッカム、ギグス、バット…。みんな素晴らしい仲間たちだった。我々は毎週勝てたわけではないが、試合前に周りを見渡すと、誰もが『このクラブのために全てを捧げよう』と思うだろう。今のチームには好感も持てないし、魂も感じられない。選手にとってインタビューに答えるのが難しいのはわかるが、とてもロボット的で、感情がない。こんなに多くの選手がユナイテッドを去りたいだなんて聞いたことはないよ。私がプレーしていた頃は、売られるかもしれない、出されるかもしれないと恐れていたものだ。今は、誰もがそのドアから出ていきたがっている」

www.football-zone.net

このコメントには多くの方が共感したと思います。私も長年ユナイテッドを見ている身からするとよくわかりますし、キーンに同意です。その一方で、やはりこの考え自体が時代と合っていない部分もあるのかなぁと思います。キーンが活躍した時代とは違い、現在のフットボールはビジネス面での影響がとてつもなく大きいです。選手の移籍には大金が動き、放映権はとてつもない金額で取引されます。選手は単なる「サッカー選手」の枠にとどまらず、その市場への影響力はタレント並みかそれ以上です。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

自分が快適でない環境にいつまでも留まって、時間を無駄にする選手は少なくなっています。少し活躍すればメディアに大々的に取り上げられ、敏腕代理人を雇えば自分にとって良い条件のクラブへ移籍できる時代に、「1つのクラブの為に全てを捧げる」という気持ちは抱きにくくなっていると思います。そんな時代だからこそ、ブルーノのようにクラブに対する情熱を示してくれる選手や、アカデミー選手がより一層愛され大事にされるという面もあるのですが、必然的に良い選手は強くて魅力的なチームへ行く傾向は強くなっていくことになります。そして、この事はもはや責められることでもないと思います。つまりは、それだけ魅力あるクラブ作りに失敗した側に責任があり、出ていきたがる選手がいるのは仕方ない部分もあるということです。

とはいえ、ユナイテッドのユニフォームを着てプレーするからにはプライドを持つべきだというのは間違いないです。リバプール戦に臨んだユナイテッドの選手たちが、この試合の意義をどこまで理解していたのかはわかりませんが、少なくとも心のどこかで「リバプールの方が強い。我々より良いチームだ」と感じていたはずです。そして、普段の自分たちのバラバラ感や甘ったれた考えを思い返して情けなくなったでしょう。そう試合前に思ってももう手遅れです。ただ、注目の一戦だからというだけで、これまでできなかったことが急にできるようになるはずもありません

この時点で、いくら表面的にはユナイテッドの為にと思っていても、ハートもスピリットもピッチ上で見せられるわけありません。基本的な戦い方すらわからないのにメンタリティだけ発揮する事は不可能です。ひと昔前なら「激しく当たる」ことや「ラフプレーで相手を潰す」こともできたかもしれませんが、それを許す時代ではなくなってきていますし(後からSNS上で血祭りに上げられる)、そもそもそれすらできない程の圧倒的なレベル差があったと思います。

もはや気持ちや魂でなんとかなる段階は過ぎており、指導力、戦術、能力、組織力、クラブのビジョン、すべてが失敗したための現状です。ハンニバルのヘンダーソンやケイタに対するラフプレーやブルーノのアレクサンダー=アーノルドへの故意のファールは、ユナイテッドの魂を感じさせたともいえますが、個人的にはそのやり方は「弱者」の戦い方だと思います。やはり、これからのユナイテッドにはプレーの質で強豪クラブと互角に戦えるレベルになってほしいと切に願います。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

③ライバルと呼べる日まで

最近思うのですが、選手のパフォーマンスに対して「○○は良かった!」とか「○○は酷かった...」とか言える試合というのはまだマシなんだなぁと...。リバプール戦を見て、批判したくなるシーンや、逆によく頑張ったと言いたくなる選手もいましたが(サ…サンチョ…小声)、終わってみればそういった個人の評価に何の意味も見いだせない自分がいました。「ロナウドがいれば...」とか、「フレッジやマクトミネイのハードワークがあれば...」とかも思う瞬間はあったのですが、リバプールのレベルの高さにそういう問題ではないことを思い知らされました。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

普段ユナイテッドを追っていない人からすれば、「伝統のライバル対決」というキャッチコピーは飛びつきやすく、メディアや配信会社からすれば良い宣伝文句になります。しかし、その「ライバル」という冠は一時返上したほうが良さそうです。今回のリバプール戦を見て、「ライバル対決」だと感じた人はかなり少ないでしょう。リバプールの判断の早さ、的確さ、修正力の高さに良いようにプレーされ、ボールを追うのにいっぱいいっぱいだったユナイテッド。大人と子供程の差がありました。ファーガソン退任から9年。クロップ就任から6年半という年月の間でその実力は逆転し、ここまで差ができたというのが現実です。以前の記事でも何度か書いていますが、まずはこの現実を受け入れる事から始めましょう。そして、プライドや古くて役に立たなくなった価値観は捨てて、過去の栄光ではなく未来を見る事にしか救いはないと思います。

4月21日、ついにエリック・テン・ハフのユナイテッド就任が発表されました。来シーズンから2025年6月までの3年契約(1年の延長オプション付き)です。

[http://


:title]

*テン・ハフ監督の記事はこちら!

【22-23ユナイテッド新監督候補】テン・ハーグ/アヤックスの戦術分析 Part.1 ~ビルドアップ&崩し~
22-23シーズンの新指揮官候補 エリック・テン・ハーグ監督の戦術分析Part.1!ビルドアップと崩しに付いて分析しました!

「マンチェスター・ユナイテッドの監督に任命されたことは大変光栄なことであり、これからの挑戦に大きな興奮を覚えています。この偉大なクラブの歴史とファンの情熱を知り、彼らにふさわしい成功をもたらすことができるチームを育てたいと強く思っています。」
引用元:ユナイテッド公式

というテン・ハフの力強いコメントは希望を抱かせてくれます。ユナイテッドは来たるべき来シーズンからの大改革に向けてこれから準備を進めていくことになります。何度も言いますが、だからと言ってすぐに栄冠を勝ち取れるほど甘くはありません。3年目いっぱい使うかもしれませんし、3年では足りないかもしれません。それでも希望を失わずに見届けます。リバプールを再び「ライバル」と呼べる日まで...。

👿まとめ

現実を突きつけられたリバプール戦。ラングニックの采配の失敗や、選手たちの心理面の影響ももちろんありました。後半システムを4-2-3-1に変更してからしばらくは、プレスもある程度かかるようになり、63分には投入されたサンチョがチャンスメイクし、ラッシュフォードが惜しいシュートを放つ場面もありました。結局オフサイドの判定でしたが、これが決まっていればVAR判定でオンサイドになった可能性はありましたし、そうなれば流れは少し変わったかもしれません。如何ともしがたい実力差はありますが、唯一悔やまれるのは最初から普段のシステムで戦ってほしかったということです。

[http://Embed from Getty Images


:embed:cite]

それでも結果が変わったとは思えませんが、いくらか戦えた気がします。リバプール戦、ラングニックは監督としての限界を示し、就任当初皆んなが思い描いていたような進歩はほとんど見せられていませんが、皮肉なことにその結果全ての問題を明るみに出し、もう根本的に変わるしか道は残っていないというところまで追い込んだという点では評価できます(笑…えない)。試合前に「6~7人、多ければ10人ほどの入れ替え」があるというコメントも、もしかしたら選手の闘争心に火を着けるためだったのかもしれませんが、見事に上手くいきませんでしたね…。

選手マネジメントという点では結果を出せていないラングニックが、来シーズンからアドバイザーとしてどのようにテン・ハフやクラブと連携していくのか興味深いところですが、本来自身が得意とする分野でユナイテッドを助けてくれることを期待しましょう。そして、来シーズンの話をする前に、まだ終わっていない今シーズンをしっかり終わらせてほしいですね。4位になってもならなくても、最後ぐらい「あがき」を見せて欲しいです。今シーズンで退団を決意している選手も、クラブの為に頑張れないのであれば、これまでサポートしてきたファンのためにプレーしてほしいと思います。この辛い時期を支えるファン、サポーターにはそれぐらい見せてもらう資格が充分にあるはずです。

21-22PL30 リバプールvsユナイテッド スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

21-22PL30 試合結果 出典:ユナイテッド公式

この試合の結果ユナイテッドは6位。4位スパーズとは3ポイント差となっています。

次節はエミレーツ・スタジアムでのアーセナル戦。4月23日(土)20:30キックオフ!アーセナルにシーズンダブルなるか!?カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

  1. kaiaskun より:

    負けた後の選手の入れ替え発言といい、この監督の為に選手がやる気を出せたのかは疑問です。
    ドライな発言はチームと距離を置くディレクター向きだと思っておきますが、プレスの落とし込みすら指導出来ないのは戦術家とは言えないでしょう。監督が真っ先に勝負を投げ出してる印象です。
    テン・ハーグ監督と志向するフットボールの方向性は違うと思いますし、お互い揉めて途中で投げ出さないことを祈るばかりです。
    ユナイテッドにポゼッション出来るかなぁ。
    リバポに大敗したので、Masaさんのテン・ハーグ評を見返してる日々ですw
    今回は書き辛い記事を有難うございました。少し気分が晴れました。

  2. masachesterutd より:

    Re.kaiaskunさん
    コメントありがとうございます!ラングニック監督の評価は低くなってしまいましたね...。ただ、本人もアドバイザー的な仕事のほうがやりやすいと思うので、テン・ハフをサポートしながら強い組織にしてくれると信じてます。

タイトルとURLをコピーしました