【21-22PL第31節】レスター・シティ戦に見るユナイテッドの5つのシステム不全 ~チーム状態は限界か!?~

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こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22プレミアリーグ第31節。ホームでレスター・シティと対戦したユナイテッド。試合は開始からアウェイのレスターが積極的に仕掛け、バーンズがゴールに迫る展開に。ユナイテッドも30分にレスターのミスからブルーノが決定機を迎えますがシュマイケルの足に阻まれます。前半足を負傷したショーは後半頭にテレスと交代。また、ブルーノの偽9番システムが上手くいかないユナイテッドは55分にラッシュフォードを投入します。しかし63分、カウンターで攻め上がったフレッジがボールを奪われ逆にカウンターを返されます。マディソンのピンポイントクロスにイヘアナチョが頭で合わせてゴール。先制を許してしまいます。すぐさまフレッジがこぼれ球を押し込み同点としますが、80分にはマディソンにゴールを割られます。しかしこれはヴァランに対してファールがあったとしてVAR判定の結果取り消しに。救われたユナイテッドですが、勝ち越しゴールは奪えず試合は1-1のドローに終わりました

*試合のハイライトはこちら

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今回はレスター戦でのユナイテッドの5つのシステム不全を取り上げます。そしてそこから見えるユナイテッドの現状について書きたいと思います!

以下項目です。

👿ラインナップ

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21-22PL31 ユナイテッドvsレスター ラインナップ

①ブルーノの偽9番

ポルトガル代表はワールドカップのプレーオフ2試合を戦い、トルコと北マケドニアに勝利、見事本大会出場を決めました。ブルーノは北マケドニア戦で2ゴールを挙げ、さらにレスター戦の前日にはユナイテッドと2026年までの契約延長にサイン。今後もユナイテッドと命運を共にすることを決めています。

そういったとても充実した精神状態で臨んだレスター戦。ラングニック監督は代表戦で怪我をしたカバーニと、体調を崩したロナウドの離脱により、ブルーノを偽9番に置くシステムを採用しました。これまでも何度かトライしていて理論上はできるはずのシステムですが、レスター戦に関してはこれが全く機能しませんでした。ブルーノの動き自体はほぼ10番の時と変わらずライン間を使ったり、ディフェンダーの裏を取る動きは皆無で、ブロックの外に出てボールを貰う事がほとんどでした。

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特にブルーノは左サイドに出てボールを受ける事が多く、横陣形の間延びの要因となりました。ブルーノとしてはビルドアップが上手くできないチームを助ける意識が強かったのだと思いますが、ポグバもエランガもトップのポジションを使う意識が薄すぎてブルーノの頑張りを無駄にしていた印象を受けます。

ユナイテッドの偽9番は実質ただの4-2-4であり、戦術的な価値はほぼなかったと言えるでしょう。ブルーノのキャラクターと合ってないとも言えますが、攻撃ユニットとしてどのように動くのか、統一認識がなかったことに問題があります。

②ポグバのトップ下

ブルーノの偽9番に合わせてトップ下起用となったポグバ。55分にマクトミネイに代わってラッシュフォードが入り、それと同時にポグバは1列下がりますが、この試合のポグバのボールタッチは47回で先発組ではワースト3位(ショーとマクトミネイが最低)。トータルのキーパスも0回と攻撃をオーガナイズすることができませんでした。ボールを持って、中距離のパスでリズムを作ることが得意なポグバは、ストライカー不在のトップ下でどう動いて良いのか戸惑っているように見えました。またビルドアップに難のあるユナイテッドは、ボールをサイド(特に左)から前進させます。さらに先述したように、ブルーノはサイドへ流れてボールをもらうために、中央やや右寄りにいるポグバには余計にボールが回ってきませんでした。

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スペースを見つけて入り込む動きも得意ではないこともあり、ブルーノが開けるスペースを有効活用できなかったポグバですが、10番起用は正直合ってませんね。後半、1列下がったあとはボールタッチも増え、パス出しをするようになりましたが、ブルーノ同様にキャラクターとシステムのミスマッチの割を食ったと言えます。このシステムはエバンスやフォファナにとって全く怖さがなかったでしょう。

奇しくもポグバは代表の試合の前に、

「フランス代表ではシンプルだ。僕はいつものように、自分のポジションでプレーしている。自分の役割がわかっているんだ。でもマンチェスター・ユナイテッドではポジションもシステムもパートナーも度々変わるから一貫したプレーをするのが難しい。僕に役割はあるのだろうか?」

と発言。ユナイテッドでの安定しない役割に戸惑っていることを告白していましたが、レスター戦はまさに曖昧なタスクで、何をすべきかを見失っている試合でした。ボール非保持時には最前線でブルーノとハイプレスを掛ける役割もあったはずですが、プレス強度と詰めるスピードの足りないポグバには全く合っていない役割だったと思います。

③マグワイアの右CB

レスター戦、唯一といってよいシステム変更の成功例がマグワイアの右CB起用でした。これまでのキャリアでレスター、イングランド代表、ユナイテッドと左CBを務めてきたマグワイア。相棒のヴァランはレアルで右に慣れている事もあり、左にマグワイアが入ることはごく自然なことでした。先日のイングランド代表とコートジボワールの親善試合で、イングランドサポーターからブーイングを浴び、プレミアでは古巣からネチネチと揶揄されるという状況で、マグワイアはそれに反論してみせる必要がありました。そもそもブーイングを浴びたのは、ユナイテッドでのパフォーマンスが原因ですが、チーム全体のパフォーマンスが良くないことも大いに関係しており、マグワイアだけが執拗に責められるのは少しおかしい気がします。

ラングニック監督は、イングランド代表でのマグワイアのプレーを見て右にコンバートすることを決断したと語っていますが、その狙い通り左サイドへ対角にロングフィードを何本か放ち、パス本数では最多を記録。また守備面でもフレッジに次ぐ8回のボールリカバリーと最多の3回のインターセプトを記録。クリアもチーム最多とマグワイアの良さが発揮されました。

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ユナイテッドは、4-2-3-1と4-3-3のミックスを使っていますが、右に寄りがちなマクトミネイと前へ出がちなフレッジのために、左CBは相手の攻撃にさらされやすい性質を持っています。8番で輝くようになったフレッジとは対照的に、左CBのマグワイアのパフォーマンスが落ちたのは恐らく関係しています(もちろんそれだけではないですが...)。それを証明するかのように、レスター戦では逆にヴァランが苦戦しました。イヘアナチョの先制ゴールも裏を取られたのはヴァランでしたし、VARで取り消されたマディソンのゴールもヴァランのところが起点になりました。71分のイヘアナチョのループシュートの場面もヴァランはあっさり裏を取られています。

このように、確かにマグワイアだけを見ればこのコンバートは当たりなのですが、チーム全体として見た時に、これまで同様にバランスを欠くことにもなっています。レスター戦は、時間が進むにつれえて縦陣形も間延びが顕著でしたが、前からのプレスの欠如、中盤のフィルター不足、不安定なポゼッションなどの要因と共に、このセンターバックコンビのアンバランスも要因の1つとなっているのは明らかでしょう。マグワイアがパフォーマンスで批判に対する答えを見せつけたことは喜ばしいのですが、来シーズンに向けてを考えた時に、マグワイア、ヴァランのコンビも完璧ではなく欠陥のあるユニットだと言わざるを得ません。

④マクトミネイのアンカー

49分、マディソンへのタックルで辛うじて退場せずに済んだマクトミネイ。この試合のパフォーマンスに関しては多くの批判を浴びました。明後日の方向へ飛んでいくパス、ビルドアップ時にはCBからのパスコースを作る動きがほとんどなく、ビルドアップ不全の要因となっていました。デュエルや空中戦では持ち前の強さを発揮していましたが、少なくないユナイテッドサポーターが、マクトミネイがスタメンに定着している事に疑問を持っている事は事実でしょう。

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マクトミネイ大好きな私としても、そういった意見が出ることは理解できますし、技術面で物足りないとは思います。恐らくラングニック的には、自身の中で最も重要視している「フィジカルの強さ」という面でマクトミネイをチョイスしているはずで、組立での貢献や局面打開のパスなどは余り求めていないのだと思います。とはいえ、ラングニック監督が持ち込んだ4-2-3-1と4-3-3のミックスシステムの為に、マクトミネイの良さが発揮できなくなったことも確かです。

もともとポジショニングに難があり、足元の技術も平凡であるマクトミネイですが、フィジカルの強さを活かした守備と、時折見せる飛び出しや攻撃参加、ゴリッと前を向いて突進するプレーは得意としています。それがアンカーとして前へ出る事を制限され、とはいえどっしり構えていられるわけではなく、時にはフレッジとダブルボランチとして振る舞う必要もある状態です。

恐らく本人も、今どちらの役割でプレーするべきなのかを的確に判断できていないのが現状でしょう。それほど器用ではなく、パフォーマンスの波もあるマクトミネイにはもっとシンプルな役割を与えるべきです。まだスールシャールがやったように、マクトミネイアンカー固定でフレッジとブルーノのダブル8番システムの方がやりやすいはずです。もしくは、マクトミネイを起用するならもっとスキルフルでビルドアップでも貢献できるタイプの選手と組ませる方が良いでしょう。そして、やはり来シーズンへ向けては補強が必須のポジションですね。

⑤ラッシュフォードのトップ

ロナウド、カバーニが不在の状況でスタメン起用されなかったラッシュフォード。55分にピッチに立ち、トップのポジションに入りますがシュート0、ボールタッチは14回、キーパス0本とほとんど何もしないまま終わっています。最後は決定機になりそうな場面でエランガと交錯してしまうというシーンも(結果的にオフサイド)...。個人的にはラッシュフォードはワイドストライカーでトップは厳しいと考えているので、トップ起用で結果が出ない事に驚きはないのですが、チーム状況を見た時にやはり本人としては屈辱的だったとは思います。

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結果論ですが、サンチョもエランガもパフォーマンスが良くなかっただけに、余計にラッシュフォードとしてはフラストレーションが溜まったかもしれませんね。ラングニック監督お気に入りのエランガは確かにポテンシャルのある選手ですが、ラッシュフォードは今のような使われ方ではラングニック監督を信頼する事はないですし、自信を取り戻すこともないでしょう。試合後のラングニックのコメントではラッシュフォードを手助けをすることが自分の仕事だとしながらも、最終的には自分自身で乗り越えなければならないとも言っています。まったくもってその通りですが、恐らくラッシュフォードには響いてないでしょう。彼はずっと迷子のままです。

私は先日、昨シーズンの試合を見たのですが、もっとも今と動きが違ったのはラッシュフォードでした。ボールを失ったらすぐに取り戻しに行き、マーカーを「圧」で翻弄する力強さがありました。技術的な問題や判断力にも足りない部分があるのは間違いないのですが、もっとも影響しているのはメンタルでしょう。レスター戦のラッシュフォードのトップ起用は、自信を失っている彼を助けるシステムでは全くありませんでしたね。

👿まとめ

レスター戦の引き分けにより、4位の座がさらに遠のきました。アトレティコ戦の敗戦後1週間のオフが与えられ、各々代表でリフレッシュもできたでしょう。なのにこの低パフォーマンス...。この要因に関してラングニック監督は

「身体的特徴は正直なところ選手のDNAが少し関係する。技巧派の選手は本来肉弾戦を好まないし、そういった選手がユナイテッド には沢山いる。レスター は肉体的でアグレッシブなプレーをするチームだった為に我々に問題が発生した。それは精神面からでは無く身体的特徴の違いから来た問題だと思う。」

と語っており、要するに選手達は勝とうとしたが、「フィジカル的にレスターが上回った」事を要因として挙げています。一方でOBであるギャリー・ネビルは

「ユナイテッドのプレーには喜びが感じられない。ただたた無気力だ。ファンは、『今日は次に何が出てくるだろう!』とワクワクしながらプレーを見守っているはずだ。だがそれもない。努力不足というのは怠慢だと思うからだ。アイデアや自信のなさ、良い選手が初歩的なミスをする。それに加えて、選手たちは自分たちのサッカーを楽しめていない。ただ流されているだけだ」

と語っています。

個人的には、ラングニックの主張には賛同できません。代表戦の疲れも言い訳にはできませんし、攻撃陣の不在も同じくです...。残念ながらネビルの言うことの方が正解のように聞こえます。もはや戦術や技術、フィジカルなどの要素ではありません。個人的には代表ウィークにショーとポグバがメディアに語った「ユナイテッドでは上手くいっていない」というニュアンスのコメントが引っ掛かります。恐らくロッカールームでは、「このチームではダメだ」ということが共通認識としてあると思います。すでに諦めている...戦う意義を見出せていないのだと感じます。ブルーノの契約延長は、そんな空気を打破するかもしれないと思っていましたが淡い希望でした...。

そしてこれは推測でしかないですが、ラングニックもこのチーム状態を受けて「厳しい」と思っているはず...。レスター戦の各選手の無秩序なプレーはほとんど何の準備もされてなかったことをうかがわせました。まさにスールシャール末期のような印象で、選手1人1人が自分のタスクが何かわかっていないのだろうと思わせました。

ブルーノはいつも通りただの10番として振る舞い、ポグバは自分のキャラクターに合わないポジションに戸惑い、サンチョはパスを送るストライカーがいない為にスペースへドリブルを繰り返し、マクトミネイはアンカーなのか2ボランチの1角なのかわかっていませんでした。同点弾を決めたフレッジと決定機を阻止したデ・ヘア、そしてバーンズを警戒しつつチャンスメイクもしたダロトの3人だけが自分の役割を理解していたと思います。

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それぞれのタスクが曖昧なのはラングニックが指導していないため...もしくは選手が聞いていないかのどちらかです。今回挙げた5つのシステム不全は、まぎれもなく今のチーム状況の写し鏡のようだと感じました...

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21-22PL31 ユナイテッドvsレスター スタッツ 出典:プレミアリーグ公式

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21-22PL31 試合結果 出典:ユナイテッド公式

この試合の結果ユナイテッドは7位に後退。4位スパーズとは勝ち点3差です。

次節はグディソン・パークでのエバートン戦。4月9日(土)20:30キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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