こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23カラバオ・カップ3回戦 ホームでアストン・ヴィラと対戦したユナイテッド。試合は開始からユナイテッドがボールを保持し、ヴィラ陣内でゲームをコントロールする展開に。ラッシュフォードやマルシャルが何度かライン裏へ飛び出しますが、オフサイドが続きなかなかシュートまでいきません。後半に入り48分。一瞬の隙をつかれワトキンスに先制ゴールを奪われます。しかし、その直後、裏へ抜け出したブルーノからマルシャルへ繋いでゴール。すぐさま試合を振り出しに戻します。61分にダロトのオウンゴールで再び先行を許しますが、67分にラッシュフォードのゴールで再び同点に。さらに、ヴィラのビルドアップのミスからガルナチョがボールを奪いブルーノへラストパス。これをブルーノがしっかり決めて逆転に成功します。ホームの大歓声に支えられたチームはアディショナルタイムにもガルナチョのクロスにマクトミネイが飛び込み4点目。試合はユナイテッドが劇的な逆転劇で4-2で勝利。4回戦に駒を進めています。
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今回はこの試合のマッチコラムをお届け。チームが見せた進化と裏腹に、その進化に着いて行けてない選手の存在も垣間見えたヴィラ戦。ワールドカップによる中断期間を目前に評決が下る時が迫ります。
以下項目です。
👿ラインナップ

①前半の秩序とルール
プレミアリーグ第15節、ヴィラ・パークで成す術なく3-1で敗れた試合から見事なバウンスバックを見せたユナイテッド。リーグ戦から先発7名を入替え、ターンオーバーを実施しつつ素晴らしい逆転劇を演じたチームは再び成長を見せてくれました。試合展開的には、スパーズ戦に次ぐ完璧な内容という印象を受けますが、前半のユナイテッドは実に秩序正しくプレーしました。4-4-2でライン間をコンパクトに保つヴィラに対して開始からボールを保持。マクトミネイをアンカーに、フレッジはやや高い位置を取り4-3-3でプレーしたユナイテッド。前線にマルシャル、ラッシュフォード、ブルーノを配し、ヴィラのライン裏を狙いました。非保持では前線は整備されたプレスの構えを行い、後方はマクトミネイをフリーマンにし他はマンツーマンでハメ込みます。リーグ戦から同じくターンオーバーしたヴィラも、リーグ戦で見せたような極端なポジションチェンジは行わず、組織的に戦ったためにお互いにシュートシーンの少ない展開となりました。
前半のユナイテッドはルール通りにプレーし、多少の個性の違いはあれど基本的にレギュラー組とほぼ遜色ないプレーを見せました。これはスールシャール時代からずっと抱えてきた「レギュラーとサブのパフォーマンス差」という課題が解消されつつあるということも示しています。リンデロフは、マルティネスのようにチャレンジ&カバーと前線へのフィードを見せ、マラシアはショーのような攻撃参加と正確なロングフィードでチャンスを演出。マクトミネイはカゼミーロのようにワンアンカーでプレーしました。フレッジは無理してエリクセン役をこなさず、カマラを高い位置でマンマークし、カウンタープレスという自身の特徴を出そうとしていましたが、エリクセンとはまた違う方法で周囲とネットワークが作れるフレッジの良さが出ていたと思います。
Embed from Getty Images前半の内容に関してテン・ハーグ監督は
前後半は別物だ。でも、確かに、前半は良いプレッシングでゲームをコントロールし、相手陣内で多くのボールを奪っていたが、判断を誤った。攻守の切り替えがとても悪く、パスミスや背後への飛び出しも見られなかった。パスを出すのが一歩遅かった。前半は多くのチャンスを逃し、最後の7~8分は、ボールもコーナーキックも、本当にずさんだった。ハーフタイムには、プレッシングはそのままに、もっとダイレクトに相手のディフェンスの裏にボールを入れるように指示した。
ユナイテッド公式
と述べており満足していませんが、前半6つものオフサイドを記録したというのは、ある意味監督の指示通りにプレーした結果です。ポゼッション自体は安定していただけに及第点だと思います。
②逆境を跳ね返す精神力
リーグ戦同様に後半開始早々の48分に先制を許したユナイテッドですが、直後にマルシャルのゴールで同点にします。ワトキンスの先制点は、ハンドのアピールのためにプレーを止めたフレッジにより、一瞬の隙を突かれ喫しましたが、ワトキンスのマークを外したマグワイアと共に守備面の対応は完璧ではありませんでした。いつものユナイテッドならこのままズルズルといきそうな場面でしたが、すぐさまダロト、ブルーノ、マルシャルと繋いで同点としたことは精神面の強さを表しています。
しかし、ブエンディア、ベイリーと攻撃の切り札を投入したヴィラにペースを奪われ61分にベイリーのヘディングをダロトがクリアできずオウンゴールとなり再び先行を許しました。直後にテン・ハーグ監督は、フレッジ、ファン・デ・ベーク、マルシャルに替えてエリクセン、エランガ、ガルナチョを投入。エリクセンを入れてボール保持の安定を取り戻し、68分にはマラシアのラッシュフォードへのロングフィードから最後はラッシュフォードが豪快に決めて再び同点とします。2失点目を喫した後もチームに慌てた様子はなく、選手交代のタイミングも良かったこともあり、再び自分達でボールを保持しゲームをコントロールするようになりました。得点力不足もあり、どうしても先行されるとそこからひっくり返すのは難しかったこれまでのユナイテッドですが、選手交代と同時に1トップに移ったラッシュフォードの気合いで同点に追いつきました。63分にもマラシアのロングフィードから、同様の形でラッシュフォードが惜しいシュートを放っていますが、ラッシュフォードの進化が前線のエネルギーを活性化させたと思います。
Embed from Getty Imagesそしてもう1人、チームのメンタル面に多大な影響を与えたのがブルーノでしょう。この試合はキャプテンではありませんでしたが、あらゆる場面でハードワークと闘争心を見せ、出場停止だったリーグ戦のヴィラ戦の鬱憤を晴らすようなパフォーマンスを見せました。前回の記事でブルーノが持つネットワーク構築力の高さについて書きましたが、それを改めて証明する試合でしたね。この試合のマルシャル、ラッシュフォード、ブルーノの活躍は19-20シーズンを思い起こさせます。ラッシュフォードとマルシャルは共にリーグ戦17ゴールをマークしチームを牽引。ブルーノは冬に加入し、14試合で8ゴール7アシストを記録。チームを3位に導く原動力となりました。しかし、チーム全体の精神力、一体感では19-20をはるかに上回ります。日曜日の敗戦、そして2度のビハインドを経ての勝利はチームの精神面での成長を物語っています。
*前回の記事はこちら
③ガルナチョの躍動
62分にピッチに立ったガルナチョは、わずか30分の出場で2アシストを記録。ボールを持っては積極的にドリブルで攻め上がりボックス内へ侵入。ブロックされましたがシュートも2本放っています。試合を重ねるごとに成長を見せるガルナチョは、この試合でも公式のMOTMに選ばれました。特に、4得点目のマクトミネイのゴールをアシストしたピンポイントクロスは素晴らしかったですね。マクトミネイの要求した場所へドンピシャで届けており、アカデミーでも自身の仕掛けからのゴールだけでなくマクニールへのアシストも多かったガルナチョのポテンシャルの高さを示しました。サンチョ、アントニーとウィング陣に離脱者がいた事で出番が回ってきているところはありますが、正直18歳でこれだけ存在感を示せるというのは規格外です。まさにグリーンウッドに代わる存在として注目度は増していくでしょう。
Embed from Getty Imagesファギー以降の歴代のユナイテッドの監督は、それぞれ評価したアカデミー選手をトップチームで本格的に使い育成してきました。モイーズはヤヌザイを、ファン・ハールはラッシュフォードを、モウリーニョはマクトミネイを、スールシャールはグリーンウッドを、そしてラングニックはエランガをという風に。テン・ハーグ監督はガルナチョをトップチームに定着できるよう育成する計画を持っているはずです。しかし、ウィンガーのラインナップは強力で、ラッシュフォード、サンチョ、アントニー、エランガとの競争に勝つ必要があります。またガクポなどの左ウィンガー獲得の噂もあり、決して簡単な道ではないのは明らかです。まだ18歳の若者がこういった一流選手達との競争に打ち勝つというのは非現実的でもあり、ガルナチョ本人とファン、サポーターは忍耐も必要でしょう。それでも、ラッシュフォードやグリーンウッドのやってきたことがガルナチョにできないということはありません。そう信じてしまうのが、若手の成長も楽しみにするユナイテッドサポーターなのではないでしょうか。
④チームの進化と船に乗れない者
ヴィラ戦のユナイテッドは選手層の進化、戦術面の進化、メンタリティの進化、そして若手の台頭とチームとして正しいステップで進み改善している事を改めて証明してみせました。今シーズン、何度も嵐に遭遇しながらもそれを乗り越え目的地に向かって進む「ユナイテッド船テン・ハーグ丸」ですが、軌道に乗った船に乗り込めない選手も出てきています。それはファン・デ・ベークであり、ロナウド、そしてマグワイアです。ユナイテッドは日曜日のプレミアのフラム戦を最後に、ワールドカップによる中断期間に突入します。試合数でいうと約1/3を消化する事になりますが、今シーズンスタートを切ったテン・ハーグ体制も一区切りし、これまでの評価がなされるでしょう。現時点でチームのフィットに苦労しているのがこの3人です。
ファン・デ・ベークは今回のヴィラ戦で3試合連続のスタメン起用となりましたが、どの試合もボールタッチ数が少なく存在感が希薄で、インパクトを残すことはできませんでした。何度も言われていますが、ファン・デ・ベークがいくらスペースを見つけてポジションを取っても、味方がそれを活かす事はほとんどありません。これはユナイテッド加入以来、根本的には変わってなく(マティッチ、マタはファン・デ・ベークを見つけるのが上手かった)、パフォーマンスを発揮できない原因なのは間違いありません。もはや議論はそこではなく、なぜ周りはファン・デ・ベークを使わないのかであり、その答えは前回記事で書いたようにファン・デ・ベークはネットワーク構築に失敗したためです。ファン・デ・ベークへボールを預けても有効なプレーに繋がらない、つまりは信頼されていないということです。テン・ハーグ監督は「ここで実力を証明するか、出て行くかのどちらか」と発言しましたが、事実上の最後通告だと感じます。
Embed from Getty Imagesマグワイアとロナウドも、実力、実績は太鼓判ですがチームに上手くアジャストできていません。前へ出る守備と予測、機動力に難のあるマグワイアはユナイテッドのハイラインに適応できず、ロナウドに関しては、前線のプレスと、ネットワーク構築に手間取っており、チームはロナウドがピッチにいる時よりもいない時の方が90分あたり2.28回多くシュートを打っているというデータもあります。ワールドカップに出るこの2人は、大会で自信とコンディションを上げる事が期待できますが、同時に疲労の蓄積と怪我の可能性もあります。一方でファン・デ・ベークはクラブに残って、テン・ハーグを始めとするコーチ陣、残るチームメイトと共に改善するチャンスがあり、中断期間が追い風になる可能性もあります。果たしてこの3選手がワールドカップ開けに、再び乗船許可を得られるのか。今のところは神のみぞ知るというところです。
👿まとめ
劇的な逆転劇。たかがリーグカップされどリーグカップ。「タイトル」が喉から手が出るほどほしいユナイテッドにとっては負けられない試合でした。ローテーションはしつつも、しっかりテン・ハーグ監督の指導の下、プレー原則に従ったパフォーマンスを発揮した選手達。途中出場の選手も流れを変えるのに貢献し、3点目のシーンではカゼミーロやマルティネスを始めベンチメンバーも一緒に喜びを爆発させました。このシーンだけでも見る価値がある試合でしたが、ガルナチョのクロスにマクトミネイが飛び込むというアカデミーパワーでの4点目。試合に花を添えましたね。余談ですが、アカデミー時代にフォワードを務めていたマクトミネイの前線起用は、以前にもテン・ハーグ監督は試していますが「あり」ですね。ただし、膝スラのゴールパフォーマンスはもうやめましょう(笑)。
Embed from Getty Imagesチームとしてのレベルアップがよく見られたヴィラ戦ですが、一方でその進化するチームに着いていけない選手もいます...。ファン・デ・ベークは好きな選手で、彼が活きるフットボールが実現できればユナイテッドのレベルはさらにアップすると思うのですが、もしかしたらファン・デ・ベークがユナイテッドに来るのは早すぎたのかもしれません。これがもっとテン・ハーグスタイルが浸透したチームならファン・デ・ベークも実力を発揮した可能性もあるでしょう。ワールドカップの中断はファン・デ・ベークにとっても重要になりそうですが、ポジション競争は過酷なだけに難しいかもしれませんね。
復活ゴールを挙げたマルシャル、1トップでも機能し始めたラッシュフォード、チームを引っ張るブルーノ、戦力化しつつあるガルナチョ、サブとしてチームを支えるマクフレッド、プレーの改善が見られるマラシアなど多くの収穫があったヴィラ戦。チームの進化が見られるのは嬉しい一方で、競争に敗れる選手やフィットできない選手は淘汰されるという厳しい時期に突入します。「チーム内戦国時代」。果たして生き残るのはどの選手になるでしょう。
この試合の結果ユナイテッドは4回戦進出。ワールドカップ終了後の12月19日の週にバーンリーと対戦します。

次の試合はプレミアリーグ第16節 クレイブン・コテージでのフラム戦。11月14日(月)1:30キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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