こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23ヨーロッパリーグGS第2回戦 アウェー、モルドバのジンブル・スタジアムでFCシェリフ・ティラスポルと対戦したユナイテッド。試合は開始からユナイテッドがゲームを支配し、17分にはサンチョのゴールで先制に成功します。39分にはボックス内でダロトが倒されPKを獲得。このPKをロナウドが決めて突き放します。シェリフも臆することなく積極的に前へ出ますが、ユナイテッドは鉄壁のディフェンスで得点を許さず。試合は0-2でユナイテッドが勝利を挙げています。
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今回は、この試合で見られたユナイテッドのポジションチェンジ戦術について。ボール保持の局面でレベルアップが見られたシェリフ戦。ポイントとなったポジション変化についてまとめました!
以下項目です。
👿ラインナップ

①レベルアップしたボール保持
ヨーロッパリーグの初戦、レアル・ソシエダとの試合にメンバーローテーションで臨んだユナイテッドですが、ローテーションが機能しなかったことと、ソシエダの高いクオリティの前にホームで黒星を喫しました。EL第2戦は、モルドバのシェリフ・ティラスポルと対戦。昨シーズンのチャンピオンズリーグで、シャフタール・ドネツクやレアル・マドリーを破り、世界に衝撃を与えた記憶も新しい、モルドバを代表するサッカークラブです。この試合に、怪我で離脱したラッシュフォードに代わってロナウドを先発起用し、ほぼ現状のベストと言える布陣で臨んだテン・ハーグ監督。初戦を落としているだけにしっかり勝ち点3を獲得する事が至上命題となりました。
*ソシエダ戦の記事はこちら
シェリフ戦のユナイテッドは決して「エンジン全開」といったパフォーマンスではありませんでしたが、ボール保持の場面では多くの進化を見せています。試合を通して68%のボール支配率となったユナイテッド。プレミアのチームと比べると、ボール保持の時間も長く、難易度も高くなかったということも大きな要因ですが、チーム全体でボールを持った時にどのように動いてスムーズにパスを繋ぐかというシステマティックな動きに改善が見られました。この傾向はプレミアの試合でも確認できると思いますが、テン・ハーグ監督のスタイルが着実に浸透しつつあるという証でもあります。
Embed from Getty Imagesシェリフ戦のボール保持でポイントとなったのは「ポジションチェンジ」です。テン・ハーグ監督はユナイテッド就任以降、大半の試合で4-2-3-1を基本システムとして戦っています。通常はボールを失った時のリスク回避も考慮して、ほとんどの選手は基本のポジションから大きく離れる事はありません。ポジションを変えた選手の開けたスペースを誰かが埋める必要が生まれ、連携が取れていないとネガトラの局面でそのスペースを狙われることになるためです。いわゆる10番タイプの選手は、比較的自由にポジショニングすることを得意としている選手も多いですが、ペップ・シティなど組織としてポジションチェンジを戦術化しているチームはそう多くはない印象です。シェリフ戦のユナイテッドは、そう言った意味での「ポジショナルプレー」の要素を見せたとも言えます。
②フリーマン ダロト
シェリフ戦で最も大きくポジションを変化させたのが右サイドバックのダロトです。テン・ハーグ監督になって信頼され、成長著しいダロトですが、もともとポジショニングのセンスも高く、昨シーズンのCLビジャレアル戦では偽サイドバックをこなした経験もあります。シェリフ戦でもボール保持の場面ではボランチの位置を取る事が多く、17分の先制点の場面でも中央でボールを受けて、右のタッチライン際にいるアントニーへパスを出しています。そのアントニーとの連携も取れており、オーバーラップ、アンダーラップも再三に渡り見せました。2点目のPKに繋がるボックス内への侵入を見せたのもダロトです。また、前半終了間際の時間帯ではトップ下からロナウドと並ぶトップの位置まで侵入しており、指揮官が評価する「前へ出る姿勢」を存分に見せつけました。
Embed from Getty Imagesダロトがここまで自由にポジションを変化させているのは、もちろん相手がシェリフであるということも要因としてあります。これがプレミアリーグのチーム相手ならここまで高い位置は取っていないでしょう。しかし、ダロトの「偽サイドバック」は戦術レベルで落とし込まれているはずです。それはバックラインがスライドしてヴァラン、マルティネス、マラシアで3バックを形成している事からもわかります。ダロトがボランチの位置に入る目的はいくつか考えられます。
✅アントニーをワイドに張らせる
✅被カウンター時に中央のパスコースを消す
✅ビルドアップ時に中央のパス経由地を増やす
✅ブルーノが中盤まで降りる必要がなくなる
...などですが、最も大きな目的はエリクセンの攻撃参加をサポートするためだと思います。ダロトがボランチに入り、マクトミネイが左寄りに動くことで、エリクセンは左のMFとして高い位置を取りやすくなります。ダロトのポジション・チェンジにはエリクセンの存在が大きく関わっていると思います。
③エリクセンとマラシア
エリクセンとマラシアはともに新加入ですが、2人の連携はまさに「阿吽の呼吸」。インナーレーンに入るマラシアとワイドに出るエリクセン。前へ出るマラシアとカバーに入るエリクセン。この2人はもともと持っているポジショニングセンスが高いこともありますが、試合中によくコミュニケーションを取っていることもスムーズなポジション交換の要因でしょう。エリクセンは左のミッドフィールダーの位置でボールを受けてピッチ全体を見渡すことが多く、チームの攻撃のスイッチ役として重要な役割を担っています。また、自陣でのビルドアップの時は左サイドバック、もしくは左センターバックのポジションに入り組立に参加するシーンも多くあります。ボール保持のフェーズでチームの鍵を握るエリクセンが、現在替えの効かない選手になっているのも頷けますね。
Embed from Getty Imagesまたシェリフ戦のエリクセンは、反対サイドのダロトのカバーにも入るシーンがありました。高い位置を取るダロトのカバーは、通常センターバックのヴァランがスライドして担当していますが、前半43分のビルドアップの場面ではエリクセンが右サイドバックのポジションに入りボールを捌いています。もちろん一過性の高いもので、パターン化された形ではないですが、味方の「広範囲の」ポジショニングを見て、自身のポジションを変える意識の高さはユナイテッドの中ではずば抜けているでしょう。また、前項で書いたようにダロトがボランチに入る事で、エリクセンはスライドして左サイドに出て行けます。これがボランチにマクトミネイ1人を残すだけだと、被カウンター時の対応で劣勢になる可能性があります。このあたりもチーム戦術として形を成してきたポイントではないでしょうか。
マラシアも頻繁にレーンを入替える特徴を持ったサイドバックです。フェイエノールト時代からそうなのか、ユナイテッドに来てテン・ハーグの指導の下そうなったのかはわかりませんが、プレシーズンの早い段階からインナーレーンに入る動きを見せており、ショーにはない特徴を持った選手だという印象でした。シェリフ戦のマラシアも左CBになってのビルドアップや、左ボランチに入りエリクセンをサイドへ押し出す動きといったポジショニングの変化を見せています。後半70分からは右サイドバックにポジションコンバートされたマラシアですが、その背景にはマラシアのポジショニングセンスの良さと、フットボールIQの高さがあります。現時点ではこのコンバートはテン・ハーグ監督の「実験」でありオプションの域を出ませんが、悪くない動きだっただけに今後も試されそうですね。
Embed from Getty Images④サンチョの意識変化
シェリフ戦で素晴らしい先制点を決めたサンチョ。リバプール戦のゴール同様、ゴール前でのキックフェイントから逆足での見事なゴールでした。サンチョはプレシーズンでは主に右サイドでプレーし、ダロトとマクトミネイとの連携で攻撃陣を牽引しましたが、4節のセインツ戦から左サイドに固定されてからは、ゴールシーン以外での存在感が薄く、ビルドアップでの貢献やアタッキングサードでの動きに乏しくボールタッチも少ないパフォーマンスが続いていました。ゴールを決めてくれるのは嬉しいのですが、サンチョ推しの私としては、サンチョは攻撃の中心であってほしいという願望があり(笑)、ゴール以外のプレーでは期待値には届いていないというのが正直な感想でした。
しかし、シェリフ戦は頻繁にポジションを変え、ビルドアップや崩しの場面で積極的にボールに絡みました。サイドに出たエリクセンの開けたスペースに降りてボールを叩いたり、マラシアやブルーノとのワンツーもいつもより頻度が高く、ボックス内への侵入も意欲的に狙っていました。試合後テン・ハーグ監督も、サンチョ、エリクセン、マラシアのトライアングルは相手の脅威になっていた事に触れ、サンチョはサウサンプトン戦のブルーノのゴールの時にも、センターフォワードのポジションに入っていたことも良い例として挙げていました。今回のゴールもサンチョのボックス内への侵入とポジショニングがポイントとなったのは間違いないでしょう。
Embed from Getty Imagesこれまではタッチライン際に張っている事の多かったサンチョですが、シェリフ戦では意識の変化が見られたと思います。サイドでボールを持って高いテクニックを駆使し、ドリブルを仕掛けるサンチョも最高ですが、状況に応じたポジショニングに優れ、ボックス内での冷静さを持つサンチョはよりゴール近くでプレーする方が相手にとっても脅威でしょう。今シーズン初のフル出場となったサンチョはポジショニングの意識を変えたことで、より存在感を増すかもしれません。
⑤降りるロナウド
最後は、賛否両論のあったロナウドのポジション変化です。シェリフ戦のロナウドが見せたのは頻繁に降りてくる動きです。ボール保持の場面で、中盤まで下がってボールを貰い、一度ボールに触れてから前線に上がっていく動きは確かに多く見られました。その動き自体は、トップの選手の動きとして珍しいことではありませんが、ここで問われたのはその「効果」でしょう。ロナウドは効果的にボールを捌けず、コントロールミスも散見されました。いわゆるポストプレーの精度の問題ですが、これに関してはやはり「効果的ではなかった」というのが私見です。
Embed from Getty Imagesしかし、ラッシュフォードにしてもそうですが、このポストプレーに関してはテン・ハーグ監督の指示だという可能性があります。アヤックス時代もセンターフォワードを務めたセバスティアン・ハラーは点を取るだけでなく、ポストプレーや前線のプレスも重要なタスクとして持っていました。ユナイテッドでも同様の役割をトップの選手に対して課している可能性は高いように思います。ロナウドの動きにしても、降りて来て捌いた後は前線でしっかりディフェンダーの裏を狙う動きを取っています。「クロスを上げてもゴール前に人がいない」という状況にはなっていなかった印象です。
また、ロナウドが下りてきていた場所は、マクトミネイのいるレーンのミドルサードが多かったです。シェリフのシステムは4-2-3-1と表記されている場合もありますが、ボランチの18番のキャブ―が1アンカー気味になり、同じくボランチの8番のディオップは比較的高い位置へ上がる4-1-4-1のように変化します。18番のキャブーはブルーノをマンマークしており、左に寄りがちなブルーノに釣られて右側を開ける事が多かったです。その空いたスペースにロナウドは降りてきていましたが、ロナウドの判断でこのスペースを見つけたとしたら流石ですし、使うスペースとしては正しかったと思います。ただ、残念だったのはコンディションと、ロナウドも6番のラデルジッチにマンマークされていたこともあり、効果的なポストプレーにはならなかったという事です(そもそもポストプレーが得意ではないですが...)。
👿まとめ
モルドバという未知の土地でのプレーは容易ではなかったと思いますが、しっかりクリーンシートで勝ち星を得たことは評価に値します。ユナイテッドはわずかに8本のシュートしか放っていませんが、全てのシュートをボックス内で放っており、効率的な攻撃ができていたと言うこともできます。また、守備面でもヴァランとマクトミネイは高い地上、空中デュエル勝率を示し、ヴァランは最多の13回のボールリカヴァリーを記録し堅守に貢献しました。攻守において各選手が自分の仕事をしっかり果たしたという印象のシェリフ戦となりましたね。
Embed from Getty Imagesチームとしてのまとまりも継続できており、今回取り上げたようにポジションチェンジによるボール保持のレベルアップやスペースメイクなど、戦術面での進歩も見られました。あとは、こうしたボール保持の優位性を、より効率的に得点に繋げる工夫が必要でしょう。ストライカー問題は容易に解決しないかもしれませんが、崩しの局面の改善はまだまだできると思います。また、マルシャルが復帰となればアタッキングサードのクオリティにも変化が期待できるはず。プレミア2試合延期となり、代表マッチウィークに入りますが、招集外の選手達にはその間しっかりトレーニングして、個々のレベルアップに尽力してほしいですね。
この試合の結果、ユナイテッドはグループEの3位となっています。
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次の試合はプレミアリーグ第9節 エティハド・スタジアムでのマンチェスター・シティ戦。10月2日(日)22:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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