こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23FAカップ決勝戦 聖地ウェンブリー・スタジアムでライバル、マンチェスター・シティと対戦したユナイテッド。試合は開始12秒でイルカイ・ギュンドアンにボレーシュートを決められ失点する展開に。それ以降は、ユナイテッドがハイプレスと組織的なミドルブロック守備でシティのポゼッションに対抗し、お互いにチャンスを作ることができません。しかし30分、ブルーノのパスをボックス内でワン=ビサカと競り合ったジャック・グリーリッシュの手にボールが当たりハンドの判定に。このPKをブルーノが落ち着いて決めて同点とします。後半逆転を目指して入ったユナイテッドでしたが、51分にセットプレーからまたしてもギュンドアンに決められ2失点目を喫します。ユナイテッドは62分にガルナチョ投入。そのガルナチョは72分に惜しいシュートを放ちますが決められず。ヴェグホースト、マクトミネイを入れて強度で勝負に出るユナイテッドは、アディショナルタイムにもゴールに近づきますが決め切る事はできず、2-1でシティに敗れ今シーズン2つ目のタイトル獲得は叶いませんでした。
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今回はシティとの決勝戦をマッチコラムという形で振り返ります!
以下項目です。
👿ラインナップ

①開始早々の失点
電光石火、わずが12秒での失点となったFAカップ決勝戦。キックオフでギュンドアンがキーパーのステファン・オルテガまでボールを下げ、オルテガはやや右に流れたアーリング・ハーランド目掛けてロングボールを蹴りました。その競り合いのボールを、一度はリンデロフがヘディングで跳ね返しますが、これがギュンドアンの元へ。ギュンドアンがダイレクトボレーて叩いたボールはゴール左上へと突き刺さりました。ユナイテッドサポーターの中にはまだ着席していなかった人もいるかもしれません。まだ酒やツマミの用意ができていなかった人もいるかもしれません(私です...)。それぐらいあっという間の失点となりました。
Embed from Getty Imagesギュンドアンのシュートは決まる確率の非常に低いシチュエーションでのシュートでしたが、この大一番でこれが決まってしまうというのはある意味不運と言えるでしょう。失点後、ヴァランやカゼミーロはゼスチャーでチームメイトに落ち着くように指示しましたが、シティという強力な相手に開始直後にアドバンテージを与えるというのは、精神的なダメージは小さくなかったと想像できます。
しかし、この一見不運のような失点も、ある程度シティ側の狙いがあった可能性も指摘されています。通常ならキックオフのボールはハーランドが蹴ることが多いようですが、ギュンドアンに任せハーランドは前線へ移動します。キーパーまで戻すというのもオルテガのキック精度を利用しようとしたと考えられますし、ハーランドは右側へ移動し(この時全体で右サイド圧縮)、上背のないフレッジとの競り合いを狙ったのかもしれません。結果的にここにはカゼミーロが競りに行きますが、本来ならギュンドアンに付くはずのカゼミーロがハーランドと競り合ったことで結果的にギュンドアンはフリーになっています。もちろんシティも、得点になるほど上手く行くとは予想していなかったと思いますが、ハーランドのポストプレーまではデザインされていた可能性はあると思います。
②ユナイテッドの戦術
開始早々の失点で出鼻を挫かれたユナイテッドですが、それ以降は組織的な守りでシティのボール保持に対抗しました。ユナイテッドが準備していたのは前線4枚を並べて防波堤を作り、中央を閉じてシティの中盤にボールを入れさせないハイプレス。後方はマンマークで対応し、余るCBの1枚(ヴァランorリンデロフ)は落ちるハーランドに対応するやり方でした。前線のプレスはブライトン戦のようなミドルプレスではなく、ボールホルダーには必ずプレスにいくハイプレス型を採用しましたが、シティのボランチの2枚、ストーンズとロドリはそれぞれエリクセンとブルーノが見る形となっていました。ブルーノは右ウィングでしたが、ロドリと左CBのアカンジの2人を見る必要がありましたが、基本的にはキーパーのオルテガも含めてシティ6に対してユナイテッド4の数的不利は如何ともし難く、相手のミスを誘うような強度の高いプレスとはいきませんでした。
しかしながら、前半は後方のマンツーマンが崩れることはほとんどなく、前線の中央封鎖の陣形はしっかりしていたこともあり、シティに効果的なボール保持をさせるシーンは限定的でした。規律を持って、狙い通りに非保持を続けられたことはテン・ハーグ監督の意図した通りでしたが、細かいことを言えば、ラッシュフォード、サンチョ、エリクセンのプレス強度不足と、それでも一瞬の動きでプレスを回避できるストーンズやデ・ブライネの能力の高さはユナイテッドに脅威を与える可能性を常に孕んでいたと思います。特に偽CBとなるストーンズ番となったエリクセンは、非保持の場面で重要な役割を担っていたにも関わらず、緩いプレスが目につき、簡単に前を向かれるシーンもありました。62分という比較的早いタイミングでの交代となったのも仕方ないところがありますし、この戦術ならヴェグホーストをスターターで使った方が得策だったかもしれません。
Embed from Getty Images③勝敗を分けたもの
33分にブルーノのPKで同点としたユナイテッドは、ボールを支配されながらも組織的な守備で善戦します。前半を同点で折り返し、後半逆転を目指しますが、流石にシティは修正を加えます。SPOTV解説の林 陵平さんが仰っていたように、ベルナルドのポジションを下げることでショーのマークに迷いを生じさせギャップを作り出そうとします。これにより後方のマンマーク・ディフェンスのバランスがやや崩れますが、ゴール前の守りは固く決定的な場面は作らせませんでした。しかしながら、フレッジのデ・ブライネに対する不用意なファールからセットプレーを与え、フリーキックをギュンドアンに決められ2失点目を喫します。このゴールも1失点目同様ゴール期待値の高いものではなく、決まる確率は非常に低いシュートでした。この時のユナイテッドは通常通りゴール前でゾーンディフェンス、後方からの走り込みに対してはマンツーマンで対応しますが、最終的にギュンドアンのシュートをブロックしに行ったのはゾーン対応していたヴァランとワン=ビサカでした。ユナイテッドがセットプレーの守備を得意としていないのは誰もが知っていますが、このシーンも明らかにシティの狙い通りだったと思います。ただ、シュートスピードからしてもデ・ヘアには止めて欲しかったですし、止められたはずだと思います。
Embed from Getty Images2失点しながらも、ユナイテッドは終盤にかけてシュートチャンスを得るようになっていきます。ポイントとなったのは62分のガルナチョの投入で、チームは70分以降に後半の全シュート数となる8本のシュートを放っています。ブルーノをトップ下に戻し、ガルナチョ、サンチョの2枚のウィンガーでの仕掛けは、今シーズンのユナイテッドが基本としてきた形であり、ある意味本来のシステムに戻した戦い方に変化しました。ガルナチョ自身も72分に惜しいシュートを放ち、92分のゴール前の混戦からマクトミネイ、ヴァランのヘディングシュートも決まってもおかしくないものでした。最終的なゴール期待値xGはシティ1.1に対してユナイテッドは1.9。この数字だけ見ればユナイテッドに勝機があったのは間違いありません。それでも結果はシティの勝利。勝敗を分けたものは何だったのか...。
Embed from Getty Images決まる可能性の低いシュートを2つをゴールに結びつけたシティに対して、ユナイテッドは決められるチャンスを逃しました。これは今シーズン幾度となく見られた「決定力不足」が決勝でも見られたということ。そして、ユナイテッドが果敢におこなったプレッシングも、やはり十分とは言えません。よく組織され規律は守られていましたが、それだけでは足りません。ハイプレスを掛けるなら相手のミスを誘うぐらいの「圧」が必要です。同様に、強豪相手のトランジッション戦術にも限界があります。シティはもちろん警戒し、スペースを与えてくれませんでしたが、こうなった時にはラッシュフォードの能力は半減してしまいます。そしてボール保持に関しても、後方から繋ぐ技術とボールを奪われないプレス回避は、まだまだシティのレベルには遠いと感じました。シティのゴールに「運」があったにせよ、こういった局面局面のレベルの差が、最終的に結果に結びついたのは否定できません。
④来シーズンの糧となる
決勝という舞台では結果こそがすべてであり、戦術や試合内容に関してそこまで深掘る必要はないでしょう。しかしながら、上記した勝敗を分けた要因は、そのままユナイテッドの課題でもあります。今シーズン就任したテン・ハーグ監督は、今ある戦力の潜在能力をフルに絞り出すためにチーム作りをおこなってきました。その結果がトランジッション戦術であり、その戦い方にマッチした選手たちを中心に試合をこなし、カラバオカップのタイトルとリーグ戦3位でのCL出場権獲得という結果を手にしました。それは素晴らしいですが、より高見を目指すには今の戦力、戦い方では不足しているのは明らかです。点を取れるストライカーは必要ですし、中盤でプレス回避してボールを運び、前からのプレスでも貢献できるMFも獲得しなければいけません。そして、ビルドアップに貢献できるキーパーもチームに加える必要があります。シティとの決勝戦は、このことを改めて痛感させられる試合でもありました。さらに言えば選手層でもシティとの差はかなりあります。エデルソンやフォーデン、マフレズ、アルバレスがベンチ!?...。ユナイテッドもマルシャル、アントニー、マルティネスを怪我で欠いているとはいえ、そこまでの厚みはまだありません。
一方で、決勝ではメンタル面で成長を感じさせてくれたのも事実。開始早々に失点する難しい試合展開ながらも、各々決められたタスクを実行し、6-3で敗れたシティ戦や7-0でのリバプール戦のように自暴自棄になって崩壊するようなことはありませんでした。若干、規律を重視するあまりに「パッション」が不足している感もありましたが、それでも後半シティを脅かした勇気は称賛されるべきでしょう。今シーズンを通じてテン・ハーグ監督が植え付けてきた「強いキャラクター」を最後の試合で示してくれたことは本当に誇らしく思います。キャプテンであるブルーノは試合後こう言いました。
「いま僕ができる唯一の約束は、来シーズン、僕らはまたここに戻ってきて挑戦するということだ」
Embed from Getty Images今はこの約束が信じられる気がします。そして1年前の状況を思い起こせば、どれだけユナイテッドが進化してきたのかはっきりとわかるはずです。シティの3冠阻止は叶いませんでした。恐らくCL決勝でもインテルを下し優勝を果たすでしょう。それぐらい今のシティは強いです。「ペップは就任7シーズン目、テン・ハーグはまだ1シーズン目。差があるのは当然」という意見もありますが、来シーズン、ユナイテッドはもともっと強くなってシティに、そしてプレミアのタイトルに挑みます。この敗戦を糧にして、倍速で進化します。
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この試合をもって、22-23シーズンのユナイテッドの試合は全日程を終了となりました。全62試合を戦い41勝9分け12敗。多くのドラマがありましたが、供に応援してくれたすべてのユナイテッドサポーターの皆様に感謝と労いの言葉を送りたいと思います。
本当にお疲れ様でした!来シーズンはもっとタイトルが取れるように応援しましょう!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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