【22-23FAカップ準々決勝】フラム戦に見る中盤とビルドアップの問題点【マンチェスター・ユナイテッド】

Embed from Getty Images

こんにちはMasaユナイテッドです。

22-23FAカップ準々決勝 ホームでフラムと対戦したユナイテッド。前半はフラムがセットプレーなどからゴールに近づく展開に。ユナイテッドも少ないチャンスから前半終了間際にマクトミネイがゴール前でチャンスを得ますが決められず、両者無得点で前半を折り返します。後半、フラムがコーナーキックから最後はミトロビッチが押し込み先制に成功。しかし、72分、サンチョの決定的なシュートを手で防いだとしてPKの判定。ウィリアンが退場となります。この判定に納得いかないマルコ・シウバ監督とミトロビッチも退場処分となりフラムは9人となります。このPKをブルーノが決めて同点。その直後、ショーのクロスをザビッツァーがヒールで決めて逆転に成功します。2人少ないフラムに容赦なく襲いかかるユナイテッドは、96分にもブルーノが豪快にネットに突き刺して3-1。ホームで勝利し準決勝進出を決めています。

*試合のハイライトはこちら

カゼミーロ不在の初戦となったフラム戦。ビルドアップに苦労したユナイテッドは中盤に問題を抱えています。今回は、この試合に見る中盤とビルドアップの問題点を考察します!

以下項目です。

👿ラインナップ

22-23FA-QF ユナイテッドvsフラム ラインナップ

①カゼミーロ不在による影響

近年ユナイテッドは「4番」のポジションを専門とする絶対的な選手を見つけられずにいました。4番とはいわゆる守備的MFのことですが、昨シーズンまではマティッチが担当し、マティッチより以前だとキャリックまで遡ることになります。さらにキャリック以前だとロイ・キーンとなるでしょう。フォーメーションによってはアンカーと呼ばれチームの中心となるべきポジションですが、最も活躍したキャリックにしてもプレーメイカータイプであり、文字通りチームに楔を打ち込む絶対的な存在は長い間不在だったと言えます。年齢的な衰えと戦術の進化により、マティッチも毎試合での稼働および活躍は厳しくなっていき、スールシャール政権では中盤のフィルター不足をマクトミネイ、フレッジというハードワーカータイプを2枚並べることで補ってきました。21-22シーズン開幕前の夏の移籍市場では、エドゥアルド・カマヴィンガ(レアル・マドリー)やデクラン・ライス(ハマーズ)、ルベン・ネベス(ウルブス)などの獲得候補が挙がりましたが結局獲得は見送られ、守備的MFの不在はそのシーズンの低パフォーマンスの一因とも言われることになります。

Embed from Getty Images

今シーズン就任したテン・ハーグ監督は、このポジションの選手の獲得を目指しますが、中盤は専らフレンキー・デ・ヨングの獲得に費やされ、具体的な守備的MFの獲得候補は聞こえてきませんでした。フレンキー獲得に失敗し、一時的にユベントスのアドリアン・ラビオの獲得報道が熱を帯びますが、ラビオと破談すると電光石火の速さで決まったのがカゼミーロでした。今シーズンの加入以降のカゼミーロの活躍と重要性に関しては今更多くを語る必要もありませんが、出場試合での高いレベルでの安定したパフォーマンスは、まさに理想とするアンカー像に近いでしょう。求められている守備面のタスクだけでなく、特にエリクセン不在となった2月以降は展開のパスや飛び出しからのシュート、セットプレーのターゲットとしても非凡なところを見せ、チーム内での重要度は最高レベルとなっています。

そのカゼミーロがセインツ戦のレッドカードにより、国内の4試合で出場停止となっています。フラム戦はその1試合目でしたが、やはりというか当然というか、カゼミーロ不在の影響は大きかったというほかありません。最終的に3-1で勝利し準決勝進出を決めたユナイテッドですが、50分にセットプレーからミトロビッチに決められ先制を許します。前半のユナイテッドは支配率でフラムを下回るなど思うようなボール保持ができませんでした。フラムの中央封鎖のプレッシングと右サイドのオーバーロードに苦しんだのは明らかで、トランジッションとビルドアップの場面での機能不全はカゼミーロ不在の影響を大きく感じさせました。正直、フラムの退場劇がなければどうなっていたかわからないでしょう。

Embed from Getty Images

②マクトミネイの限界点

フラム戦の中盤の組み合わせはマクトミネイとザビッツァーに。カゼミーロ不在の試合はW杯以降、これまで4試合ありますが、アーセナル戦以外の3試合でスタートはザビッツァーとフレッジのコンビでした。しかし、ザビッツァーをアンカーに配したこのシステムはホームのリーズ戦で機能しなかったため、リーズとのアウェイゲームの終盤にはマクトミネイとザビッツァーのコンビを採用しています。今シーズン、中盤の序列ではカゼミーロ、エリクセン、フレッジに次ぐ4番目。ザビッツァー加入後はさらに下がって5番手となっているマクトミネイ。怪我や病気などもあって出場時間が減っており、フラム戦の直前も離脱の報道がありました。

フラム戦ではポゼッション時にはアンカーとしてのタスクを与えられたマクトミネイですが、元同僚のペレイラとのマッチアップに苦戦を強いられます。最終ラインからボールを引き取る意識が低く、ペレイラのカバーシャドウから抜け出ることがほとんどありませんでした。ボールホルダーとの距離感も遠く、中央封鎖のフラムの陣形を崩すようなポジショニングは皆無だったと言えるでしょう。まぁ、これに関してはマクトミネイの能力外なので仕方ないところもありますが、ボールを引き取ったとしてもその後の展開が期待できないというところも改善が見られません。相変わらず無難なパスが多く、展開するパスや局面を変えるようなパスは期待できないということですね。

Embed from Getty Images

そんなマクトミネイを助けるため、ザビッツァーとブルーノは頻繁に降りてくることになります。これはビルドアップという面もありますが、マクトミネイがボールを失った時のネガトラのためでもあります。カゼミーロであれば、自分のボールロストに対して即座に反応し奪い返す行動に出ます。そしてカウンタープレスから前線へ繋いでチャンスを作ることもできますが、マクトミネイはトランジッションの面でも緩慢です。デュエル自体はチームでもトップクラスの強さを誇りながらそれを活かすような積極性に欠けています。試合によってはガツガツいく時もありますが、その場合は荒いプレーと紙一重となることも...。フラム戦の後半は、最終ラインとのリンク役をザビッツァーに譲り58分に交代。厳しいパフォーマンスとなりました。ポジショニングとトランジッションに問題があるというのはテン・ハーグ監督にとっては使いづらいところがあるでしょう。しかし、アカデミー育ちで個人的な推しでもあるマクトミネイ。コーチ陣と共に改善に取り組んで、次の試合では少しでも前進してくれることを願います。

③ザビッツァーは解決策となるのか?

フラム戦、マクトミネイとコンビを組んだザビッツァーですが、リーズとのホームゲームではフレッジと組みアンカーを務めたのはザビッツァーの方でした。しかし、中央封鎖のリーズの籠の中から抜けられず、最終ラインからのボールの引き出しに苦労しました。持ち味の飛び出しや豊富な運動量も鳴りを顰め、アンカーとしては充分な働きをできずに終わっています。ザビッツァーは様々なポジションでプレーできるのも特徴の一つですが、彼もやはりボックス・トゥ・ボックスの選手。攻撃に厚みをもたらし、守備でも貢献するプレーを最も得意としています。

フラム戦嬉しい加入ゴール初ゴールを決めたザビッツァー。シュートを合計4本放つなど積極的に攻撃に参加しました。しかし、ザビッツァーの活躍もフラムが2人退場となった75分以降であり、それまではマクトミネイ同様、マッチアップしたハリソン・リードに苦戦したという印象。フラムは右サイドでオーバーロードを作り、ショーとマルティネスを封じる作戦に出ましたが、中盤センターのリードも積極的にこれに関与し、ザビッツァーも下がらざるを得なくなったところもありましたね。

Embed from Getty Images

ザビッツァーは試合をこなす毎に連携が取れ、良さが出せるようになっているのは事実で、来シーズンの買取りの噂が出るのも納得です。しかし、ザビッツァーもやはり守備的MFというタイプではなく、カゼミーロなどとコンビを組むことで最も良さが発揮できるでしょう。なのでどうしてもエリクセンが健在ならばバックアッパーという扱いにはなりそうです。ただ、毎試合のように改善が見られ、ゴールに近づくプレーも多く、プレースキッカーとしての役割も担えるというのも大きなポイント。そういう意味ではカゼミーロの代わりとはいかないまでも、今後の活躍次第で大きな戦力とのる可能性を秘めます。

④テン・ハーグの理想形

フラムが2名の退場者を出した後、83分にフレッジを投入したテン・ハーグ監督はブルーノをアンカーのポジションに下げます。相手はフィールドプレーヤー8人となって引いているので、ユナイテッドがほぼボールを保持する展開が続きます。しかし、ビルドアップという面ではマルティネス以外に配球できる選手がいなかったこともあり、ブルーノが低い位置からゲームを作る役割を任されました。カゼミーロ不在の穴を埋める策として、ブルーノのアンカー起用があり得るのではないかとも言われていますが、人数が少なくなった相手に対するイレギュラーな起用と見るべきかなと思います。ブルーノはボランチ起用の際、不用意なパスミスなデュエルでボールをロストすることがあります。ゲームを作るという点では良いですが、フィルター役としては厳しいでしょう。

しかし来シーズンのことを考えると、中盤の構成はテコ入れが必要なのも確か。ザビッツァーを買い取るのか、マクトミネイやファン・デ・ベークは去ってしまうのかなども大いに関係してきます。テン・ハーグ監督が理想とする中盤の構成とはどのようなものでしょうか?まず、アンカーはカゼミーロが健在であれば問題ありません。エリクセンも中盤の1stチョイスである事は間違いないでしょう。しかし、今回のようにこの2人が不在の事態に対応できるメンバー構成にしておく必要があります。フレッジとザビッツァーはハードワークと安定感をチームにもたらしますが、やはり必要なのは守備力に長けたカゼミーロの代役であり、クリエイティブなプレーができるエリクセンの代役です。もし、獲得に動くのであれば、将来的にこの2人を超える事ができそうな選手ということになるでしょう。しかし、この2人を超えるタレントはそうそう見つかるものでもないので、少し違うタイプを迎え入れる可能性もあります。そして、個人的には今年の夏もテン・ハーグ監督はフレンキー・デ・ヨングの獲得を目指すと思っています。デ・ヨングのプレス回避能力と、ボールキャリーは今のユナイテッドの中盤に最も欠けた能力だからです。

Embed from Getty Images

フラム戦で、ビルドアップに苦労した要因はお互いにマンマークをベースにシステムを組んだためです。トランジッションでは、マーカーとの距離が近いのでプレス回避が難しくなります。ユナイテッドが組立で躓くのは、誰もマーカーを剥がすことができないので数的均衡が崩れないためです。カゼミーロやエリクセンは、ワンタッチパスで回避する時もありますが、プレスを躱してボールを持ち運ぶ事ができる選手はいません。フラム戦はこの影響がモロに出る形となりました

👿まとめ

フラムは準々決勝まで勝ち上がってきたのも納得の素晴らしいパフォーマンスを披露しました。前半から組織されたプレスと中盤のハードワーク、そしてフィジカルを活かしたセットプレーで自分たちの特徴を如何なく発揮したのはフラムの方でした。ユナイテッドはマンマーク気味に対応しつつ、トランジッションではマルティネスの縦パスから何度かチャンスを作りますが、全体的には低調で後半の立上りに先制点を奪われ苦しい展開となりました。72分のウィリアンとミトロビッチ、マルコ・シウバ監督の退場は良い試合運びを見せていたフラムにとっては痛恨でした。同点に追いついて以降のユナイテッドのパフォーマンスはもちろん正当に評価できるものではありませんが、決定機を幾度となく防いだデ・ヘア、2得点を挙げたブルーノ、先制点に繋がる超絶テクニックを見せたサンチョ、初ゴールを挙げたザビッツァー、縦パスからチャンスを演出したマルティネスなど多くの選手が素晴らしいパフォーマンスを見せました。タイトル獲得へまた一歩前進したユナイテッド。良い形でインターナショナルブレークに突入できるのは朗報です。

今回は中盤の問題を取り上げました。今シーズン、カゼミーロとエリクセンの加入により中盤のクオリティは著しく上がりましたが、裏を返せばこの2人の存在により、中盤の問題が覆い隠されていたところもあります。フラム戦ではその問題が露わになりましたが、個々のクオリティアップと同時に、組織としてももう少し踏み込んだ解決策が必要かもしれません。ユナイテッドが来シーズン、チャンピオン争いをするには中盤の問題とビルドアップの改善は避けて通れないでしょう。今シーズン残りの試合でテン・ハーグ監督は、誰を残し、誰を改善し戦力化するか、新戦力を取りにいくのか決断しなければなりません。と同時にどんな相手でも通用するビルドアップ、ボール保持の形を作り上げる必要もあります。

Embed from Getty Images

この試合の結果ユナイテッドはFAカップ準決勝に進出。ブライトンと4月22日にウェンブリーで対戦します。

*スタッツはこちら

次の試合はプレミアリーグ第29節 セント・ジェームズ・パークでのニューカッスル・ユナイテッド戦。4月3日(月)0:30キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました