こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23プレミアリーグ第23節 アウェイ、エランド・ロードでリーズ・ユナイテッド(以下リーズ)と対戦したマンチェスター・ユナイテッド(以下ユナイテッド)。試合は前半からライバル対決らしい激しいフィジカルコンタクトの応酬となります。最初にゴールに近づいたのはリーズ。セットプレーからウーバーの折り返し、サマーヴィルのシュートで惜しい場面を作ると、前半終了間際にもサマーヴィルがゴール前で決定機を作ります。これはなんとかデ・ヘアがセーブしマグワイアとマラシアがクリアし事なきを得ます。ユナイテッドもブルーノが前線でボールを奪ってキーパーと1対1のシュートを放ちますが、メリエにセーブされ得点できませんでした。後半の入りはリーズが優勢。サマーヴィルやハリソンなど、連続してシュートを放ちユナイテッドゴールに迫ります。ユナイテッドは61分に選手交代。マラシア、サンチョを下げてマルティネスとガルナチョを投入。この交代を機にユナイテッドがペースを掴み80分にラッシュフォードのヘディングシュートで先制に成功します。さらに85分にはガルナチョが左サイドを突破し追加点!ユナイテッドが0-2で勝ち点3を獲得しています。
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今回はこの試合の戦術的キープレーヤー5人を取り上げ、ユナイテッドの戦術を考察します!
以下項目です。
👿ラインナップ

①ルーク・ショー
アウェイでのリーズ戦では左のCBとして先発したショー。マルティネスをベンチスタートにするという決断はかなり意外なものでした。マグワイアの起用はヴァランを休ませるという意味合いが大きかったと思いますが、マルティネスは来週のヨーロッパリーグ、バルセロナ戦には累積のため出場できません。ローテーションという意味ではリーズ戦で先発させない理由はなかったと思われます。となるとショーをCBで先発させたのには戦術的な意味があったと考えるのが妥当ということに。
Embed from Getty Images前節ホームでのリーズ戦のユナイテッドはリーズのハイプレスに苦しみ、思うようなビルドアップができませんでした。ヴァラン、マルティネス、ダロトの3人+ザビッツァーの3+1のビルドアップを試みたユナイテッドでしたがリーズは数的同数ではめ込み、しかもアンカーであるザビッツァーを包囲して無効化したためにユナイテッドは非常に組立に苦労しました。今節のリーズ戦ではこのビルドアップをどう修正するかが注目ポイントの1つとなりましたが、ショーをCB起用したこともこの対策の一つだったと思います。
*前節の記事はこちら
ご存知のようにショーは本来サイドバックの選手ですが、3バックの時は左のCBとしてもプレーしてきた経験があります。リーズ戦のユナイテッドはビルドアップの場面では完全に3バックとなっており、ショーの役割は3バックの左となります。もちろんマルティネスでもできるロールですが、マグワイアとの連携や相性を考えるとショーの方が適しているという判断だったのではないかと推測できます。ただ、肝心のビルドアップの場面でのショーは無難なプレーに終始しました。出し所がなかったということもありますが、リスクを犯すような楔やバックライン裏を狙ったパスはほとんど見られませんでした。61分にピッチに入ったマルティネスが縦パスを入れ、SBに移ったショーがクロスで先制点をアシストするというのは当初のプランとは違ったのだと思いますが、結果的にこの変更は上手くいきました。ショーのマルチな能力が活かされたリーズ戦となりましたね。
②タイレル・マラシア
この試合、最も重要な戦術的役割を果たしたのがマラシアです。前回のリーズとの対戦では3+1のビルドアップが機能しなかったので、ユナイテッドは形を変える必要がありました。後方の数的同数を避けるため3+1を3+2に変更しますが、ボランチの「2」はザビッツァーとマラシアが担当しました。サイドバックのマラシアを内側に絞らせ、いわゆる偽サイドバックとしてビルドアップ時のマッチアップを混乱させ、ネガトラ時には中央エリアの被カウンター対策としました。もちろん場合によってはフレッジが下りてくるシーンも何度もありましたが、この試合の基本的なビルドアップ時のフォーメーションはマラシアがボランチになる形でした。
Embed from Getty Imagesリーズのプレスはホームでの対戦時と同様に、前線4人でマンマークでのハイプレスでしたが、ユナイテッドは1枚増やす事でプレス回避しやすくなります。ただ、リーズは数的不利であっても中央封鎖の意識は変えなかったことと、そもそもユナイテッドも後方から繋ぐことのリスクを犯したくないという意識からロングボールも多く、ビルドアップ時に効果的にマラシアを使えていたわけではありません。左サイドはマラシアがインナーレーンに絞り、ラッシュフォードは高い位置で裏を狙い、フレッジはライン間でマッケニーをピン留めしており、左サイドでボールを受ける選手が不在になりました。そのため専ら右サイドからのボール進行になりましたが、この配置が正しいものであったなら、意図的に右から進行し、ラッシュフォードにスペースを与えるという狙いもあったかもしれません。
これは前回対戦の前半でガルナチョを有効利用したやり方と似ていますが、今回は右からラッシュフォードへの展開は上手くいかなかったこともあり、前半は低調なボール保持になりました。61分にテン・ハーグ監督はマラシアと右ウィングだったサンチョを下げていますが、この事からもマラシアのボランチと右のサンチョのアタッキングサードでのボール保持が想定したほど効果的でなかったと判断された可能性がありますね。ただ、マラシア個人のプレーには監督は賛辞を送っています。
③マルセル・ザビッツァー
前半のビルドアップは想定したレベルに達しなかったですが、その中でも前回のリーズ戦から格段に進歩を見せたのがザビッツァーでしょう。前回は不慣れな1アンカーを任され中央で孤立することになりましたが、マラシアがボランチに入ることで、より積極的な動きを取ることが可能になりました。今回は中央で待っているだけでなくリーズの六角形の外に出て、時には右CBに降りる動きも見せています(この動きが先制点の起点に)。また、前述したように右サイドからのボール進行が多かったユナイテッドにおいて、バックラインと前線の中継地点として右のハーフレーンで存在感を見せました。パス成功率は84%でチーム4番目の数字で、アタッキングサードでのパスは13/13本で堂々トップの成績です。ユナイテッドの先制点はザビッツァーのショーへのパスが起点となりました。非常に視野が広く、正確なキック精度という持ち味を発揮してくれましたね。
Embed from Getty Imagesまた、ザビッツァーの守備での貢献も無視できません。タックル成功数5/5(チーム2位)、インターセプト3回(トップ)となっており、10/14回という圧巻のタックル数を記録したフレッジと共にネガトラの場面で、また中盤のフィルターとして役割を果たしました。前回のリーズ戦では、カゼミーロ不在の中盤の守備強度でリーズに圧倒され、批判もあっただけに、僅かな時間でしっかり修正してきたザビッツァーの適応力の高さは素晴らしかったです。フレッジと同様に8番であり、補完性という点では疑問符が付くコンビですが、今回のリーズ戦ではより明確に役割分担がなされていました。このぐらい明確にタスクを分けて、連携も成熟していけば大きな問題にはならなそうですね。
④バウト・ヴェフホースト
9番でありながら「点を取る」ということ以外の貢献が目立っているヴェフホーストですが、今回のリーズ戦では新たな役割を担い、抜群の効果を発揮しました。それは10番でのヴェフホースト起用。61分の選手交代で、前線の並びを変更したユナイテッド。最前線にラッシュフォード、2列目は左からガルナチョ、ヴェフホースト、ブルーノの並びとなりました。もともと落ちてポストプレーをこなすヴェフホーストですが、最初から10番のポジションならその頻度は増します。時を同じくしてマルティネスもピッチに投入されましたが、楔のパスが入るようになったのは偶然ではないでしょう。ヴェフホーストのポストプレーで両翼のガルナチョとブルーノは前へ向いて仕掛ける時間が得られます。ヴェフホーストの10番はボール保持時の落ち着きをもたらしました。
Embed from Getty Imagesさらに、ネガトラの場面でもヴェふホーストの10番起用は効力を発揮。85分にガルナチョの得点で2点目を奪いますが、この時はフレッジとヴェフホーストでマッケニーからボールを奪い、ヴェフホーストがガルナチョへスルーパスを出しました。61分の選手交代でフレッジは明確にボランチにポジションを下げており、フレッジの担っていた高い位置でのネガトラをヴェフホーストが任されることになりました。プレスを得意とするヴェフホーストには打ってつけの役割だったということでしょう。なお、テン・ハーグ監督は咄嗟の思い付きではなく、オランダ時代に10番でのプレーが可能である事を認識していたそうです。テン・ハーグ監督はこの試合だけでもショーにCBとSB、ラッシュフォードに左ウィングとCF、ブルーノに10番と右ウィング、そしてヴェフホーストに9番と10番というように複数の選手に複数ポジションでプレーさせています。ポジションを入替え、相手を混乱させるというのはテン・ハーグ監督の目指すスタイルの1つですが、また新たなオプションが誕生したことになります。
⑤マーカス・ラッシュフォード
最後はラッシュフォード。前半は左ウィングで突破の機会を伺っていましたが、チームのボール進行が十分ではなく、なかなかチャンスが巡ってきませんでした。この試合でもラッシュフォードが輝いたのはトップにポジションを変えた61分以降。バックライン裏を狙い続けたラッシュフォードは80分にショーのクロスをヘディングで合わせてチームに先制点をもたらしました。実はこの試合ラッシュフォードはこの1本しかシュートを放っていません(90分のシュートはオフサイド判定)。キーパスは1本出していますが、ブロックされたボールがブルーノに転がり、ブルーノがシュートを放った偶発的なシーンだけです。リーズ戦のラッシュフォードは決して動きが鋭かったわけでも、得意のスペースを突きまくったわけでもありません。それでもしっかり「ゴール」という結果は手にしました。
Embed from Getty Imagesプレミアリーグ4戦連発、ワールドカップ以降15試合13得点と勢いが止まらないラッシュフォードですが、テン・ハーグのチームの中にあって、戦術的に非常に特異な存在です。チーム全体に課されている守備時のプレー原則はあるにせよ、攻撃時には前線に残ってスペースを突く役割を担っています。これはスールシャール時代から変わらないタスクなのですが、テン・ハーグ監督になってから必要とするスペースが小さくなった印象を受けます。一瞬のスペースを突くことができるようになったので、リーズ戦のようにトップでもゴールを奪えるようになっています。戦術的に特異と書いたのは今のラッシュフォードは戦術的論理性を超越した存在になっているからです。何もないところからゴールを決められるラッシュフォードは世界的名手がそうであるように、どんな戦術でも、どんな選手とプレーしても一瞬の煌めきで試合を決めることができる希有の存在となっています。
👿まとめ
ドローに終わったホームゲームからメンバーとやり方を変えで臨んだアウェイ戦でしたが、思うような効果が得られず前半は苦戦しました。対策が上手くいかなかったわけではないですが、中央と後ろを厚くした分、サイドと前線の迫力がなくなってしまいましたね。しかし後半の選手交代で流れを変え2得点。プランBをしっかり用意、実行し、勝ちに繋げた采配は素晴らしかったと思います。リーズのようなスタイルのハッキリしたチームには戦術が重要になってきますが、配置を変え、選手を変え、ポジションを変え相手の対応項目を増やす戦略は効果的でした。その中で、戦術を超えた存在となっているラッシュフォードの得点で先制。その勢いは止まるところを知りません。
そして、途中出場からゴールを決めたガルナチョ。ホームでは決定機を決められず、ピッチを叩いて悔しがったガルナチョですが、今回は一瞬の加速でエイリングを置き去りにしてシュートもキッチリ決めました。テン・ハーグ監督は「責任」という言葉でガルナチョの姿勢についてコメントしていますが、ガルナチョには「絶対にゴールを決める」という強い意志を感じます。なので時には周りを使わず、自分で行き過ぎるところは確かにあるでしょう。しかし、これがガルナチョであって、彼の長所でもあります。ただその姿勢を貫くのであればチャンスをしっかりものにする責任がある、ということですね。今回はしっかり責任を果たしました。
Embed from Getty Images戦術的柔軟性でも進化を見せたローズダービー。ライバル相手の勝利は格別ですね。
この試合の結果ユナイテッドは3位のままですが、4位ニューカッスルとは5ポイント差、2位シティとは2ポイント差に迫っています。


次の試合はヨーロッパ・リーグ・プレーオフ第1戦 カンプ・ノウでのバルセロナ戦。2月17日(金)2:45キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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