【22-23PL第24節】レスター・シティ戦 テン・ハーグの戦術的修正を見る!【マンチェスター・ユナイテッド】

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こんにちはMasaユナイテッドです。

22-23プレミアリーグ第24節 ホームでレスター・シティと対戦したユナイテッド。試合は前半レスターが右サイドからチャンスを作り、8分にはバーンズが決定的なシュートを放つなどユナイテッドゴールに迫ります。デ・ヘアのセーブなどでなんとか凌いだユナイテッドは25分、ブルーノの素晴らしいアウトサイドパスに抜け出したラッシュフォードがゴールを決めて先制に成功。1点リードでハーフタイムを迎えます。後半、ガルナチョを下げてサンチョを投入したユナイテッドは56分にもラッシュフォードが決めて2-0。61分にはサンチョが決めてリードを広げます。前半は苦労したユナイテッドでしたが、80分には17歳のMF、コビー・マイヌーをプレミアデビューさせる余裕の展開でレスターを3-0で撃破。勝ち点3を獲得しています。

*試合のハイライトはこちら

今回はこの試合の前後半の戦術的な違いを紐解きながら試合を振り返ります前半は危うい展開でしたが、後半見事な修正で快勝しました。一体何が変わったのか。テン・ハーグ監督の戦術的修正を見てみましょう!

以下項目です。

👿ラインナップ

22-23PL24 ユナイテッドvsレスター ラインナップ

①前半の非保持の問題点

中2日での試合は往々にしてアプローチが難しくなるものです。まして、アウェイでのバルセロナ戦という非常に強度の高い試合の後ではなおさら。テン・ハーグ監督はバルセロナ戦からスタメンを5人入替える事でプレー強度や集中力、ユニット単位での組織的動きをリセットしようとしました。そのこともあり、レスター戦の入り自体は決して悪いものではありませんでした。開始から5分間は中盤でボールを回収し続け、ほとんどレスターにボールを触らせない展開で主導権を握ります。しかし5分過ぎにレスターボールになると、そこから10分の間に4本ものシュートを浴びる事になります。特に8分の、中盤でボールを失ってからバーンズにシュートを打たれたシーンは決定機。デ・ヘアのビッグセーブで失点を免れましたが非常に危ない場面を作られています。

*バルサ戦の記事はこちら

ユナイテッドの前半のボール非保持の問題はこの5分間を見ただけでもいくつも見られます。まずは前線のプレス。5分にレスターボールになった時、ラッシュフォードはレスターの左CBファエスにプレスを掛けにいきます。この時のラッシュフォードのプレスはスピード的にも問題なかったのですが、次にボールが出た右CBのソウターに対してはガルナチョが非常に中途半端な立ち位置を取ります。そのために右ワイドに開いたカスターニュにボールが渡り、簡単に前へ運ばれます。同様の形がすぐ直後にもあり、その時はラッシュフォードはガルナチョに怒りのジェスチャーを見せています。レスターはこの1シーンで、ユナイテッドの左サイドの守備に問題がある事を見抜き、立て続けにそちらから攻め込みます。ガルナチョはCBとSB両方を見る必要があり、難しい役割だったのは確かですが、プレスの「強度」と「意志」という面で全く不十分でした。前半で交代させられたのは明らかにこのプレスに問題があったからです。

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さらに中盤と最終ラインのデュエルという面でも十分ではありませんでした。8分のバーンズのシュートのシーンは中央でリンデロフがボールの回収に失敗。周りにフレッジ、ザビッツァーもいましたがバーンズの進行を止められず、その後のイヘアナチョに対してもマルティネスはタイトな守備ができませんでした。リンデロフは、積極的な姿勢で前へ出る守備を何度か見せましたが、デュエルの局面でレスターを上回る事ができず、逆にその裏を突かれるシーンがありました。カバーリングという面でも問題があり、特に左サイドはショーが高い位置で躱されたあとをマルティネスがカバーしきれていないシーンも見られました。このあたりはカゼミーロ不在の影響を感じさせるものでもありますが、前からのプレスの不足により、後方は潰しどころを限定しづらくなっていたこともあります。

②前半の保持の問題点

トランジッションでも問題がありましたが、これはボール保持から非保持に切り替わった瞬間です。最初の5分は切り替えが鋭かったのですが、レスターに攻め込まれた後では失った瞬間にボールウォッチャーになる選手が見られました。というか、ポジショニングが悪かったり選手同士の距離感が遠く、すぐにプレスに行けなかったと表現した方が適切かもしれません。例を挙げると15分のカウンターを受けたシーン。ショーが左サイドからボールを運んだシーンですが、この時も中央でずっとバーンズがフリーになっています。本来ならダロトが見ていないといけないのですが、途中で気付いて慌ててマークに行っています。23分にもガルナチョからボールを奪ったカスターニュを誰も止めにいかずゴールライン付近まで運ばれるシーンがありました。また、44分のシーンでも失ったあと、フレッジとブルーノは反応が鈍く、簡単にマディソンにパスを通されています。

裏を返すように、このポジショニングや距離感の問題はビルドアップの時にも表れる事になります。特に問題となっていたのは中盤です。ショーを高い位置に上げ、バックライン3枚とザビッツァー、フレッジの5枚で組立ますが、4-4-2で陣形を組むレスターの2列目を超えるのに苦労しました。ただユナイテッドはスムーズなビルドアップの為に様々な工夫はしています。ショーやダロトを内側に立たせたり、ザビッツァーとフレッジの上下関係を入替えたり、シンプルにデ・ヘアを使ったりしていますが、受ける選手の立ち位置が悪くパスコースが開いていなかったり、距離が遠く技術的にパスを通すことができなかったりというシーンが散見されました。

前半のパフォーマンスについてテン・ハーグ監督は、「プレーに一貫性がなく、原則やルールに従わなかったために問題が生じた」と言っています。ユナイテッドのプレー原則が何なのか、はっきりと説明している訳ではありませんが、前半に見られた問題の中にあるはずです。恐らくはプレスやネガトラに関することだと思いますし、もっと深く言えば、それらを機能させるためのポジショニングに関してだと思います。監督をして「ひどい」と評価された前半。それでもデ・ヘアの2回の決定機阻止とブルーノの素晴らしいパスからのエース、ラッシュフォードのゴールでリードして前半を終われたのはラッキーだったと言えるでしょう。

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③後半の非保持の修正

後半スタートでガルナチョを下げてサンチョを投入したテン・ハーグ監督。思うようなレベルに達していないチームを立て直すために修正を加えます。サンチョの投入により前線の並びを変更。10番だったヴェフホーストを9番に、ラッシュフォードを左ウィングに、ブルーノを右、サンチョをトップ下に配置します。この変更により、様々な問題が解決されることになります。まず、この変更の主目的である「前線のプレス」から。ヴェフホーストの10番起用はリーズ戦とバルセロナ戦で効果を発揮しました。プレスとターゲットマンとしての役割を担い、攻守の切り替えで重要な働きをしました。レスター戦前半もヴェフホースト自身のパフォーマンスは変わらず素晴らしかったと思います。しかし、ラッシュフォードとガルナチョのプレスが不十分であったためにレスターはビルドアップでソウターとファエスの両CBが自由にプレーできていました。この状況を打開するべく最前線にヴェフホーストを配置しています。この試合でヴェフホーストがプレッシングでどれだけチームに貢献したか、試合をご覧になった方はよくわかるでしょう。最後はチーム皆でヴェフホーストに得点を取らせるためにパスを送りました。それがすべてを物語っていますね。

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プレスに関してはもう一点、後半に変化させたことがあります。59分にフレッジに代えてマクトミネイを投入しましたが、この交代によりユナイテッドはフォーメーションを4-1-4-1に変更。マクトミネイをアンカーに配し、ザビッツァーを1列前へ上げます。これはバルサ戦と同じ方法で、2列目の「4」でハイプレスを掛けやすくするためのものです。ザビッツァーもフレッジ同様に高い位置で運動量豊富に動ける選手。チーム3点目のシーンではザビッツァーがティーレマンスにハイプレスを仕掛けたことでマルティネスがパスカットに成功しています。ザビッツァーは同じく59分にピッチに入ったティーレマンスのマークを担当しましたが、しっかりと仕事をこなしたと思います。

守への切り替えも、後半は良くなりましたが、前線からのプレスが機能したことで後ろの選手が的を絞れるようになったことが大きいです。後半の2点ともボール奪取してからの素早い攻撃で仕留めており、まさに狙い通りの得点でした。また、サンチョは攻撃の選手でありながら守への切り替えもしっかりできており、決してボール奪取できるほどの守備技術はないにせよ、ダロトの上がったスペースを埋める動きも何度か見せるなどチームに貢献する姿勢は評価したい思います。このあたりはガルナチョとの差がハッキリと見えてしまったところでもありますが、ガルナチョには徐々にこういったところもできるようになってほしいですね。

④後半の保持の修正

サンチョの投入により、ボール保持の面でも改善がなされます。サンチョはトップ下から右のIHと主にライン間での仕事を任されてピッチに入りました。前半のレスターはバックラインと中盤の間にスペースができていました。レスターは4-4-2で構えてからCBにプレスを掛け、中盤センターも追従して1列前へプレスを掛けていました。この為にライン間に空間ができるのですが前半のユナイテッドはビルドアップに手こずり、そこまでボールを入れることができませんでした。しかし、スペースを見つけスペースを作ることにも長けたサンチョを入れることでビルドアップのスムーズさとライン間をブルーノやフレッジが使うことの両方を改善させ効果を発揮しました。この試合圧巻のパフォーマンスで2アシストを記録したブルーノですが、サンチョが入ったことによりプレーに余裕が生まれたように感じました。

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ラッシュフォードの2点目はフレッジがマルティネスからの鋭い楔をライン間で受けてから、3点目のサンチョの得点はラッシュフォードがライン間で受けてサンチョに繋いだところから得点しています。また、サンチョの投入により、右サイドのユニットが機能し始めた点も注目すべき点です。サンチョ、ブルーノ、ダロト(その後ワン=ビサカ)の3人は三角形を旋回させることでレスターのマークを混乱させました。前半はほとんど見られなかったユニットとしての機能性が向上したのもサンチョのもたらした効果でしょう。

後半はチーム全体が「正しい」ポジションを取れるようになったことで、ボール保持が安定し、ビルドアップも高い位置からスタートできるようになりました。ユナイテッドの攻撃モードである3-1-6でフォーメーションを作れるようになり、レスターを押し込みます。こうなるとレスターは迂闊にハイプレスを掛けることができなくなるため、マルティネスが起点になることができるようになり、縦パスも通るようになります。後半の2得目はマルティネスの縦パスが起点となっており、フレッジのスルーパスも見事でしたが、マルティネスのパスも完璧なコースとスピードだったと思います。

👿まとめ

かなり危ういパフォーマンスの前半から見事な戦術的修正で終わってみれば3-0の快勝を飾ったレスター戦。選手たちのコンディション、メンタリティ、パフォーマンスの良さもありますが、テン・ハーグ監督の試合中での修正力も好成績を持続できている大きな要因でしょう。前半の戦い振りは反省すべきだったかもしれませんが、後半これだけ挽回できるところを見ると、もう大きく調子を落とすことはないんじゃないかとも思います(まぁ油断は大敵ですが...)。サンチョの投入が呼び水とはなりましたが、個々の選手がギアを上げ、スピードアップし、距離感も良くなったことが大きかったです。

圧巻のパスでチャンスを作ったブルーノ、献身的なプレスで貢献したヴェフホースト、決定的なシュートを止めたデ・ヘア、そしてキャリアハイのゴール記録を24に更新したエースラッシュフォードの4人は全員この試合のMOTMに相応しいです。特にリーズ戦でプレミア通算400試合出場を果たしたデ・ヘアはレスター戦のクリーンシートで、クラブ歴代最多のクリーンシート180回を達成。偉大な先輩GKピーター・シュマイケルに並びました。その記録を自らのセーブで達成して見せたデ・ヘア。前半の2度のスーパーセーブがなければこの試合はより厳しいものになっていたでしょう。記録を更新し、単独トップになる事は間違いないですが、心からおめでとうと言いたいですね。

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この試合の結果ユナイテッドは2位シティに3ポイント差の3位となっています。

22-23PL24 ユナイテッドvsレスター スタッツ
22-23PL24 試合結果

次の試合はヨーロッパリーグ プレーオフ2ndレグ オールド・トラッフォードでのバルセロナ戦。2月24日(金)5:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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