【22-23PL第28節延期分】ブライトン戦に見る来シーズンのユナイテッドの4つの課題

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こんにちはMasaユナイテッドです。

22-23プレミアリーグ第28節(延期分) アウェイ、アメックス・スタジアムでブライトン&ホーヴ・アルビオン(以下ブライトン)と対戦したユナイテッド。試合は開始2分でアントニーに決定機が訪れますが、枠を捉えることができません。対するブライトンも三苫 薫がデ・ヘアの顔面直撃のシュートを放ち悪くない立上りを見せました。ユナイテッドは前半にラッシュフォードやマルシャルにゴールのチャンスがありましたが決められず。0-0で前半を折り返し後半に入るとブライトンがボールを保持し、三苫やダニー・ウェルベックがユナイテッドゴールに襲い掛かります。ユナイテッドはサンチョ、ザビッツァーを投入しますが、ホームチームのゲーム支配は続き、ソリー・マーチやアレクシス・マクアリステルが惜しいシュートを放ちます。アディショナルタイムに入り、ショーがエンシソを倒したとしてファールを取られます。このセットプレーの流れからコーナーキックとなり、このコーナーキックのシーンでVARが介入し、ショーがハンドの判定を受けます。土壇場でPKのチャンスを得たブライトンはマクアリステルが決めて先制。試合はこのプレーで終了し1-0でブライトンが勝利。ユナイテッドは痛恨のノーポイントとなっています。

*試合のハイライトはこちら

今回は、このブライトン戦に見る来シーズンへ向けたユナイテッドの課題を4つ取り上げます!

以下項目です。

👿ラインナップ

22-23PL-28 ブライトンvsユナイテッド

①決定力不足

ブライトン戦終了後、ユナイテッドの今シーズンは残り5試合となりました(リーグ戦)。長かった22-23シーズンも佳境を迎え、今シーズンの総括もそろそろ行っていかなければならない時期です。アウェイ、アメックス・スタジアムで0-0のまま推移し、アディショナルタイムのラストプレーでハンドを取られ、PKで得点を許し敗戦となったブライトン戦。この試合ではユナイテッドが今シーズン、抱え続けた「課題」が凝縮されているように感じました。そこで、今回はブライトン戦に見るユナイテッドの課題を4つにまとめて試合を振り返りたいと思います。

まず最初の課題は「決定力不足」です。

ブライトン戦、開始2分でアントニーが決定機を迎えますが決められず、26分カゼミーロ、28分のラッシュフォード、39分のマルシャルなど多くの得点チャンスがありました。しかし、この前半にあった決定機をどれも仕留めることができず、後半はブライトンのポゼッションに防戦一方の展開となりました。最終的なゴール期待値(xG)はブライトン2.10、ユナイテッドが1.32となっています。ブライトンも三苫やウェルベックなどが決定機を逸していますが、ユナイテッドは少なくとも1点は取れていないといけなかったということ。前半に得点できていれば試合の流れは変わっていた可能性も大いにあるでしょう。と、今シーズンはこれと同様の事は何度も書いてきました。攻撃に関しては機能している試合も多く、決して攻めあぐねているわけではありません。ブルーノ、ラッシュフォード、アントニー、サンチョ、マルシャルなど能力の高い選手たちが魅惑のアタックを見せ、相手ディフェンスを切り崩すシーンは明らかに昨シーズンより増えました。にも拘わらずフィニッシュが決まらない...。そういった試合が多かったのが今シーズンの印象です。

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今シーズンのユナイテッドのゴール期待値は58.22となっています。これは全20チーム中6位の数字です。テーブルとの比較で言うと5位リバプール(72.09)と6位ブライトン(65.92)の2チームがユナイテッドより上位にいます。この期待値58.22に対して実際の得点は499.22分の得点を逃しているという結果です。このユナイテッドの9.22という点数以上に得点を逃しているチームは、13.27のチェルシーのと13.92のエバートンの2チームだけ。チームが崩壊している現在12位のチェルシーと、降格圏の19位に沈むエバートンしかユナイテッドより悪い決定率を示すチームはないということです。もちろん、この現状をテン・ハーグ監督は把握しており、来シーズンに向けて新たなストライカーの獲得は絶対に必要な要素だと認識しています。とは言え今シーズン、得点という点ではワールドカップ以降のラッシュフォードの爆発に助けられた部分も非常に大きかったと思います。ゴールを期待されながらもそれに応えられていないマルシャルやヴェフホースト(ローン延長はなさそうですが)を始め、アントニー、サンチョ、ブルーノなども含めた攻撃陣全体の改善は必ず必要になりますね。

②プレス構造

2つ目の課題は「プレス構造」です。

これに関しては、やや評価が難しい面もありますが、個人的には上位陣、特にシティやアーセナル、リバプールなどに比べてプレスの構造に関して「欠陥」が見られるという意味で課題と捉えています。ブライトン戦のユナイテッドのプレスの形は、ブライトンのCBに対してマルシャルがどちらかのサイドへボールを誘導し、ブライトンのボランチの2人、ギルモアにはブルーノが、マクアリステルにはフレッジがマンマークで対応。落ちて受けに来るウェルベックにはショーが、エンシソにはカゼミーロ、もしくはリンデロフが付く形の「中央マンマーク構造」で対応しています。ビルドアップに長けたブライトンに対してこのような形でプレスを掛けるのは悪くないのですが、ユナイテッドのプレス構造の欠陥は相手サイドバックに対してのプレスが弱くなるという点です。これは相手がどのチームであっても見られますが、ハーフスペースで構えて相手CBとSBの両方を見なければならないウィンガーへの負担が大きく、またプレスの上手くないラッシュフォードなどはほとんど相手に「圧」を掛けられていないこともしばしばです。

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ブライトンは両サイドバックのエストゥピナンとカイセドがタッチライン際に大きく開いた立ち位置を取った場合、サイドバックにボールを出されるとユナイテッドのプレスは間に合わなくなります。かと言ってサイドバック近くに構えてしまうと、相手CB(ダンクやウェブスター)はフリーとなり簡単にボールを運んで中央を突破できてしまいます。また、ユナイテッドのサイドバック(ワン=ビサカ、ダロト)が相手のサイドバック(エストゥピナン、カイセド)までプレスを掛けることはほとんどなく、1試合を通して一度あるかないかぐらいです。単純に上下動が激しくなりますし、その分のスライド守備が必要になりますが、CB(リンデロフ、ショー)がスライドした場合、落ちて受ける相手フォワード(ウェルベック、エンシソ)の動きには対応できなくなり中央を通されるでしょう。このように、ウィンガーのところで生じる「歪」はなかなか解消できず、特にボール保持に長けたチームに対してはプレスの場面で後手を踏むことになっているのがユナイテッドのプレス構造です。

シティやアーセナル、リバプールなどはこの「歪」を解消するためにもっとシステマチックな動きを習得しています。単純にウィンガーがSBへのパスコースを巧みに消しながらCBにプレスを掛けることもできますし、トップの選手が出しどころを限定し、SBが相手のSBまでプレスに行くシーンも度々あります。縦のスライドも横のスライドもスムーズで、マンマークとゾーンで対応すべき場面のプレー原則がしっかり落とし込まれていることが伺えます。今シーズンのユナイテッドは「マンマーク」の対応に寄っているのは間違いなく、例えばブライトン戦の前半はこのマンマーク的プレスで整理できていましたが、後半になり間間(あいだあいだ)にブライトンの選手が入り込むようになっていくと認知が追いつかなくなっていき、ボールを奪還できなくなりました。今シーズンのテン・ハーグ・スタイルで「ポゼッション」を掲げながらボール保持に長けたチームに対しては「トランジッション」戦術で「しか」戦えないのはこのプレス構造の欠陥の為です。しかし、まだテン・ハーグ就任1年目。来シーズンはこれを課題と捉え改善、進歩してくれるでしょう。

③対ハイプレス

3つ目の課題は「対ハイプレス」です。

主に相手がハイプレスを仕掛けてきた場合の、後方からの繋ぎにユナイテッドは小さくない問題を抱えています。開幕のブライトン戦やブレントフォード戦を始め、最近では敗退となったヨーロッパリーグ、アウェイでのセビージャ戦では後方の繋ぎのミスから失点しています。今回のブライトン戦でも60分と76分に後方の繋ぎで危ないシーンがありました。60分の方は、単純なダロトのコントロールミスからブオナノッテに奪われそうになったシーンですが、問題なのはやはり76分の方でしょう。ゴールキックを、デ・ヘアがカゼミーロに付けますがこれをカイセドが狙っておりボールを奪われゴール前でピンチを招きました。このシーンの前に選手交代があり、配信映像では直前の選手の立ち位置が映っていないため状況が把握しにくいのですが、ショーとリンデロフはいつものようにボックス幅に開き、ウンダブがデ・ヘアにプレスを掛けます。エンシソはリンデロフの方を切っているように見え、降りて受けようとするブルーノには前に残っていたダンクが付いています。見切れていますが恐らくワン=ビサカには三苫が、ダロトにはマーチが付いており、入ったばかりのザビッツァーはマクアリステルがマークに付いています。確かにカゼミーロがフリーのように見えたのかもしれませんが、中央へのパスは常にリスクが伴います。このシーンの後でカゼミーロが指さしているようにこの場合はショー(もしくはダロト)に出すのが正解です。

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ユナイテッドの後方からのビルドアップは様々な形があり、偽SB的にサイドバックをボランチに立たせたり、3CBにして組み立てたり、エリクセンやブルーノが下りたりする方法があります。また、相手がハイプレスではなくミドルプレスを採用している場合には比較的スムーズにボールを前進させ、ワンタッチやダイレクトのパスで上手くボール保持できています。しかし、ハイプレスが来ると途端に不安定になり、最悪は失点に繋がるようなミスになることもあります。これに関しては後方の数的優位の作り方とポジショニング、個人の能力と自信が大きく関係しているでしょう。また、少し穿った見方をすれば、②で取り上げたように、そもそもユナイテッドがハイプレスが上手くないために、トレーニングで十分な難易度のビルドアップ練習ができていない可能性もあります。さらに組織的な練度の問題という側面と、やはり起点となるデ・ヘアのパス能力が問題となっていることも否定できません。

ブライトン戦でのデ・ヘアのパス成功率は21/41本で51%でしたが、ブライトンキーパー、スティールの成功率は39/44で87%でした。これはもちろん、スティールのパスがほぼ自陣へのパスであるのに対してデ・ヘアは半分ぐらいは長いボールを蹴っているために起こっています。しかしデ・ヘアのパスの判断は決して優れているとは言い難く、76分のシーンのような「間違った判断」は頻繁に見られます。同時に単純に狙ったところに蹴れていないミスパスもあり、正直デ・ヘアのパス能力のために後方からの繋ぎが安定感に欠ける要因の1つとなっています。これを改善するにはデ・ヘアができるようになるか、できる選手に代えるしかありません。現在の報道では来シーズンの守護神交代はありません。来シーズンもデ・ヘアがゴールマウスを守ります。であるならば、デ・ヘアでもできる形のビルドアップを突き詰めるしかないということです。まずは「間違った判断」を無くすだけでも効果があるでしょう。これは今シーズンも取り組んできたと思いますが、来シーズンの大きな課題の1つであることも事実です。

④アウェイでの戦績

最後は「アウェイでの戦績」です。

これも何度も言われてきましたが、今シーズンのユナイテッドは対上位9チームのアウェイ戦8試合で1分け7敗を喫しています。その8試合でユナイテッドは8得点28失点しており、そのうち5試合で3失点以上を喫しています。この中にはシティ戦の6失点、リバプール戦の7失点が含まれるのも確かですが、来シーズン、上位陣との対戦でやるべきことがあるのは間違いないでしょう。アウェイ全体の成績を見てもゴール期待値は24.72で6位、被ゴール期待値は28.32で10位の成績となります。これに対して実際は21得点32失点なので、攻守ともに期待値よりも悪い成績となっていることがわかります。ホームでできてアウェイでできないというのは、一概に「これが原因!」と断定できないので難しいのですが、今回のブライトン戦でも見てきたように①、②、③が要因の1つとなっているのは間違いないでしょう。これに加えてアウェイの雰囲気に飲まれてしまいがちな「メンタリティ」も要因として挙げられます。

ブライトン戦は、前半のチャンスを決められず、後半はボール保持がままならず、加えて思うように笛を吹いてもらえないジャッジもありチーム全体で「イライラ」が募っていきます。69分のアントニーの暴走やショーのエンシソに対するフラストレーションは確かに勝利に対する情熱の表れと捉えることもできますが、上手くいっていない事を如実に表しており、ゲームをコントロールできていない証拠でもあります。アウェイでの戦いで消極的過ぎるのも問題ですが、冷静に戦えないのも問題です。サッカーは相手のスタイルやその日の戦術、メンタリティの影響も受けるので不確定要素を事前に把握するのは難しいですが、アウェイでの戦績を安定させるにはまず自分たちのプレースタイルやゲームプラン、プレー原則や規則に従ってプレーすることが重要です。自分たちのスタイルに自信があれば、そう大きく崩れる事はなくなりますし、崩れたとしてもすぐに戻すことができるはずです。

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こういった点も、まだテン・ハーグ体制1年目であり、プレースタイルに関しても昨シーズンまで紆余曲折を繰り返してきた影響があるのは間違いありません。スカッドの見直しや修正を繰り返し徐々に改善していくしかないのですが、来シーズン以降このままのトランジッション戦術でいくのか、よりポゼッションに特化したスタイルにシフトしていくのかも注目ポイントだと思います。今シーズンの成績からも、やはりポゼッションに特化したチームとの対戦で苦戦する傾向があるのは間違いないでしょう。トランジッションが上手くいき、しっかりフィニッシュできて得点を奪えれば問題ないですが、それが上手く機能しない時のゲームコントロールという点では自分たちのボール保持という面も強化する必要があります。現状はシティやアーセナル、リバプール、そしてブライトンに対して主導権を奪われると取り戻すことが困難です。個人的にはポゼッションスタイルを追求していってほしいという思いがありますね。

👿まとめ

アディショナルタイムのショーのハンドによりPKを献上し、勝ち点1が手からすり抜けていったブライトン戦。ブライトンにシーズンダブルを喰らい、FAカップのリベンジを果たされる結果となりました。ショーのハンドは愚かな行為でしたが、それまでの守備陣のパフォーマンスは前回絶賛されたヴィラ戦同様に良かったと思います。それよりもショーが指摘している通り、チャンスをものにできない攻撃陣に批判が集まるのは仕方ないといった感想です。まぁ、これも何度も書いているので繰り返しになりますが、フィニッシュの精度を上げるための工夫や崩しの形が必要でしょう。ジャッジに関しても、テン・ハーグ監督は苦言を呈しており、危険なタックルがファールを取られない一方で、アディショナルタイムの失点のキッカケとなったショーとエンシソの接触をファールと判定するなど一貫性に欠けたのも事実です。しかし、気になったのはユナイテッドの選手は何でもない接触でも倒れ、ファールのアピールをしていたこと。特にラッシュフォードはかなり目につきましたが、これはコンディションが良くない時の兆候でもあり、この段階でのエースの不調は少し不安要素でもあります。またここ数戦、途中出場する選手達もゲームに影響力を発揮できていないのも気になります。76分に入ったサンチョとザビッツァーはわずかに9回のボールタッチしかなく、84分にはいったヴェフホーストも7回のみでした。ブライトンがボールを握っていたこともありますが、様々なカードがありながら交代で流れを変えられなかったことも敗戦に繋がった要因の1つでしょう。

*前節の記事はこちら

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今回は来シーズンへ向けての課題をまとめました。これまでも何度も指摘してきたことなので、目新しいことは何もないですが、ブライトン戦でもはっきりと表れていましたね。本当はこの4つに「セットプレーの守備」も加えた5つが来シーズンへの課題となりますが、どれも今シーズン中の改善は難しそうなので来シーズンの改善を期待したいと思います。この敗戦により、4位の座に「暗雲」が立ち込めたと書いているメディアもありますが、残り5試合で9ポイントという事実は変わらず、今だ出場権はユナイテッドの手の中にあります。まずは日曜日のハマーズ戦にしっかり勝つ必要がありますが、それ以降は日程に余裕ができることも疲労回復という意味でユナイテッドにとっては追い風です。何としてもCL出場権確保。至上命題です。

この試合の結果ユナイテッドは63ポイントで4位のまま。5位リバプールとは4ポイント差となっています。

22-23PL-28 ブライトンvsユナイテッド スタッツ
22-23PL-28 試合結果

次節35節は、ロンドン・スタジアムでのウェスト・ハム・ユナイテッド戦。5月8日(月)3:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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