こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23プレミアリーグ第29節 アウェイ、セント・ジェームズ・パークでニューカッスル・ユナイテッド(以下ニューカッスル)と対戦したマンチェスター・ユナイテッド(以下ユナイテッド)。試合は開始からホームのニューカスルが積極的なプレーでユナイテッドゴールに迫ります。16分にはアレクサンダー・イサクとジョー・ウィロックの連続シュートを受けますが、デ・ヘアが辛うじてセーブし失点を回避します。ユナイテッドはほとんど見せ場を作れず後半へ。62分にはサンチョとマルシャルを投入したユナイテッドですが、65分にウィロックに決められ先制を許します。勢いに乗るニューカッスルは76分にもジョエリントンとファビアン・ショアの連続シュートでユナイテッドゴールに襲い掛かりますが、バーとポストに救われ失点は回避します。82分にフレッジ、ペリストリ、リンデロフと投入したユナイテッドですが、88分にセットプレーからカラム・ウィルソンに決められ失点。ユナイテッドはチャンスメイクすらほとんどできずに2-0で完敗。勝ち点を落とす結果に。リーグテーブルでも5位に後退しています。
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今回は、この試合で見られたユナイテッドの4つの弱点について考察します!
以下項目です。
👿ラインナップ

①中盤のクオリティ
27節、セインツ戦での退場を受けて中盤の要であるカゼミーロは4試合の出場停止となりました。ニューカッスル戦はその2試合目となり、インターナショナル・マッチウィーク前のFAカップ フラム戦同様にカゼミーロ不在の影響をモロに受ける形となりました。中盤の構成はザビッツァー、マクトミネイ、ブルーノの3人でニューカッスルの中盤の3人、ギマランイス、ロングスタッフ、ウィロックに対抗する形を選択。ボール非保持では、ザビッツァー、ブルーノが降りてビルドアップを助けることが多く、さらにショーをボランチの位置にポジショニングさせることでプレスを回避し、ボールを前進させる狙いでした。
マクトミネイは、アンカーとなるギマランイスを徹底してマンマークするタスクを与えられていたため、実質トップ下のようなポジションとなり、ザビッツァー、ブルーノもまたそれぞれウィロックとロングスタッフとマッチアップする場面が多くなりました。ニューカッスル側もマンツーマンを意識したところはあると思いますが、これは、カゼミーロ不在時によく見られる形で、中盤をマンツーマン気味にすることで穴を開けないことを目的としています。タスク的にもシンプルになり、責任の所在も明確になる一方で、1対1で負けてしまうとチームのバランスを失いやすいというデメリットがあるやり方です。ニューカッスル戦はフラム戦同様に、カゼミーロ不在の穴を埋めることはできなかったというのが結論です。
Embed from Getty Images前回の記事で指摘したように、フィルターとしても攻守の繋役としても中盤は機能しておらず、代表戦により修正の時間が取れなかったとしても、不十分な対策だったと言わざるを得ない結果となりました。後半はマクトミネイをボランチに下げたり、ブルーノをボランチに下ろしたり試行錯誤したのは認めますが、インテンシティと運動量、そしてエネルギーの面でもニューカッスルの中盤の方が上回っており、ユナイテッドの中盤はチームが攻守において機能不全に陥った大きな要因となりました。結果論的なところはありますが、ギマランイスにマークを付けるならフレッジの方が適任だったでしょう。マクトミネイがマンマークに付いていながらギマランイスは90%のパス成功率とキーパス3本を記録しています。
*前回の記事はこちら
②クロス対応
クロスからのヘディングで2失点を喫したユナイテッド。65分の1失点目は左右に振られて、最後はサン=マクシマンのクラスにウィロックが合わせ、88分の2失点目はセットプレーで、トリッピアーのボールにウィルソンが頭で合わせました。それ以外でも前半から右のトリッピアー、マーフィーがゴール前へクロスを上げるシーンや左のサン=マクシマンの仕掛けからの横パスでチャンスを作るなど、ユナイテッドを左右に揺さぶる攻撃を見せたニューカッスル。以前からクロスの対応に難のあるユナイテッドの弱点を突く意図的なものだったと思います。
Embed from Getty Images1つ1つのシーンを見ればシチュエーションは微妙に違うものの、クロスや横パスを簡単に許している点や、死角からの飛び出しに対してのケア不足、バイタルをガラ空きにしている点、全員がボールウォッチャーになりがちなところ、そしてデ・ヘアの守備範囲の狭さなどは共通して見られる現象です。ニューカッスルは前半、右サイドを支配しますが、トリッピアーのオーバーラップに対するケアが薄く、ショーはマーフィーとトリッピアー2人に対応する必要に迫られました。ラッシュフォードが守備に戻らないのはいつものことで、チームとしても戦術的にそれで良しとしているところがありますが、やはりここでも影響したのはカゼミーロの不在です。こういう場面でサイドまでカバーしてくれるのがカゼミーロです。
右サイドはサン=マクシマンの仕掛けに対応したダロトがズルズル後退守備をするのでバックライン全体が下り、最終的に空いたバイタルを使われるシーンが頻繁にありました。確かにサン=マクシマンを止めるのは容易な仕事ではありませんが、ダロトの守備に関してもアンカーの選手のサポートがなかったことも大きく影響したと思います。さらに、デ・ヘアのクロス対応も度々議論になるように、他クラブの正ゴールキーパーと比べて見劣りする部分ではあります。コーナーや2失点目のようなゴール前へのボールに対して基本的にデ・ヘアはゴールライン上に留まる傾向にあります。前へ出てパンチングという選択をほとんどしないというのは分析されているはずですし、ニューカッスルはそれも意図して狙っていた可能性すらあるでしょう。デ・ヘアの守備範囲の狭さはセットプレーやゴール前へのクロスに対する守備が危うくなる要因の一つとなっています。
③サイドのボール前進
ニューカッスル戦後のテン・ハーグ監督のコメントで、ショーとラッシュフォードの左サイドが機能しなかったことについて言及していました。ビルドアップにおいて、サイドからのボール進行が上手くいかなかった要因はいくつかあり、複数の選手が絡んでいるので単純にショーとラッシュフォードのせいと言うことはできません。ただ傾向として、ユナイテッドのビルドアップが上手くいかない時はスタート位置が低く、相手がプレスを掛けてくる時に多く見られます。バックラインのボール保持に引っ張られて前線の選手もポジションが低くなり、仮にフォワードの選手にボールを繋いでも単独で長い距離を運ぶ必要が出てくるので突破が難しくなります。ユナイテッドのビルドアップ及びポゼッションが上手くいっていない時は、サイドバックのポジションが低いのですぐわかると思いますが、ニューカッスル戦の前半はまさにこの状態でした。
ニューカッスル戦のビルドアップはダロト(CB化)、ヴァラン、マルティネスの3枚+ザビッツァー、ショー(ボランチ化)のボランチの5枚をベースとしていますが、この形ではサイドにウィンガーしかいないことになります。これまでも、マラシアなどサイドバックの選手を偽サイドバック的にボランチの位置に立たせたことはありますが、ニューカッスル戦のショーの立ち位置はカゼミーロ不在を補うためのテン・ハーグ監督のアイデアだったと推測できます。しかし、前半の両サイドバックの位置では大外のレーンで数的不利が続くためにボール・プログレッシブが上手くいきませんでした。中央で数的優位を作り、保持を安定させるはずでしたが、ニューカッスルの鋭いプレスと先述したように中盤のマッチアップで劣勢に立たされたので意図した様にはいかなかったということでしょう。ラッシュフォードとアントニーのパフォーマンスが良くなかったというよりは、2人が良い形でボールを受けとれなかったというのがニューカッスル戦の印象です。後半はマクトミネイを1列下げてダブルボランチに変更し、ショーのインナーレーンに入る動きは少なくなりました。加えて左サイドにサンチョを投入し、形的には改善されたのが後半です。
Embed from Getty Imagesちなみにビルドアップに関しては、単純にキーパーを効果的に使うべきです。簡単に数的優位を作れるのはもちろん、プレス回避としても有効です。しかし、デ・ヘアは技術的にも、心理的にもビルドアップに関与したがりません。ニューカッスル戦も、素晴らしいセービングで幾度となくピンチを救いましたが、来シーズンもデ・ヘアを正ゴールキーパーとするなら、カゼミーロのように攻守をリンクさせられる選手をもう1人獲得する必要があります。そうでないとビルドアップとポゼッションの安定は難しいのではないかと思います。プレスを独力で回避でき、ボールを持ち運べる、そんな選手が必要です。
④アウェイでのメンタリティ
今シーズン、アウェイでの6敗目となったニューカッスル戦。試合後にテン・ハーグ監督が
相手の決意、情熱、気持ちに敵わなかったのは意外だった。セント・ジェームズ・パークに行けば、特に(カラバオ)カップで優勝した後は、どういう試合になるかわかっているはずだ。ビッグゲームに勝ちたいのであれば、成熟していなければならない。ニューカッスルを甘く見ていたとは思わない。彼らはとても熱心なので、自分たちのレベル以上のプレーをするが、それは予想できたことだ。彼らはこの試合に勝つと決意していたが、自分たちもそれに合わせ、最初から状況を把握していなければならない。私たちは相手のファイナルサードに入る回数が少なかったが、相手は簡単に私たちのボックスに入ることができた。我々はもっともっと良くならないといけない。
ユナイテッド公式
と語ったように、ニューカッスルの選手達のモチベーションはユナイテッドの選手のそれを上回っていたのは確実です。もちろんホームゲームだということもありますが、カラバオのリベンジ、そしてCL権争いを繰り広げるチームが相手とあって非常に気持ちが入っていました。当然ですが、こういった精神面は球際やプレーのインテンシティに影響します。いくら相対的なクオリティで上回っていようとも関係ありません。気持ちで勝った方にボールは転がっていきます。代表戦の後のアウェイ戦というのは難しいところがあるのかもしれませんがそれは言い訳に過ぎず、ショーが語ったように「この結果は受け入れられない」というのが多くのサポーターの感想でしょう。
Embed from Getty Imagesいずれにせよ、アウェイでのメンタル的な準備の改善は必須です。これの改善なくしてチャンピオン争いなどは夢のまた夢でしょう。Sky Sportsが今シーズンのアウェイでのディフェンスフォームをまとめています。シティとリバプールに合わせて13点取られているのは確かですが、それを差し引いても、とても4位に入れる成績ではありません。テン・ハーグ体制1年目でタイトルを獲得し、まだ2つの大会でタイトルを狙えるというのも事実で、ホームでは圧倒的な強さを見せるようになりチームは明らかに進歩しています。しかし、今シーズン残り、そして来シーズンへの課題として、この「ジキルとハイド」的な性質はなくしていかなければなりませんね。
Man Utd are struggling for defensive stability on the road this season 😬
— Sky Sports Premier League (@SkySportsPL) April 2, 2023
Can they turn it around at St James' Park this Super Sunday? 🏟️ pic.twitter.com/UXcjFTs40v
👿まとめ
まさに「完敗」となったニューカッスル戦。ニューカッスルのシュート数は22本に対してユナイテッドはわずかに6本。枠内シュートに至ってはたったの1本という衝撃的なスタッツも記録しています。立ち上がりから終始ニューカッスルペースで試合は進み、前半のユナイテッドの最大のチャンスは12分のヴェフホーストのシュートだけでした。後半に入り、ポゼッション自体は改善されますが、サンチョとマルシャルを投入した直後に失点。さらにセットプレーから88分にも失点と、勢いを落とさなかったホームチームに軍配が上がりました。後半のユナイテッド最大のチャンスは81分のマルシャルのシュートぐらいで、まったく良いところなく敗れています。
Embed from Getty Imagesカゼミーロ不在の影響はこの試合も大きく、守備面だけでなくビルドアップやボールプログレッシブの面でも機能不全に陥っています。今シーズン、これまで様々な面で改善してきたのも確かですが、ニューカッスル戦で露呈した4つの弱点は、未だに根本解決に至っていない項目でもあります。中でもアウェイ戦でのメンタリティは結果に直結しているだけに早急に改善すべきでしょう。テン・ハーグ監督は数か月前に、選手のメンタル面を強化するためスポーツ心理学者のRainier Koers氏を雇っています。この人物の詳細はわかりませんが、選手たちは彼とのセッションを増やすように言われているようです。今は、徐々に効果が表れる事を期待して待ちましょう。
この試合の結果、ユナイテッドは5位に後退。3位ニューカッスル、4位スパーズとは同勝ち点ですが得失点差で下位に沈んでいます。


次の試合はプレミアリーグ第25節(延期分) オールド・トラッフォードでのブレントフォード戦。4月6日(木)4:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!

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