こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23プレミアリーグ第31節 アウェイ、ザ・シティ・グラウンドでノッディンガム・フォレストと対戦したユナイテッド。試合は開始1分でサンチョが決定機を迎える素晴らしい立ち上がりをユナイテッドが見せます。ユナイテッドはテンポの良いビルドアップからブルーノを中心に鋭い攻撃を連発。しかし、フォレストキーパー、ケイラー・ナバスが好守を見せ、立ちはだかりますます。フォレストもセットプレーからフィジカルを活かしてユナイテッドゴールに迫りますが得点には至りません。32分、ユナイテッドはマルシャルが高い位置でボールを奪いブルーノへ。これをブルーノがマルシャルへスルーパスで返しマルシャルがシュート。ナバスが阻みますがこぼれ球にアントニーが詰めて押し込み先制に成功します。後半に入り両者決定機を活かせない状態が続きます。ユナイテッドはブルーノが再三惜しいシュートを放ちますがナバスの牙城を崩し切れません。しかし76分、後方からのビルドアップからアントニーがバイタルへ侵入。裏へのランニングでボックス内へ入ったダロトへスルーパス。これをダロトが決めて追加点を奪うことに成功します。その後フォレストも前へ出ますがユナイテッド守備陣がしっかり締めて試合終了。ユナイテッドが0-2で勝利し勝ち点3を獲得しています。
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今回はこの試合の戦術ポイント3つを解説し、振り返ります!
以下項目です。
👿ラインナップ

①ビルドアップ
試合直前のウォームアップ中にザビッツァーが鼠蹊部を負傷。急遽エリクセンが先発となったフォレスト戦。中盤の構成は久し振りにカゼミーロ、エリクセン、ブルーノというメンバーとなりました。一方で、バックラインはショー、ヴァラン、マルティネスというレギュラー3人を負傷で欠き、マラシアも理由は不明ですが不在となったため、右からワン=ビサカ 、マグワイア、リンデロフ、ダロトという並びに。普段ほぼやったことのないメンバー構成でどのようなパフォーマンスとなるのかも注目の一戦となりました。しかし、不安をよそに開始から際立ったのが後方からのビルドアップ。非常に多彩なパターンを駆使してボールを前進させるシーンが見られました。ユナイテッドのビルドアップの基本は後方を3-2もしくは3-1で行います。通常であればヴァラン、マルティネスの2CBに右サイドバックのワン=ビサカ、もしくはダロトがCBのラインまで下がり「3」を形成。中盤はダブルボランチを並べるか、対戦相手の布陣によってはアンカー1人がビルドアップに関与します。
フォレスト戦では後方の「3」を「2」にします。マグワイアとリンデロフは距離を取って中央レーンを開け、そこにアンカーのカゼミーロがポジショニングします。しかし、カゼミーロにはギブス=ホワイトがマンマークに付いているので、積極的にカゼミーロを経由することはしませんでした。特徴的だったのは、左サイドバックに入ったダロトをボランチの位置に入り込ませ偽SBとしたことです。これまでも、ダロトやマラシア、ショーなどが一時的にインナーレーンに立ち、パスレーンを開けることはしてきましたが、フォレスト戦は明確な「決まり」としてダロトを内側に立たせました。これは、やはりバックラインに左利きの選手が1人もいなかったことと関係しています。ビルドアップ時の「パスの角度」を作り出すことがしにくくなるために、ダロトを中央に立たせ中央レーンでのパスコースを増やす意図があったと思います。実際、デ・ヘアは中央にいるダロトにパスを出すシーンがありましたが、視覚的にも中央にパスコースがあるというのはキーパーからしてもやり易いと思います。
Embed from Getty Imagesそれだけでなく、エリクセンが左サイドに出てボールを受けたり(いわゆるクロース・ロール)、ワン=ビサカが中央レーンに入る形も見られました。さらに特徴的だったのは、リンデロフとマグワイアをフラットに並べず、高さを段違いにしてスペースを作る動きも頻繁に見られました。このCBの段違いは、ヴァラン、マルティネスのコンビも時折見せますが、特にリンデロフは意識してラインを押し上げてサイドにスペースを作っていた印象です。また、このビルドアップのやり方はテン・ハーグ監督がアヤックス時代にも度々見せていた形です。興味深いのは、ヴァラン、マルティネスの時はある程度個人の判断に任せているように見えますが、マグワイア、リンデロフにはしっかりプレー原則として準備したように見えることです。そしてその結果、フォレスト戦のビルドアップは今シーズンの中でもトップ3に入る素晴らしいものとなりました。もちろん、フォレストの両WBをアントニー、サンチョが大外に張ることでピン止めし、ダロト、ワン=ビサカ、ブルーノ、エリクセンのうち2人は常に浮いた状態にできたことも大きいです。極端な見方をすれば、フォレストの前線3人に対してユナイテッドはディフェンシブサードでデ・ヘア、マグワイア、リンデロフ、ダロト、カゼミ―ロ、ワン=ビサカの6人でボール保持することも可能だったということです。
Embed from Getty Images②ディフェンス
ビルドアップで素晴らしい連携を見せたバックラインですが、守備面でも最終的にクリーンシートを達成し、主力不在の穴を埋めてみせました。「守備」という面でも、テン・ハーグ監督は通常とは少し違うアプローチを採用しました。フォレスト戦のユナイテッドのディフェンス・アクション・ラインは今シーズンで2番目に高い49.5(m)を記録しています。ヴァラン、マルティネスに比べると、守備面で不安がある事は否定できないマグワイアとリンデロフのコンビですが、テン・ハーグ監督はこの2人に対して積極的な前へ出る守備をするようにさせました。開始3分でマグワイアは上手く対応できずアウォニーをラグビータックルで倒しイエローを貰いますが、時間が経つにつれ落ち着きを取り戻していきます。リンデロフもフォレストの縦パスをよく見極めており、パスカットを何度か成功させています。一見すると、ラインを高く設定することはバックライン裏のスペースを使われるリスクがあり、スピードに難のあるマグワイア、リンデロフには向かない戦術のように感じるかもしれません。しかし、単にラインを低くしたディフェンスで上手くいかなかったスールシャール期、もしくはラングニック期を見ても分かる通りポイントとなるのはラインを高く設定できる前からの守備の方です。
Embed from Getty Imagesフォレスト戦はこの前からの守備が素晴らしかったですね。そしてこれは明らかに、テン・ハーグ監督がこの試合の最重要テーマとしたことでしょう。この前提がなければこの高いライン設定を実行するのは不可能だからです。敵陣でボールを失った時の反応は全員鋭く、選手間の距離も良いために素早くショートカウンターを打つこともできていました。32分のアントニーのゴールは、マルシャルがボールをロストした後に、そのまま追いかけ奪い返したところから生まれましたが、高い位置でのネガトラが機能したことがポゼッションの安定につながり、ラインの高さにも繋がったのは間違いありませんね。ヴァラン、マルティネスの不在の怪我の功名と言って良いのか分かりませんが、全員が積極的な守備を行うことで、マグワイア、リンデロフに掛かる負担を軽減したという印象です。テン・ハーグ監督は、とにかくボールを自陣のゴールから遠ざけるように戦術プランを練りました。そしてそれは成功したと言えるでしょう。
しかしながら、前半を中心にセットプレーの守備ではヒヤヒヤする場面が続いたのも事実。フォレストはコーナーやロングスローから空中デュエルで勝利し、あわやとシーンを作り出しましたが、デ・ヘアの守備範囲問題と共に、セットプレーの守備には相変わらず課題が見られたのも確かです。今シーズンのユナイテッドは、セットプレーから打たれたシュートは134本でワースト2位(プレミア)。xGは12.05で4番目に悪い数字です。実際に割られたゴールは9点で真ん中の順位ですが、前半フォレストに決められていれば当然違った試合になっていたでしょう。
③オフェンス
オフェンスに関しては、前述したようにビルドアップとネガトラが機能し、アタッキングサードでのボール保持が安定したために、プレミア前節のエバートン戦前半のような素晴らしいアタックが多く見られました。そして、その中心となったのがブルーノです。アタッキングサードでのパス最多の45本、キーパスも最多6本、SCAも最多の10回を記録。シュートも5本打ちますが、枠内シュートはすべてナバスに阻まれました。これだけのスタッツを記録しながらゴールもアシストも付かなかったのは残念ですが、ボールを持った時の判断は完璧に近かったのではないでしょうか?カゼミーロ不在の間、低い位置でのMFとして素晴らしいパフォーマンスを見せましたが、カゼミミーロ、エリクセンという最強の中盤選手と組むことで、ブルーノはのびのびプレーできていた印象です。
*前節エバートン戦の記事はこちら
ウィングの2人、サンチョとアントニーも好パフォーマンスを披露。特に、1ゴール1アシストを記録したアントニーはここ数戦パフォーマンスを上げており、粘り強く仕掛けるプレーはチームに活力を与えています。まだ、判断やスキルが足りないところもありますが、来シーズン以降が楽しみな選手であるのは間違いありません。ダロトのゴールをアシストしたプレーなどは、カットインしてダロトへのスルーパスという珍しい形でした。これはアントニーの成長を物語っていますし、相手に脅威を与えるプレーです。ラッシュフォードが不在となったことでアントニーの存在感が増しているのは偶然ではないと思います。これまでは、結果が出なくてもラッシュフォードという存在がチームを救ってくれましたが、アントニーは「自分が」やらなければならない状況と、責任を負ったという風に見えます。サンチョも、同様に責任感を持つ必要があります。まだ足りませんが、フォレスト戦では積極的に攻撃に関与しました。開始1分のシュートは決めたかったですが、ボールを持ったプレーは流石のスキルを見せています。
Embed from Getty Imagesそして攻撃に関しての戦術的に重要となったのがダロトとワン=ビサカの両サイドバックです。偽SBのポジションでビルドアップに絡み、そこからハーフスペースを駆け上がってゴールを決めたダロトのプレーは新鮮であり、ディフェンダーがこのように攻撃関与できるチームは間違いなく強いと思わせてくれました。ゴールシーン以外でも、チャンネルランの頻度が高く、右サイドよりも左サイドの方がランニングの質が高かったのも驚きを与えてくれました。ワン=ビサカは、冬の時点で構想外扱いされていたのが嘘のように素晴らしいパフォーマンスを続けています。フォレスト戦は特にハーフスペースの侵入が効果的で、右サイドのアントニー、ブルーノとの息もピッタリでした。ボールを失わないドリブルも健在で、何気に攻守に隙のないサイドバックに進化しつつあります。この両サイドバックの攻撃参加は本当にハイレベルでした。
Embed from Getty Images👿まとめ
ヴァラン、マルティネスを欠き、バックラインを大幅に変更して挑んだフォレスト戦。多少心配だったところはありましたが、内容的には完璧と言って良いでしょう。90分を通してボール保持、非保持両面で機能しフォレストを圧倒。試合をしっかりコントロールし続けました。見てきたように、ビルドアップの構造はかなり整理されており、スペースとパスコースを作る動き、相手のマークを引っ張る動きなど非常にハイレベルだったと思います。正直このメンバーでここまでできるとは思ってなかったので(笑)、結構驚いていると同時に、本来テン・ハーグ監督はこのレベルまで落とし込みたかったのではないかとすら思います。
アッキングに関しては、圧巻だったブルーノのパフォーマンスとそれを支えたカゼミーロ、エリクセンは流石のクオリティをしましました。ブルーノ、エリクセン、カゼミーロの3人が出場した試合は未だ無敗だということです。ゴールを挙げたアントニーも素晴らしいパフォーマンスでシーズン終盤に向けて存在感を増しているのは朗報です。しかしながら、チームとしてファイルサードのクオリティに比べてフィニッシュの精度を欠いているのは相変わらずですね。アタッキングサードでの味方を追い越すランニングやチャンネル侵入の頻度からして、もっと得点できたと思いますが、ナバスの好セーブもあり叶いませんでした。このあたりはやはり、来期のストライカー獲得が必要だということを改めて示しています。
Embed from Getty Imagesこの試合の結果ユナイテッドは3位浮上。4位ニューカッスルとは3ポイント差となっています。


次の試合はヨーロッパ・リーグ準々決勝2ndレグ。エスタディオ・ラモン・サンチェス・ピスフアンでのセビージャ戦。4月21日(金)4:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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