【22-23PL13節】チェルシーvsマンチェスター・ユナイテッド システム変化と戦術ポイントを解説!

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こんにちはMasaユナイテッドです。

22-23プレミアリーグ第13節 アウェイ、スタンフォード・ブリッジでチェルシーと対戦したユナイテッド。試合はユナイテッドがポゼッションで上回り、28分にはラッシュフォードがゴール前で決定機を迎えますが、ケパにセーブされ決められません。チェルシーのポッター監督は劣勢の状況を打開すべく36分にククレジャを下げてコバチッチを入れ、システムを4-3-1-2へ変更します。ユナイテッドはその対応に手間取りますが、後半にはしっかり修正。52分にはサンチョを下げてフレッジを投入し、反撃の機会を待ちます。しかし60分にはヴァランがハムストリングを負傷するアクシデントが発生。ヴァランは涙の交代となります。79分にはチェルシーがプリシッチ、ブロヤ、チュクエメカを投入。テン・ハーグ監督もすかさずマクトミネイとエランガを投入します。しかし、そのマクトミネイがチェルシーのコーナーキック時にボックス内でブロヤを倒してしまいPKの判定に。これをジョルジーニョが決めてチェルシーが87分に先制します。敗戦濃厚となった94分、スローインの流れからショーがゴール前へクロス。これをカゼミーロが頭で合わせ、ボールはポストに当たってゴールへ。ケパが掻き出しますがラインを超えておりゴールの判定!劇的な同点ゴールが決まり、ユナイテッドが追いつきます。そのまま試合はタイムアップ。1-1のドロー決着となりました。

*試合のハイライトはこちら

今回は両チームのシステム変化と、それに伴う戦術ポイントを分析しながらこの試合を振り返ります!

以下項目です。

👿ラインナップ

22-23PL-13 チェルシーvsユナイテッド ラインナップ

①前半

1-1.チェルシーのプレス

戦術ポイントを見ていく前に、両チームのフォーメーションについて見ておきます。ホームのチェルシーの基本フォーメーション(ホームフォーメーション)は3-4-2-1。ユナイテッドはいつもの4-2-3-1。チェルシーのボール保持時のフォーメーションは、ポッター監督がブライトン時代に頻繁に使っていた4バックへの可変はほとんどなく、ホームフォーメーションと同じ3バックでウィングバックを押し上げた3-2-4-1に。守備時のフォーメーションはウィングバックが下がった5-2-3でした。一方のユナイテッドは攻撃時2-3-5、守備時4-2-3-1。チェルシーの方はあまり配置を動かさず、全体のバランスを意識した試合の入りに。ユナイテッドはいつものように、基本は4-2-3-1と見えて実際はエリクセンが高い位置を取る4-3-3でのプレーとなっていました。

まずは、前半のチェルシーのプレッシングから見ていきます。チェルシーは、ミドルプレスを基本とし、ユナイテッドの2CBにオーバメヤンとマウントでプレスを構えます。しかし、アンカーのカゼミーロに対しては対応選手が決まらず、オーバメヤンが下がってカゼミーロをケアすることが多かったです。そうなると主にヴァランがフリーとなるので、ユナイテッドは容易にビルドアップができる状況でした。試合開始直後は、カゼミーロまでジョルジーニョが出て行くシーンもありましたが、そうなるとブルーノがフリーとなるため、マルティネスから楔を入れる事ができます。ユナイテッドは前半を通してこの中央での3対2を維持した状況になっており、ポゼッションでチェルシーを上回った要因の1つとなりました。

チェルシーのプレス
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1-2.ユナイテッドのボール保持

そのユナイテッドのボール保持ですが、上記したようにチェルシーのプレスがなかなかハマらなかったこともあり、比較的簡単にボールを前進する事ができていました。チェルシーの出方によって、ダロトがインサイドに入ってビルドアップを助けたり、ショーがCBに降りて3バックでビルドアップしたりとかなりスムーズな対応ができています。ボールの運び方も、スペースがあればマルティネスやショーは1人で持ち上がったり、レイオフや逆ベクトルの動きでスパースを作ったり、3人目の動きでパスコースを作ったりと実に多彩なポゼッションを見せました。

アタッキングサードでは、6人が前線に並ぶほど超攻撃姿勢を見せています。また、左サイドのオーバーロードからアイソレーション側の右に展開してフィニッシュという形も多く、13分のアントニーの惜しいシュートまでの流れなどはもはやユナイテッドの鉄板の形になりつつあります。さらに、カウンタープレスからの攻撃もユナイテッドの武器となっており、28分のラッシュフォードの決定機の起点となったのはカゼミーロがボールを奪い返したところからでした。ポゼッションで押し込む、カウンタープレスで攻撃に転じるという形と並んで、ユナイテッドの武器となっているのがスペースを突くカウンターです。33分のラッシュフォードのシュートは、自陣でカゼミーロが奪ってからアントニーが上手くスペースへ飛び出したラッシュフォードに繋いでのカウンターでした。これだけ多彩な攻撃ができるようになったというのは本当に成長です。足りないのは決定力だけ(笑)。28分のラッシュフォード、45分のアントニーの決定機を決められなかったのは勝ちきれなかった要因となっています。

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1.3.チェルシーのシステム変更

このように前半、ユナイテッドのボール保持が良かった要因は、中盤での数的優位を維持できたことが大きいです。ジョルジーニョはエリクセンが、ロフタス=チークはブルーノがほぼマンマークで対応することでカゼミーロがスパーズ戦同様にフリーマンとなり、ビルドアップやカウンタープレスの局面で重要な役割を果たしました。エリクセンとブルーノという2人のゲームメイカーを高い位置でタクトを振るえたのは、カゼミーロの存在があってこそだったという訳です。

しかし、戦術家であるポッター監督はその状況を変えるため前半から動きます。36分にククレジャを下げてコバチッチを投入。システムを中盤ダイヤモンドの4-3-1-2へと変更します。この狙いは、ユナイテッドの中盤での数的優位を壊すため。これにより、中盤は4対3でチェルシーが数的優位に変化し、ユナイテッドは対応を迫られることになりました。チェルシーはプレスの場面ではカゼミーロにマウントを付けられるようになり、ユナイテッドはボール保持の場面でロフタフ=チークのポジション変化に対応するためエリクセンの位置が下がる事になります。さらにコバチッチはビルドアップ時にはボランチの位置まで下がるので、ユナイテッドは誰がマークするのか不明瞭に。カゼミーロが行けばマウントをフリ―にしてしまい、行かなければコバチッチがフリーになるという状況を余儀なくされます。このポッター監督の修正により、前半最後の10分間はチェルシーがユネイテッド陣内に攻め込む回数が増える事になりました。

チェルシーのシステム変更 4-3-1-2
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②後半

2-1.ユナイテッドの対応

後半に入り、ユナイテッドはチェルシーのシステム変更に対応します。まず、基本的にコバチッチにはカゼミーロが付きます。そしてショーが右のフォワードであるスターリングをマークすることでマルティネスの基準点を無くします。このことにより、ヴァランがオーバメヤンに付きながら、マウントを監視するタスクを任されます。マウントはかなり自由にポジショニングするため、ユナイテッドはその都度ゾーンで対応しますが、もしヴァランがマウントに当たりに行けば、マルティネスがオーバメヤンをマークできる体制を整えていました。中盤での数的優位は失ったままですが、少なくとも前半残り10分のような混乱はなく、ヴァラン、カゼミーロ、マルティネス、ショーは臨機応変に中盤の数的不利の影響を消す動きをこなしていました。

後半ユナイテッドの対応

さらに52分には、サンチョに代えてフレッジを投入。エリクセンをトップ下に、ブルーノを左サイドに出したテン・ハーグ監督。これは、攻撃面と守備面両方の思惑があったと思います。守備面では、上に書いたようにスターリングにショーが付くことになったので、左サイドの守備強度が下がる可能性がありました。サンチョは戻って守備もしますが、「強度」という面では期待できません。実際、後半開始からしばらくの間、チェルシーの右サイドからの押し込みが続きます。サンチョとエリクセンと、スターリングに対応しなければならないショーの3人では劣勢に立たされることになりましたが、これをブルーノ、フレッジ、ショーのトライアングルにすることで守備面の強度を保ちたかったのだと思います。攻撃面ではフレッジの高い位置でのカウンタープレスと、ブルーノのサイドからのクロスに期待した、というところです。

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2-2.チェルシーのボール保持

システム変更した後半のチェルシーは、中盤での数的優位でボール保持が安定します。特にセカンドボールを拾えることが多く、ゴール前でユナイテッドが弾き返してもまたチェルシーの攻撃ターンが続くことになりました。しかし、トップに入ったオーバメヤンに良い形でボールが入るところまでは至っていません。これは、システム変更の影響が大きいと言えます。

中盤ダイヤモンドの4-3-1-2の欠点はサイドのスペースを有効に使えないこと。基本的に大外レーンはサイドバック1枚となるので、サイドバックとウィングがいるユナイテッドの4-2-3-1に対しては数的不利の状況となります。サイドからの仕掛けはサイドバックが高い位置を取る必要がありますが、そもそも実力の拮抗した相手にはそれ自体が難しいという側面が。これを補うために、IH(コバチッチとロフタス=チーク)がサイドに出るという選択肢もありますが、それをすると折角中盤で作った数的優位がなくなります。チェルシーはこのサイドの厚みの不足を、トップのスターリングを右に、トップ下のマウントが左に流れることで(4-3-3気味に)打開しようとしました。しかし、それに対してもユナイテッドはサイドバックが対応できるのであまり有効とはならず。チェルシーがボールは持てても効果的なフィニッシュまでいけなかった要因となりました。

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2-3.ユナイテッドのメンバー変更

やや劣勢のまま0-0で推移した後半80分にユナイテッドは選手交代に出ます。エリクセンに代えてマクトミネイを、ラッシュフォードに代えてエランガを入れます。エランガを左サイドに、マクトミネイをトップ下に、ブルーノを偽9番に配するシステムへ変更することになりました。テン・ハーグ監督が「0-0のドローを狙いにいった」という見解もありましたが、個人的にはテン・ハーグ監督がそのような弱気な選択をするとはちょっと思えませんでした。

まず、切れるカードはかなり限られており、若手以外で攻撃面で変化させられるベンチメンバーはいませんでした。この状況で若手を使うのは荷が重すぎるということもあり、エランガ、マクトミネイしか切れるカードはなかったと思います。エランガは前線のプレスとスピードを活かしたアタックを期待されましたが、マクトミネイをトップ下に入れたのは興味深かったですね。決勝ゴールを決めたオモニア戦のような活躍を期待したところもあったかもしれませんが、やはり空中戦要因として出場したと考えるのが妥当かなと。前線の起点となるポストプレー+セットプレー時にヘディングで攻守両面で貢献するという役割です。さらに、高い位置でのカウンタープレスもタスクとして任されました。しかし、結果的にはそのマクトミネイの軽率なプレーにより、87分にチェルシーにPKを与え、先制されることになります。それでもチームは諦めず、カゼミーロの魂の同点ゴールでドローに持ち込むことに成功しましたが、離脱者の多さが選手交代に与えた影響は大きかったですね。

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👿まとめ

1ポイント差で迎えた4位対決は痛み分けのドローに終わりました。ユナイテッドは前半フォーメーションのミスマッチを上手く利用し、ポゼッションでチェルシーを上回り、ある程度自分達のやりたい形を作れました。しかし、ここ数試合と同様に、折角掴んだ決定機を決められなかったことで、苦しい状況になります。ポッター監督の素早いシステム変更は見事でしたが、ハーフタイムにしっかり調整を掛けたテン・ハーグ監督もまた素晴らしかったです。この試合は、システム変更により中盤での数的優位を作り、試合の主導権をいかにして握るかという指揮官同士の知恵比べの側面もありました。しかし、お互いになかなか決定的なギャップを作れず、後半は特にチャンスの少ない試合展開となりました。こういう試合では、強烈な個の能力やミス、そしてメンタリティが勝敗を分けることになります。ユナイテッドはミスからPKを与え、メンタリティで同点に持ち込みました

カゼミーロの執念の同点弾とチームの歓喜の輪は最高でしたね!百戦錬磨のカゼミーロがあれだけ感情を露わにするのは意外でしたが、試合終了のホイッスル時には首を横に振っており、ドローでは満足していない様子でした。ユナイテッドが長い年月の間に忘れかけていた勝利への執念をカゼミーロは見せてくれました。勝てた試合だけに残念な部分はありますが、メンタリティの面でも進歩していることがわかるチェルシー戦となりましたね。

この試合の結果ユナイテッドは6位。5位チェルシーとは1ポンイント差のままです。

22-23PL-13 チェルシーvsユナイテッド スタッツ
22-23PL-13 試合結果

次の試合はヨーロッパリーグ・グループステージ第5戦 オールド・トラッフォードでのシェリフ・ティラスポリ戦。10月28日(金)4:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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