こんにちはMasaユナイテッドです。
22-23プレミアリーグ第8節延期分 ホームでリーズ・ユナイテッド(以下リーズ)と対戦したマンチェスター・ユナイテッド(以下ユナイテッド)。試合は開始1分でウィルフリード・ニョントのゴールでリーズが先制します。リーズのハイプレスに苦しみ思うようにビルドアップできないユナイテッドでしたが、徐々にリーズ陣内へ入り込めるようになります。ガルナチョが惜しいシュートを放つ場面や、ザビッツァーのミドルシュートなどもありましたが得点には至らず1点ビハインドで後半へ。すると後半開始早々にもクリセンシオ・サマーヴィルのクロスがヴァランに当たってゴールに吸い込まれ、オウンゴールで2点目を奪われます。しかし、そこからユナイテッドは本来のポゼッションを見せるようになり、62分にはダロトのクロスをラッシュフォードがヘディングで決めて1点返します。さらに59分にピッチに入ったサンチョが70分にゴールを決めて同点に追いつくことに成功。押せ押せのユナイテッドは、ヴァランのヘディングシュートでメリエを焦らせ、フレッジとブルーノのシュートも続きますが逆転できず。試合は2-2のドロー決着となりました。
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今回はこの試合を戦術的ポイントで振り返ります!
以下項目です。
👿ラインナップ

①早々の失点はなぜ起こったのか?
開始から僅か1分での失点。ユナイテッドは右サイドの繋ぎでボールを奪われ、ニョントの進行を止められず、あっさりとリーズに先制を許します。キックオフと同時にユナイテッドはボールを下げ、デヘアとヴァランが何度かボールを持ってパスの出しどころを探ります。リーズは前線4人でプレスをセット。バンフォードはヴァランに圧力を掛け、2列目の3人は中央に絞る形でユナイテッドのボール進行をサイドへ誘導します。この時ヴァランはパスの出しどころかなく周囲にサポートを頼みますが、反応が薄くダロトに出すことになります。その後ダロトはサイドに流れていたブルーノへ出し、ブルーノがアダムスとストライクにボールを奪われ失点へと繋がります。
このシーンは単純な見方をすると、ボールを奪われたブルーノに非があるように見えますが、いくつかの不十分な対応が散見されています。シュートの時のフレッジの淡白な守備と、マルティネスの寄せの甘さも見られますが、そもそもビルドアップの時のサポート意識の欠如が根本原因だと思います。ヴァランがボールを持っている時のマルティネス、ザビッツァー、ダロトだけでなく、画面に映っていないフレッジやヴェフホルストの動きが十分だったのかも気になるところです。個人的にはザビッツァーのポジションは終始気になっていたのですが、加入したばかりで普段こなしていない役割を担っていたので仕方ないところもあります。しかし、失点シーンだけでなくリーズ戦前半を通してビルドアップに苦労したのは事実。次項でユナイテッドのビルドアップが上手くいかなかった要因を探ります。
Embed from Getty Images②ユナイテッドのビルドアップの問題点
ユナイテッドはビルドアップを3-1-6の形で行います。後ろの「3」は流動的でCB2枚+左右のSBのどちらかが基本系ですが、エリクセンやカゼミーロが降りて「3」を作る場合もあります。リーズ戦ではアンカーにザビッツァーが入ったこともあり、専らダロトを使った3バックでのビルドアップになっていました。これに対してリーズはバンフォード、ハリソン、ニョントの3枚でプレスを掛けます。数的同数でプレスを掛けているというのもありますが、リーズのプレスの重要な要素は「中央を閉じている」ことです。前線の4人とダブルボランチで六角形を作り、ユナイテッドの中盤3人(ザビッツァー、ブルーノ、フレッジ)へパスが通せないようにしています。この事により、ユナイテッドのボール進行はサイド、もしくは前線へのロングフィードのみになります。そしてサイドにボールが出たところで複数で取り囲んでボールを奪うというのがリーズのプレッシングです。
これに対してユナイテッドは前半なかなか対応ができませんでした。特にザビッツァーは不慣れなポジションと、連携の時間が足りていないこともあり、前半を通してリーズが作る六角形の中に留まっていました。最終ラインからボールを引き取る動きに長けた選手なら、この六角形の外へ出ると思いますが、ハリソンのカバーシャドウに隠されボールを引き取ることができませんでした。さらに、ポイントとなるのはフレッジ。前節のパレス戦の記事でも書きましたが、ボール保持の場面でフレッジがライン間のポジションを取るのは非常に効果が期待できます。しかし、それがハマらないことがあるとも書きました。それが今回のリーズ戦です。それはリーズが中央を閉じ、かつサイドでボールを奪うという設定だったことと、カゼミーロの不在によりアンカーに入ったザビッツァーをフォローすることが必要になり3列目に降りた為です。

*前節パレス戦の記事はこちら
ユナイテッドはそれでもポゼッションを進化させてきたこともあり、徐々にプレスを回避し始めます。そのポイントとなったのはガルナチョです。ユナイテッドは右から進行し、逆サイドのガルナチョへロングボールを送る事でアタッキングサードへ進攻するスペースを見つけます。右のラッシュフォードは徹底的にマークされボールを持てば2、3人に囲まれる状態でした。右のラッシュフォードが機能しないというよりはプレーさせてもらえなかった印象が強いです。しかし、そのラッシュフォードへの警戒が逆サイドのガルナチョが活きる要因になりました。2度の決定機を外したことで批判もありますが、チーム戦術という面ではガルナチョの動きは前半の攻撃の重要な要素だったと思います。
Embed from Getty Images③後半の入りの失点
1点ビハインドで後半に入り反撃に出たかったユナイテッドですが、後半スタートから3分間、ほとんどボール保持できずに2失点目を喫します。自陣でクリアボールをことごとく拾われ、2度のコーナーを含め、連続して3本のシュートを浴び波状攻撃を受けました。開始早々での失点ということで、先制点と類似しているとも言えますが、その根本にあるのは「テンポをずらそう」とする無意識だと思います。リーズのプレス戦術を回避しようとするとどうしてもプレースピードが速くなります。しかし精度は確実に落ちるために、ボールをしっかり保持しようとすると無意識にプレースピードを落とそうとします。前半の入りも後半の入りも、ボールを保持してコントロールしようとしたことで「緩い」プレーに見えたという側面があります。
Embed from Getty Images加えて2失点目は個々のデュエルの局面でことごとく負けています。ニョントのドリブルを止められないダロトやサマービルからボールを奪えないザビッツァー、そして失点の起点となったガルナチョのボールロストなど、ほとんどの選手がインテンシティでリーズの選手を上回れませんでした。逆を言えば、リーズは後半の入りにトップギアに入れる事で、ユナイテッドを圧倒しようとしたとも言えます。マイケル・スクバラ暫定監督のハーフタイムのモチベーションの上げ方が巧みだったのは想像に難くないですが、テン・ハーグ監督も選手に発破を掛けているので、この面でもリーズ指揮官が上回ったということでしょう。ユナイテッドとしては2失点目はミスというよりは、リーズの圧に屈した印象を受けますね。
④サンチョ投入で流れを変える
2点差を付けられ、負けも覚悟しましたが62分にラッシュフォードのヘディングシュートで1点返します。後半の2失点後いくつか変化が見られますが、まずラッシュフォードを左、ガルナチョを右に変更し、フレッジはザビッツァーと横並びのダブルボランチへ変えて苦戦したビルドアップへ対応しようとします。しかし、ユナイテッドが突如としてボールを持てるようになったのはリーズ側の変化によるものです。2点目を決めた後、リーズはハイプレスを止め、ミドルプレスへ移行します。当然ながらあのインテンシティの高いプレスを90分仕掛ける事はできないので、どこかで落ち着く必要があります。しかし、今シーズン先制した試合5試合で勝ち点を落としているというデータからも、試合のコントロールに問題があるというのが伺えるほどの急激なトーンダウンでした(失点後はまたギアを上げますが)。このことにより、最終ラインで落ち着いてボールを持てるようになったユナイテッドは、マルティネスが配球できるようになり、両サイドバックも高い位置を取れるようになります。
そして、59分にピッチに入ったサンチョがさらに攻撃の質を向上させます。恐らくボールコントロールという点ではユナイテッドで一番上手いであろうサンチョ(異論は認めます(笑))。サンチョがボールを持つことで周りに「スペース」と「時間」を作ることができます。もちろんドリブルでの仕掛けも得意なことから、相対するディフェンダーは動きを「制止」させられることになります。サンチョはオーバーラップやインナーラップするショーとの巧みな連携でファイナルサードへ攻め込みました。69分の同点弾もショーとのコンビネーションで生まれています。そのプレースタイル的には10番タイプであるサンチョの投入は、ブルーノと2人のプレーメイカーをピッチに置けるという意味でエリクセンと似ています。もちろんプレーエリアやパスの質は明確に違いますが、チーム戦術に与える影響度合いは2人ともかなり高いです。復活戦となったカラバオのフォレスト戦でもそう思いましたが、改めてサンチョのクオリティの高さを実感したリーズ戦ででした。
Embed from Getty Images👿まとめ
白熱のローズダービーは2-2の痛み分けとなりました。ダービーらしい激しい肉弾戦の応酬は見ごたえがありましたが、ポゼッションのコントロールの失敗から失点、さらに後半の入りもインテンシティが足りずに失点と昨シーズンのユナイテッドなら負け確定の流れでした。しかし、そこからよく盛り返し、自分たちの得意とする形へ持っていき同点に追いついたことは称賛に値します。特にラッシュフォードは今シーズンの公式戦20ゴールを達成。好調を維持しているのは本当に素晴らしいですね。オールド・トラッフォードでの連勝はストップしましたが、これまでに見せてきたチームスピリットは伊達ではないことを証明しました。欲を言えば、ガルナチョの決定機やザビッツァーのミドル、ヴァランのヘディングシュートやブルーノのゴール前でのシュートなどもう1点決めてほしかったところもありますが、あと1歩及びませんでしたね。
Embed from Getty Images試合展開的にもドローという結果は悪くないですが、同時に早急な課題もいくつか垣間見えています。まずは中盤の構成の問題。主力であるカゼミーロとエリクセンの不在の影響がモロに出てしまう形となったビルドアップは何らかの対策が必要です。ザビッツァーが悪かったわけではありませんが、やはり基本はボックス・トゥ・ボックスの選手でありフレッジと役割が被っています。連携を深めれば機能性は上がると思いますが、早急に結果を出すには組み合わせを変える方が良いでしょう。そして、こちらも迫力に欠けた右サイド。これまでのワン=ビサカとアントニーのコンビは相手を押し込むのに良い働きをしていたことがリーズ戦で明らかになったとも言えます。ダロトは復帰戦ということでまだキレが戻っていませんが、ダロトのコンディションアップとアントニーの復帰が右サイドの鍵を握りそうです。ただ、サンチョの復活とペリストリのフィットにより右サイドの問題は深刻度は低いと考えています。
熱い試合を見せてくれましたが、また日曜日にリーズと対戦します。今度はアウェーですが、リーズのハイエナジーサッカーにどのように修正し、対応するのか見どころ満載の試合となりそうですね。


この試合の結果ユナイテッドは3位のまま。4位ニューカッスルとは3ポイント差となっています。
次節23節はエルランド・ロードでのリーズ・ユナイテッド戦。2月12日(日)23:00キックオフ。カモン!ユナイテッド!!
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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