【22-23プレシーズンマッチ】進化!クリスタル・パレス戦に見るユナイテッドの3大基礎戦術の特徴とは!?

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こんにちはMasaユナイテッドです。

22-23プレシーズンマッチ第3戦。オーストラリア、メルボルンにあるメルボルン・クリケット・グラウンドでクリスタル・パレスと対戦したユナイテッド。試合は前半にマルシャルのゴールでユナイテッドが先制し、後半に入った48分、ラッシュフォードのゴールで2点差とします。58分にはサンチョがダメ押しの3点目を奪い試合を決定付けます。60分には8人の選手を入替えますが、74分にセットプレーからウォードに1点返され、83分にはフィッシュがビクター・アキンワレへのファウルで一発退場となりますが、試合はそのまま3-1でユナイテッドが勝利を挙げています。

*試合のハイライトはこちら

今回は、この試合から3つの基礎戦術についての分析記事です。チーム戦術の基礎となるビルドアップ、プレッシング、ファイナルサードの崩しはテン・ハーグ監督になってどのような特徴が見られるか。また、どのぐらいの完成度なのかを考察します!

以下項目です。

👿ラインナップ

22-23PSM ユナイテッドvsパレス ラインナップ(前半)

①ビルドアップ

パレス戦のユナイテッドは、メルボルン戦と同様の4-3-3フォーメーション を使用。メルボルン戦からのスタメン変更は左サイド。サイドバックにマラシア、ウィングにラッシュフォードを先発させています。基本戦術の中で、まずはビルドアップから見てみます。テンハーグ監督のスタイルに於いて、ボール保持は非常に重要で、その根底となるビルドアップを安定させるということは土台を固めるという意味で、最重要項目です。

パレス戦のビルドアップで重要や役割を担ったのが、ユナイテッドでの初先発となったマラシアです。マグワイア、リンデロフ、フレッジでビルドアップのベースを担うのが基本系となりますが、マラシアが左のCBに降りて、ダロトを高い位置へ上げる形が度々見られました。マラシアがCBに降りた時は、ラッシュフォード、またはブルーノがウィングの位置から降りてきてボールを引き取ります。

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この第1フェーズが成功するとマラシアはボランチの位置へ上がって行きます。大外レーンではなく、インナーレーンにポジションを取ることが多く、1アンカーのフレッジを助ける役割と同時に、被カウンター対策という意味合いもあります。マラシアは31分頃、試合途中にテンハーグ監督から直接指示を受けており、それ以降インナーレーンへのポジショニングが増えました。恐らくはこの指示だったと思います。このように、左サイドからのビルドアップが多かったパレス戦ですが、右からのビルドアップも何度か見られました。この時の特徴はダロトのポジショニングで、やはりインナーレーンを取る事が多く、降りてくるサンチョ、インナーレーンのダロト、大外の高い位置を取るマクトミネイと三角形を旋回させる形が見られるのも特徴です。このようにテン・ハーグのビルドアップでは、2CB+1、SB+IH+WGのトライアングルユニットが重要な形となります。

22-23PSM vsパレス ユナイテッドのビルドアップ

その他では、マグワイアの対角へのロングフィードも頻度を増していますし、プレス回避にデ・ヘアを使うのも変化した点です。何より、1アンカーとして起点となるフレッジの果たす役割も大きいものテンハーグ監督になってからの大きな変化となっています。3点目はデ・ヘアからスタートし、リンデロフ→フレッジ→ラッシュフォード→マルシャル→サンチョと繋いだゴールでした。この時のパレスは前へ人数を掛けてきましたが、巧みに繋いでプレスを回避しました。ビルドアップと速攻が合わさった形でしたが、こういったゴールは昨シーズンまでのユナイテッドでは見られなかったでしょう。

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試合後のインタビューでテン・ハーグ監督はポゼッションについて

「そして、ボール保持時も良いプレーをしている。2-0や3-0になったときに、自分達の力を信じる力が強まっているのがわかると思う。そしてまた、ポゼッション時にも我々はスピードを遅らせることもできるし、後方でもプレーできる。相手が前に出てくるように戦って、我々がスピードアップすることもできる」

ユナイテッド公式

と語っています。

②プレッシング

前回のメルボルン戦では前からのプレスがうまくハマらず失点したユナイテッド。パレス戦はより整理され、集中力も、相手に与える圧力も高かったです。

相手のCB2枚に対してはマルシャルが対応し、サイドバックにボールを誘導。サンチョとラッシュフォードの両ウィングはナローに構えてボールが出たらサイドバックにプレスを掛けます。プレスの特徴は、ブルーノとマクトミネイが相手のアンカー(ミリヴォイェヴィッチ)と左インサイドハーフ(キリアン・フィリップス)にマンマークで付くこと。そして、逆にフレッジは右インサイドハーフのラク・サキを放置していました。フレッジはプレスに行かずCBの前から動かないという決まりになっており、ボールが出たサイドの圧縮の役割を果たします。

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この1枚余られておいてボールサイド圧縮するのは、逆サイドへ展開させないことが目的ですが、アヤックスでも同様のプレッシングが見られます。ただ、相手のフォーメーションにもよりますし、パレスはその浮いているラク・サキを使う姿勢を見せなかったので問題なかったというところもあります。プレスに関しては、リバプール戦、メルボルン戦とも形は若干違っており、どこまでが仕込んでいる形かは不明瞭です。しかし、サイドで圧縮してボールを奪うというのは狙いとして持っていると感じます。そして、プレスでボールを奪ったら、前方のスペースを使い素早く攻めるという意識は高いです。あくまでもプレスは守るためのものではなく、奪ってからの攻撃のためだという意識です。

22-23PSM vsパレス ユナイテッドのプレッシング

ポジトラを重視し、素早く攻めるというのはラングニックのコンセプトを継承しているとも言えますが、ユナイテッドのスカッド的にもマッチしているので、ボール奪取さえ上手くいけば、武器となる攻撃パターンとなります。

プレスに関してもテン・ハーグ監督は

「(フィールドの高い位置でボールを奪った点)同意できる。そしてそれは、チームに求められていることでもある。私たちは一日中プレスをかけ、もし可能ならピッチの高い位置でそれを行う。しかし、それができないなら、手前のブロックでやることになる。ただし、チームとしてプレスをかけてやっていかなければならない」

ユナイテッド公式

と言及していますが、同時にプレスに関しては「タイミング」に関して改善点としています。

③ファイナルサードの崩し

今回の3つの基本戦術の中で、最も意図が明確に出ているのが、いわゆる「崩し」の場面です。いかにして点を取るかというところは、最もやろうとしていることがハッキリしています。それは「チャンネルランでボックス内に侵入し、マイナスのクロスで仕留める」ということ。チャンネルとは、相手CBとSBの間のことを指しますが、ここを突破すればその先にニアゾーン(ポケットともいう)があります。ニアゾーンへの侵入は、得点の可能性が高くなるとされており、ペップ・シティがここへの侵入を重視していることは有名です。ユナイテッドは、多くの攻撃の場面でチャンネルに入り込む選手が見られます。特に右サイドはダロトが最も意識して狙っていますが、サンチョ、ブルーノ、マルシャル、マクトミネイもその意識は出ています。

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ニアゾーン(ポケット)は相手ディフェンスラインの背後、相手のキーパーから少し離れた位置にあり、相手ディフェンダーの視野外になりやすい場所です。相手ディフェンダーはディフェンスラインを守りながら、ボールと相手の両方を見なければならないので、マークが外れやすい場所でもあります。ここに侵入し、マイナスのクロスを行った場合、ディフェンダーは背後から走り込み選手をケアすることはとても困難になります。2点目は、パレスのディフェンスラインはすでに崩壊していましたが、ファン・デ・ベークがニアゾーンを取って、ラッシュフォードへマイナスのクロスを上げたことで得点に結びつきました。

34分にサンチョがニアゾーン付近からダロトへマイナスのクロスを上げたシーンは典型的で、その直前には、マクトミネイがチャンネルから一度大外に出て、空けたスペースにサンチョが入り込んでいます。このように、チャンネルに入って一度外に出る事でトライアングルを旋回させるのも、よく見られる形でこれはアヤックスでも同様です。チャンネルへ入り込み、そのまま深くえぐってニアゾーンからマイナスのクロスが、テン・ハーグが仕込もうとしている崩しのパターンだと思います。

22-23PSM vsパレス ユナイテッドの崩し

ただ、現状この形は右サイドが顕著です。左はパレス戦でいえば、ラッシュフォード、マラシア、ブルーノでトライアングルを作りますが、特にラッシュフォードのチャンネルランの意識が薄く、感覚でプレーしている事がわかります。ラッシュフォードの良さを出すには、ある程度本能的なプレーが必要だというのもあります。ここは、テン・ハーグ監督がどこまで厳格に要求するかによってラッシュフォードをどのぐらい起用するか変わってくるでしょう。メルボルン戦ではエランガを先発させ、ショーをサイドバックに置きましたが、左はほとんど機能しませんでした。プレシーズンの3試合すべてで、左サイドのラインナップが違うのはこのあたりに原因がありそうです。

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👿まとめ

昨シーズンの最終節、1-0で敗れた相手がパレスでした。あれから2ヶ月、テン・ハーグを指揮官に迎えた新生ユナイテッドの船出は順調です。マルシャル、ラッシュフォード、サンチョの3トップが揃って得点を挙げての3-1の勝利。プレシーズン3試合合計11得点2失点は、数字的にも文句ないスタートです。加えて手応えがあるのが、戦術面の進化です。トレーニングを開始してから1ヶ月立っていませんが、今回見てきたように、ビルドアップ、プレス、崩しという基礎戦術は徐々に形になりつつあります。もちろん対戦相手の強度が上がれば、そう上手くは機能しない場面が出てきますが、この基本形の安定度を増した上に、どうアレンジを加えていくかが今シーズンの課題となりそうです。

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選手に関しては、昨シーズンより明らかに充実感があり、今回のツアーでチームワークも良くなったように感じられます。もともと個の能力は高い選手たちが、チームとして結束すれば間違いなく強くなるでしょう。ただ、テン・ハーグ監督は、レギュラーとサブを比較的明確にしている節があります。不当に出場機会が与えられないことの弊害は昨シーズンで思い知らされているだけあって、一抹の不安がなきにしもあらず...。理想で言えば、対戦相手や戦術によって先発をローテーションさせつつ、が出ても局面のユニットが機能するというのが理想です。パレス戦もメンバーを入替えた60分以降は失点、退場などもあり、見せ場を作るのにも苦労しました。去就の面でも、ハッキリしていない選手が複数人おり、誰をサブメンバーとするのかというところも今後のプレシーズンマッチで注目したいところですね。

22-23PSM 試合結果

次の試合はオプタス・スタジアムでのアストン・ヴィラ戦。7月23日(土)18:45キックオフ。カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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