【22-23夏の移籍情報】新加入!「攻守一体型ディフェンダー」リサンドロ・マルティネス徹底分析!

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こんにちはMasaユナイテッドです。

7月15日、アヤックス所属CBリサンドロ・マルティネスのユナイテッド移籍が合意に至りました。アーセナルとの激しい争奪戦の末、€54m+€10mボーナスの移籍金で獲得に漕ぎつけました。アヤックスで3シーズン、テン・ハーグ監督の下でプレーしたマルティネス。成長させてくれた恩師との再タッグを決意。本人のプレミアでのプレー希望と、テン・ハーグ直々の説得が功を奏した形となりました。

今回は、左利きCBリサンドロ・マルティネスを分析します。トータル的なプレースタイルや、守備、攻撃両面での特徴、またユナイテッドでの役割などを考察します!

以下項目です。

①リーグ屈指のディフェンダー

選手名:リサンドロ・マルティネス(Lisandro Martínez)
生年月日:1998年1月18日(24歳)
国籍:アルゼンチン
身長:178cm
ポジション:CB/DMF/LB
背番号:6
チームキャリア:ニューウェルス(2015~2018)→デフェンサ(2018/6~2019/5)→アヤックス(19-20~21-22)→ユナイテッド(22-23~)
利き足:左
契約終了年:2027年6月30日

19-20シーズン、ユベントスへ移籍したデ・リフトの後釜としてデフェンサ(アルゼンチン1部)からアヤックスへ加入したリサンドロ・マルティネス。アルゼンチンでは主にCBとしてプレー。アヤックス加入シーズンはボランチでの起用が多かったですが、20-21シーズンからはほぼすべての試合でCBでプレーしています。アヤックスはマルティネスが加入した19-20シーズンに、パンデミックによるリーグ中断で優勝こそ認められていませんが、最終順位は1位となっています。続く20-21、21-22もリーグ制覇を成し遂げており、マルティネスはアヤックスで数々の栄光を勝ち取りました。

またアヤックスは19-20シーズン23失点(リーグ全25試合)、20-21シーズンも23失点(全34試合)、21-22シーズンはわずかに19失点と守備の強固さを増しています。ファン・デ・ベーク、フレンキー・デ・ヨング、マタイス・デ・リフトなどを擁し、アヤックス躍進のシーズンとなった18-19シーズンは32失点していることからも、マルティネス加入後の守備の安定は印象的です。もちろん、マルティネスの加入だけが要因ではありませんが、リーグ屈指のディフェンダーと評価される一因となっています。

昨シーズンのアヤックスでは、ティンバーとCBを組むことが多かったマルティネス。守備のアグレッシブさやタックルなどのスタッツではティンバーが勝り、リーグの中でも上位の数字を残しています。アグレッシブなディフェンスが売りのティンバーに対して、マルティネスは守備の面で目立つタイプではありません。ティンバーが「剛」だとしたらマルティネスは「柔」と言えるでしょう。いわゆるCBの理想の組み合わせと言われる「鉄とカーテン」の関係です。しかし、マルティネスのプレーを詳しく見ると、ディフェンス能力も高いことがわかります。次項で詳しく見てみましょう。

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②守備能力

21-22シーズンのマルティネスのタックル数は48回。これはアヤックスでは3番目、リーグでは60番目の数字です。またインターセプトは46回で、アヤックスでは2位。リーグでは29位の成績です。アヤックス自体がポゼッション率が高く、守備の時間が短いという背景がありますが、リーグ全体で見た場合、両方ともに特筆すべき数字ではありません。タックルも、インターセプトもアヤックスでのトップはティンバーですが、タックル数には大きな差(25回)がある一方でインターセプトは4回の差だけです。さらに地上デュエル勝率に関しても2人がほぼ同じ数字をマークしています。ティンバーが69.43%、マルティネスが68.18%です。この数字は、ユナイテッドでのトップであるヴァランの66.67%を上回ります

この数字からわかる事は、マルティネスの守備は非常に効率的だという事です。そして、これこそがマルティネスの守備の最大の特徴です。つまりは、読みとポジショニングに優れたディフェンダーだということです。マルティネスが不意を突かれることはほとんどありません。また、必要な場合にのみタックルを行い、通常は動き回らず危険なポジションや、パスが来るであろう位置を予測してそこを埋める動きを行います。マルティネスはアグレッシグなファイタータイプではありませんが、知性的で危機察知能力に優れています。マルティネスの守備はいつも楽でシンプルに見えますが、それこそが彼の守備能力の高さを物語っていると言えるでしょう。

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さらに、センターバックとしては厳しいと言われる178cmの身長ですが、空中戦の勝率は70.54%を誇ります。これはアヤックスでトップであり、ユナイテッドの選手ではヴァラン73.68%、マグワイア72.82%だけがこれに勝っています。読みが鋭いマルティネスは、ボールの落下地点を予測し相手より先にポジショニングする能力が高いです。リーグでも屈指の空中戦勝率を記録しており、リーグレベルの差があるとはいえ、そこまで問題にならない可能性を示しています。さらに、デュエルの局面でも体をぶつける事に躊躇はなく、先ほど数字で見たように勝率も高いです。もちろんアヤックスのように、チームのポゼッションが高い状況での守備だからできているという側面もありますが、CBとしての効果的なプレーをテン・ハーグに教わったというマルティネスが、プレミアで上手くいかないということはないと思います。

③攻撃への貢献

マルティネスが他のディフェンダーと一線を画すのは、ボールプレーの時です。過去3シーズンの彼のパス精度は88%を超えており、左足でのボール扱いに長けていることを示しています。昨シーズンの3つのアシストからもわかるように、チャンスメイクもできます。パサーとしての能力が高く、FBrefのデータではパス成功数、プログレッシブパス回数、アシスト、キーパス、ファイナルサードのパスので、ディフェンダーの上位1%にランクインしています。 これは印象的なスタッツです。より多くのチームが後方からビルドアップする必要があるため、ボールプレーを得意とするディフェンダーの重要度はかなり高くなっています。マルティネスは完全にこの特徴を持っており、テン・ハーグ監督がマルティネスをビルドアップの起点に据えた大きな要因となっています。

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また、90分あたりのショッツ・クリエイティング・アクション(SCA)は1.38を記録し、ゴール・クリエイティング・アクション(GCA)、ドリブル成功率もディフェンダーの上位1%に入ります。またExpected Threats(xT脅威期待値)でリーグ10位にランクインしています。脅威期待値は、ピッチのさまざまな部分でプレーヤーが相手にどれほど脅威を与えているかを測定した数字ですが、マルティネスはディフェンダーであるにもかかわらず、アヤックスのチームメイトであるウィンガーのアントニーやPSV(現フェネルバフチェ)のブルーマよりも優れたxTを示しているのはとても興味深いです。

最終ラインでボールを持ち、パス出しの起点として左右へロングパスで展開、またはドリブルで持ちあがって楔や裏へのパスを入れるなど、ビルドアップの貢献と攻撃のスイッチャーとしての役割がマルティネスの大きな特徴ですが、アヤックスでは左サイドバックのブリントが高い位置を取り、アンカーのアルバレスがCB間に落ちて組み立てることが多く、この時マルティネスは3バックの左CBとして振る舞います。また、バックラインの高いアヤックスにおいて、時折敵陣まで侵入しボランチのように振る舞うシーンもあります。ボールプレーに自信のあることの表れであり、またカウンターを喰らっても読みとスピードでカバーできるという確信も感じる事ができます。このようにマルティネスは「攻守一体型のディフェンダー」として、世界でも屈指のタレントだと思います。

*アヤックスのビルドアップに関してはこちらの記事を参照!

④ユナイテッドでの役割

新加入のマルティネスのユナイテッドでの役割ですが、やはり論点は「CBか中盤か」というところでしょう。これに関しては、「どちらもあり得る」というのが答えです(笑)。ただし個人的には、テン・ハーグ監督はCBとして見ているのではないかと考えています。マルティネスがボランチをやっていたのはアヤックス加入シーズンに集中しており、大成したのはCBで起用されるようになってからです。そしてその場合、多くの人が懸念しているのは、「178cm77kgという体格がプレミアで通用するのか?」ということでしょう。これに関しては上記したように、空中戦の強さとフィジカルコンタクトの強度的には問題ないと思っています。

テン・ハーグ監督は、チームに基本的にボールを持つことを要求します。まずは自分たちがボールを握り、主導権を持つことが最初のステップです。マルティネスのポジションは、非ボール保持の場面ではなく、ボール保持の場面で想定しているはずです。つまりはビルドアップの起点を、ピッチのどの高さに設定するのかによるということ。最終ラインが高い位置を取れるなら、マルティネスは最終ラインから配給する役目としてCBでプレーするでしょう。一方、ボール保持が上手くいかず、ラインが下がるのならアンカーの位置でプレーすることになるのではないかと考えます。

なので新シーズンのユナイテッドが、ビルドアップやポゼッションが安定するまでは中盤で起用される可能性は十分にありますが、チームのボール保持が安定すればCBとなるでしょう。まぁ、とはいえ、ユーティリティ性の高さもマルティネスの売りの1つなので、臨機応変に起用してもらえば良いですね(笑)。仮に、CB起用となった場合、「パートナーは誰なのか?」という問題もあります。これも賛否両論あると思いますが、タイプ的にはマグワイアと組むほうが機能しそうです。ヴァランも優秀なCBであることは間違いないですが、マルティネスとヴァランはタイプがどちらかというと似ています。やはり理想は「鉄とカーテン」のコンビだと思いますし、ヴァランはフル稼働が難しいというコンディション面の不安もあります。

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同胞であり、ユナイテッドでもプレーしたガブリエル・エインセに憧れるマルティネス。アルゼンチン人で左利きのディフェンダーという点では、マルコス・ロホとも共通点がありますが、スタイルの類似性ではアヤックスの先輩であるダレイ・ブリントに一番近いでしょう。ユナイテッドからアヤックスに戻りテン・ハーグ監督の元、戦術的にも重要な地位を確立したブリント。昨シーズンも左サイドバックとして活躍しましたが、その背景にはマルティネスの成長が大きく関与しているというのもまた象徴的です。恩師テン・ハーグ監督の下、ユナイテッドでも戦術のキーマンとして活躍してくれることを期待しましょう!

*プレー動画集はこちらを参照!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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