【23-24PL第1節】マンチェスター・ユナイテッドvsウルブス 4つの苦戦の要因

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こんにちはMasaユナイテッドです。

皆様、今シーズンもよろしくお願い致します!

23-24プレミアリーグ開幕節 ホームでウォルバーハンプトン・ワンダラーズ(以下ウルブス)と対戦したユナイテッド。試合は鋭いトランジッションでゴールに迫るユナイテッドに対して、巧みなカウンターでウルブスもユナイテッドを脅かします。0-0で前半を折り返し、ユナイテッドは後半スタートから怪我の疑いのあるマルティネスに代わってリンデロフを投入します。さらに68分にはエリクセンとサンチョを投入し、流れを変えます。すると76分、ワン=ビサカのクロスにヴァランが頭で合わせてゴール!ようやく先制することに成功します。その後ウルブスの猛攻を受けますが、新守護神オナナを中心に守り切り1-0で勝利。新シーズンの開幕戦を白星で飾っています。

試合のハイライトはこちら

今回は、このウルブス戦に苦戦した要因を4つ取り上げ、試合を振り返ります!

以下項目です。

👿ラインナップ

23-24PL-1 ユナイテッドvsウルブス ラインナップ

①ビルドアップ、ボール進行の問題

23-24シーズンの開幕戦。ユナイテッドはウルブスに1-0で辛勝しました。合計23本ものシュートを浴び、終盤のオナナのファールを取られなかったシーンなども考えると負けていても不思議ではない試合内容だったというのが率直な感想です。開幕の1週間前にフレン・ロペテギ前監督が退任し、ガリー・オニールを新監督に迎えたばかりのウルブスでしたが、組織レベルとしても、プレーヤー1人1人を見た個人レベルとしても素晴らしいプレーを披露し、ユナイテッドを大いに苦しめたと言えるでしょう。このように、開幕戦の苦戦の要因の1つには、対戦相手であるウルブスの高いパフォーマンスがあったのは間違いありません。しかし、同時にユナイテッド側にも思うように機能しなかった戦術フェーズや個人のパフォーマンスなどがあった事も確かです。今回は、その中でも個人的に気になった苦戦の要因を4つ挙げて試合を振り返ります。

まず1つ目はビルドアップとボール進行のフェーズです。今シーズン、新戦力として足元の技術に優れたキーパー、アンドレ・オナナを迎えました。これにより、後方からのビルドアップに関して大幅な改善が見られるというのが私も含めた大方の見方です。プレシーズンマッチをご覧になった方ならわかりますが、オナナの加入による効果はプレシーズンマッチでも明らかでした。ビルドアップの形は多彩になり、各選手のポジショニングの意識も改善されました。ハイプレスを掛けてくる相手にもオナナを含めて数的優位を作り出し、比較的楽に剥がせるように進化しています。しかし開幕のウルブス戦は、ビルドアップが上手く機能しませんでした。ユナイテッドはウルブス戦でショーの偽SBをビルドアップの基本形として試合に入りました。それに対してウルブスは各レーンを閉じる方法でプレスをはめ込みます。ショーのボランチ化に対しても8番のゴメスが前へ出て対応。マウントはフリーになりますが、原則として三角形を作るので大外のレーンに出ることが多く、そこはネトが主に対応することになっていました。

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というように、おおざっぱな意味でのマンマークとなっており、ユナイテッドはこれに対してフリーマンを作り出すことに苦労することになります。ほかにもマルティネスを1列上げたり、マウントが下がったりして変化を加えますが、結局どの形も人を入替えているだけなのでウルブスのマークがズレる事はありませんでした。加えてユナイテッドのボールの動かし方もマズいシーンが多く、効果的なボール進行をおこなうことができていませんでした。マンマークで付かれている場合、レイオフやワンタッチの壁パスなどが有効ですが、パスの角度、パスを受ける体の向きなどが不適切なシーンが散見されています。これは昨シーズンから見られますが、大外のレーンで縦にパスを繋ぐシーンなどで顕著で、この場合受ける側は背中にマークに付かれた状態で受けるしかなく、インナーレーンにサポートの選手がいなければそのまま元のパサーに返すしかなくなります。この場合やはり角度を付けたパスを送り、受ける側も内側に向かって走り込みながらボールを受けるのが適切です。プレシーズンを見ても、なぜかAチームはこれができておらず、そのまま開幕を迎えてしまった印象もあります。

②ネガティブ・トランジッションの問題

とはいえ、カウンターや高い位置でのターンオーバーからチャンスを作ることは何度かできており、昨シーズン磨きをかけたトランジッション戦術は健在だったと言えるでしょう。11分のラッシュフォードのシュートはカウンターから、13分のガルナチョのシュートは敵陣でボールを奪ってからの攻撃でした。前半にあった8本シュートのうち7本はターンオーバーもしくはカウンターから生まれており、ポジティブ・トランジッションの鋭さは今シーズンも大きな武器となるでしょう。ただ、一部で言われているような「ハイプレスが機能した」というのは違和感があります。相変わらず相手サイドバックへのプレスはほとんど掛かっておらず、簡単にハイプレスを無効化されています。トップクラブでこのようなプレスを行っているのはユナイテッドだけであり、やはりサイドバックがプレスに行くかウィンガーがケアするか決めた方が良いと思います。とはいえ、これだけ改善されないというのはテン・ハーグ監督の中ではこれでOKとなっている可能性もあります。ハイプレスに関しても今シーズンの変化に注目しましょう。

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一方で、最も酷い戦術フェーズとなったのが攻から守への切り替え、ネガティブ・トランジッションです。高い位置でボールを奪えない場合、中盤のスペースを使われウルブスの進行を許しまくっていましたが、ボールホルダーに近い選手の対応は非常にマズいものでした。26分のサラビアのシュートへと繋がる一連の流れを見るだけでも、多くの対応ミスが認められます。マウントが敵陣左サイドの深い位置でボールを失うところから始まりますが、レミナにボールが渡った段階でユナイテッドは5対2の数的優位にもかかわらず、誰もリアクションを起こしていません。その後、中盤に降りていたクーニャにパスを通されますが、この時マークが遅れたカゼミーロは無理なスライディングを仕掛け躱されます。しかしマルティネスがカバーに入っており、それは良かったのですが、クーニャの巧みなドリブルでボールを奪えずマルティネスも躱されます。この段階で2対3の数的不利になり、サラビアにポストギリギリのシュートを打たれました。

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このシーンで言うと、進行を阻止できなかったカゼミーロとマルティネスの対応に目がいきがちですが、個人的には失った瞬間の前線の選手たちの鈍すぎるネガトラにも原因があると感じます。レミナに渡った段階で周りに5人いて誰も鋭い反応を示さないというのは問題があると思いますね。特に前半はフォーメーション3-2-5状態が長く、前線の5人は攻撃意識が高かったために、ひっくり返された時の対応は緩くなりがちでした。加えて繰り返しになりますが、ウルブスのクーニャの巧みなドライビングなど、個のレベルでもウルブスが上回ったことでカウンター気味に攻撃を受けるシーンが多くなったと言えるでしょう。

③プレーヤー個人の問題

そして、多くの方が指摘しているように、カゼミーロの守備パフォーマンスが大きな問題となったのも事実と言わざるを得ません。カゼミーロの地上デュエルは12回ありましたが、その内勝利したのは2回のみ。またドリブルに対するタックルは4回試行して成功は0回となっており、中盤のフィルターとしては機能していない事がスタッツからもわかります。これはカゼミーロらしくないパフォーマンスであったのは間違いなく、タックルを仕掛けるタイミングも良くなく、簡単に飛び込むシーンが目につきました。後で述べますが、ユナイテッドのシステム的に中盤が空洞化する欠陥があったのは確かですが、守備の体勢が整っていないのに飛び込んでしまうのはカゼミーロの悪いクセでもあります。ウルブス戦では中盤で孤軍奮闘となるのであれば、遅らせる守備が必要だったでしょう。

また、マウントのパフォーマンスにも多くの人が満足していないでしょう。新加入のマウントにとってはこの試合がユナイテッドでの公式戦デビューとなったわけですが、先発メンバーの中では最低の30回のボールタッチに留まり(マウントは68分間のプレー)、キーパスも0本、SCAも1回のみと期待された仕事はできていません。4-1-4-1のダブル10番の左としてブルーノと並んでプレーしましたが、「7番を背負ったトップ下」という華やかなイメージには程遠いパフォーマンスだったと言えるでしょう。しかし、個人的にはマウントのオフザボールの動きには満足しています。そもそも、この試合で求められたマウントの役割はライン間での攻守の切り替えでした。そいった意味では前線の中ではもっとも鋭い切り替えができていましたし、ファイナルサードから自陣まで戻ってボールを奪い返したシーンもありました。アタッキングサードでのボール保持のシーンでは得意のハーフスペース侵入を何度も見せていました(ボールは来ませんでしたが...)。今後のアジャストに期待しましょう。

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攻撃面では、左ウィングで先発となったガルナチョのプレーが批判を浴びています。シュートは最多の4本と積極的な姿勢は見せましたが、ここぞというシーンでのボールロストも目立ち、全体的に空回りのパフォーマンスとなりました。プレシーズン最終戦のRCランス戦では素晴らしいパフォーマンスを見せ、期待が高かっただけに、少し残念な新シーズンスタートとなってしましました。このガルナチョのパフォーマンスは、ショーの偽SB戦術が影響したと見る向きもあります。確かに、タッチライン際でのサポートはいつもより薄かったかもしれません。また、マウントとの連携も殆どなく左サイドのユニットはほぼ機能していなかったことも影響はしていそうです。しかし、68分に交代で入ったサンチョがボール保持を安定させるのに一役買ったのを見ると、まだガルナチョがプレミアでの先発出場で安定したパフォーマンスを見せるには成長が必要かもしれません。ただ、まだ19歳で規格外の選手。シーズン終了時には欠かせない戦力となっている可能性も大いにあります。

④システム、構造の問題

ユナイテッドの苦戦の要因は、新システムにあったというのも間違いありません。今シーズンはマウントの加入により4-3-3が基本フォーメーションとなりそうなユナイテッド。昨シーズンは、エリクセンとカゼミーロでダブルボランチを組むことがほとんどでした。厳密にはボール保持時は4-3-3で非保持時は4-2-3-1という可変型だったと言えますね。しかし、ウルブス戦では4-3-3を通り越して4-1-4-1になっています。4-3-3との違いは、ざっくり言うと中盤が2人のインサイドハーフなのか、2人のトップ下なのかという事です。プレシーズンでは4-3-3で戦いましたが、なぜか開幕戦ではマウントとブルーノをより高い位置でプレーさせました。そしてこのことが中盤の空洞化を生み、カゼミーロ1人でのカバー範囲が広くなったところがあります。加えてウルブスは4-4-2であった為にカゼミーロ1人を6人で取り囲んでいる瞬間もあり、ここだけ見てもシステムの相性も最悪だったと言えるでしょう。

恐らく、テン・ハーグ監督は高い位置でターンオーバーを生み出すために4-1-4-1気味に選手を配置したと思います。昨シーズンのELバルサ戦などはこのシステムで効果的な戦いをしています。ただ、ウルブスの戦い方が想定できなかったために、当初の予定のようにバックラインを上げることができず、陣形をコンパクトに保てなかったと想像できます。マウントもブルーノも献身的に戻るシーンがありましたが、ディフェンス陣が遅らせる守備ができなかったために、2人が自陣まで戻るまでにはウルブスの攻撃は完了している場面が多かったです。後半68分でサンチョとエリクセンをガルナチョ、マウントに代えましたが、その結果ファイナルサードのボール保持が安定し、中盤のバランスも向上しました。ただ、それでも80分以降ウルブスに10本ものシュートを打たれています。最後までウルブスのパフォーマンスは素晴らしかったですし、最後までユナイテッドはディフェンシブなトランジッションを機能させるのに苦労しました。

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4-3-3は恐らくテン・ハーグ監督が理想とするシステムです。アヤックス時代もほぼ4-3-3で戦ってきました。攻撃意識が高くなれば、前掛かりになり、失った時には今回のようにカウンターに晒されるリスクがあります。アヤックス時代はリーグでは最強チームであり、ボール保持が安定していたためにそのリスクは少なかったと思います。しかしプレミアでも同じことが可能かというとそうではないでしょう。プレミアではほぼ全てのチームがよりアグレッシブに勇気をもって挑んできます。ファイナルサードでのボール保持を安定させられなければ、今後もこのような試合が多くなるかもしれません。やはりカギを握るのはマウントです。マウントをもう少し下げてバランスを取らせるのか、それともあくまでも高い位置でトランジッション戦術の要とするのか、これからの試合で注目ポイントとなりますし、噂されるソフィアン・アムラバト(フィオレンティーナ)やライアン・フラーフェンベルフ(バイエルン)などの中盤を補強するのかにも関わってきます。

👿まとめ

プレシーズンを決して良いパフォーマンスで戦えなかったユナイテッドは、シーズン開幕戦も同様にシャープさに欠けたパフォーマンスとなりました。しかし、ヴァランの先制点をオナナの好セーブやジャッジにも助けられて守り切り、クリーンシートでの勝ち点3獲得と結果的には上々となりました。直前での監督交代にも関わらず、素晴らしいプレーを見せたウルブスに対して、思うようなバランスで戦えなかったユナイテッドですが、開幕戦を勝利で飾れたことにまずは安堵ですね。上に書いてきたように、多くの苦戦の要因がありますが、選手個々のコンディションが上がってくれば問題とならなくなる項目もあるでしょう。一方で、今下手にシステム的なアンバランスに目を瞑ってしまうと、強豪チームとの試合やハイレベルなCLの戦いでボロが出ることになり兼ねません。プレシーズンには「Aチーム」「Bチーム」をはっきり分けたテン・ハーグ監督ですが、より臨機応変なラインナップが必要ではないかとも感じます。

選手個人に目を向けると、マウント同様にユナイテッドでの公式戦デビューとなったオナナは6本のシュートストップを見せ公式のMOTMを獲得。早速勝利に貢献しています。また、決勝ゴールを決めたヴァランは守備の面でも普段通り冷静に対応できており、それでいて勝利に強い執念を見せました。驚いたのはユナイテッドが後半開始時に円陣を組んだことです。ユナイテッドが円陣を組むってほとんど記憶にないのですが、さらに驚いたのがそこでリーダーシップを取ったのがヴァランだったことです。ブルーノではなくヴァランだった、そしてそのヴァランがゴールを決めて勝利したというのはなかなか感慨深いものがありました。そして、アシストを記録したワン=ビサカ。公式でも取り上げられていますが3アシストの可能性もありました。ワン=ビサカはコンディションも良いように見えましたね。

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23-24PL-1 スタッツ
23-24PL-1 試合結果

次節はトッテナム・ホットスパー・スタジアムでのスパーズ戦。8月20日(日)1:30キックオフ!カモン!ユナイテッド!!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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