【23-24夏の移籍情報】ラスムス・ホイルンド スカウティング・レポート【未来のスーパーストライカー】

Embed from Getty Images

こんにちはMasaユナイテッドです。

8月15日に開幕する新シーズンに向けて、これまでメイソン・マウントとアンドレ・オナナを獲得したユナイテッド。この2人はトップターゲットであり、今年のユナイテッドフロントは危な気満載ながらも素晴らしい補強を行っていると評価できるでしょう。そして、最も補強が必要なポジション、ストライカーの補強も間もなく完了する見込みです。2023年8月4日現在、アタランタの20歳フォワード、ラスムス・ホイルンドは7000万ユーロの移籍金でマンチェスター・ユナイテッドに加入することがほぼ確定となっています。2028年までの5年契約で1年のオプションが付く、と移籍マーケットに精通したイタリア人ジャーナリスト、ファブリッツィオ・ロマーノ氏の情報です。

そこで今回はこのデンマーク人ストライカー、ラスムス・ホイルンドのスカウティング・レポートをプロフィールと共にお届けします!いったいどんなプレーヤーなのか、一緒に見ていきましょう!

以下項目です。

①プロフィール

選手名:ラスムス・ヴィンテール・ホイルンド (Rasmus Winther Højlund)
生年月日:2003年2月4日(20歳)
国籍:デンマーク
身長:191cm
ポジション:ST
チームキャリア:ブレンビーIFユース(2016~2017)→FCコペンハーゲン(2017~2022/2月)→SKシュトゥルム・グラーツ(2022~2021/22)→アタランタ(2022/23~)
利き足:左
契約終了年:2028年6月30日
市場価値:45m€(TransferMarktのデータより)

ラスムス・ヴィンテール・ホイルンドは2003年2月4日にデンマークの首都コペンハーゲンで生まれました。父親は元サッカー選手、母親は元陸上選手だということです。ラスムスは長男ですが、彼には双子の兄弟(オスカーとエミール)がおり(ともにコペンハーゲンU-19に所属)共にホースホルムという町で育ちました。わずか2歳でボールを蹴り始めたホイルンドは幼少期には水泳やテニスも習っていたようですが、4歳で地元のクラブ ホースホルム・ウセロッドでサッカーを始め、9歳で他のスポーツは全て辞めてサッカーに集中し始めます。ちなみにこのころ、元アーセナルのストライカー、ニコラス・ベントナーとも知り合いで一緒にトレーニングをしたこともあるようです。しかしながら、ホイルンドはクリスティアーノ・ロナウドの大ファンであり、マンチェスター・ユナイテッドが大好きだと公言していたというのは有名な話です。

12歳でブレンビーIFに移籍しますが、1年も経たずにデンマーク屈指の名門、FCコペンハーゲンがスカウトにやってきます。16-17シーズンは地元のホルベックFCでプレーした後、FCコペンハーゲンのアカデミーに入団しました。コペンハーゲン入団後にストライカーに転身。スピードとフィジカルは称賛されU-19に所属していた17歳の時にトップチームデビューを飾ります。21-22シーズンはリーグ戦15試合に出場し、トップチームに昇格を果たしています。しかし、その後監督が代わった事で出場機会が激減。幼少期から愛した心のクラブを退団することを余儀なくされます。21-22シーズンの後半からオーストリア・ブンデスリーガのシュトゥルム・グラーツに移籍。トップチームのストライカーとして迎えられます。素早く前線に繋ぐプレースタイルにホイルンドは上手く適応。半年の13試合で6ゴール1アシストを記録しました。続く22-23シーズンはグラーツでシーズンに入り5試合で3ゴールを記録しますが、オーストリアリーグでの活躍を受けてセリエAのアタランタが獲得に乗り出します。そして8月27日、ホイルンドは1700万ユーロでアタランタに移籍することになりました。

Embed from Getty Images

また、デンマーク代表には2022年9月22日にUEFAネイションズリーグのクロアチア戦でデビューを飾りますが、同年のカタールW杯のメンバーには招集されませんでした。しかし2023年3月のユーロ2024予選フィンランド戦で初先発を飾るとハットトリックを記録。カザフスタン戦でも2ゴール、スロベニア戦で1ゴールをマークし、ユーロ予選のトップスコアラーとなっています。ヨーロッパ5大リーグ初挑戦となった22-23シーズンのセリエAでは32試合に出場9ゴール2アシストを記録。また、コパ・イタリアにも2試合に出場し1ゴールを挙げています。

②スカウティング・レポート

ホイルンドはしばしば「第2のアーリング・ハーランド」と形容されます。確かに2人には類似点があります。同じ北欧出身でブロンドの髪を持ち、両者ともに190cmを超える長身で左利き。そしてボックス内で危険な存在となるストライカーです。さらにこの形容に拍車をかけているのがホイルンドが所属するアタランタの指揮官であるジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督のコメントです。

ホイルンドにはその精神、エネルギー、激しさだけでなく、驚くべき技術的な質も備わっています。彼にはまだ改善の余地がたくさんある。 彼はハーランドと非常によく似た特徴を持っている。彼はとても速く、100メートル走で11秒を切るが、これはそれほど全力ではありません。身長の割に重心が低いフォームで走ります。私は彼が素晴らしいキャリアを積むだろうと確信している、彼は日に日に成長している。

ホイルンドを最も近くで見ている監督のこのコメントは大きな説得力を持ちます。しかしながら、ゴール数で見ると、リーグ戦33試合で36ゴールを挙げたハーランドに対してホイルンドは32試合で9ゴールとなっています。ゴールという結果だけ見ると大きな開きがあります。「ホイルンドはハーランドに似ている」この説が正しいのかどうか、ということも踏まえてホイルンドのプレースタイルをスカウティングしていきます。

22-23 ホイルンドvsハーランド 引用元:Fbref

2-1.ストライカーとしての資質

まずは得点力。ホイルンドは昨シーズンのセリエAで1832分出場し、ゴール期待値xG9.5から9ゴールを挙げています。90分当たりのxGは0.47。トータル54本のシュートを放ち、ショッツ・オン・ターゲット(枠内シュート数)は28本。枠内シュート率は51.9%となります。90分当たりのシュート数は2.65。ゴール/ショットつまり決定率は0.17。1ショット当たりのゴール期待値xG(PKを除く)は0.18を記録しています。一方のハーランドは昨シーズンのプレミアリーグで2769分出場、ゴール期待値xG28.4から36ゴールを挙げていますが、その内PKで7ゴールを記録しているのでPKを除外した期待値は23.1で実ゴール数は29になります。90分当たりのxGは0.92。トータル116本のシュートを放ちショッツ・オン・ターゲットは53本。枠内シュート率は45.7%となっています。90分当たりのシュート数は3.77。決定率ゴール/ショットは0.25。1ショット当たりのゴール期待値xGは0.20となっています。このスタッツの比較からわかる事は、ハーランドは「質」もさることながら「量」で圧倒しているのに対して、ホイルンドは枠内シュート率や1ショット当たりのゴール期待値などシュートの「質」が高いということです。これはもちろんシティとアタランタというチャンスメイク数に大きな差があるチーム同士の比較ともなるので一概にストライカーのクオリティを表すとは言い難いですが、ホイルンドの90分当たりのxG0.47という数字はセリエAの中でも上位に位置しています(10位)。

Embed from Getty Images

また、ホイルンドのシュートエリアを見てみると、3本だけがボックス外からで、それ以外はボックス内でのシュートとなっています。さらに、その多くが左ハーフスペースから中央に掛けてに集中していることもわかります。ここは左利きのホイルンドが得意とするシュートエリアであり、アントニーのような右から巻くようなシュートはほとんどなく、左足のインステップでの強力なシュートを好みます。しかし、右足も遜色なく強いシュートが打てるのもホイルンドの特徴であり、ハーランドとの違いでもあります。ゴールに関して特徴的なのはグラウンダーのクロスに合わせるタップインシュートが多いということ。これはハーランドとの共通点ですが、それだけディフェンダーの背後を取る動きに長けている証拠でもあります。まさにストライカーですね。

22-23ホイルンドシュートエリア 引用元:Opta Analyst

2-2.オン・ザ・ボール

ホイルンドのボール保持に関して見てみると、9番に求められるようなポストプレーはあまり見られませんでした。これはアタランタの戦術的にあまり縦パスが入らない(カウンター戦術がメイン)ことも関係しているかもしれません。ホイルンドは体格にも恵まれ、フィジカルバトルでも引けを取らないタイプですが、スペースにボールを呼び込むことを好み、ボールを受けたら素早くターンしてドリブルで運ぶプレーが多いです。これはホイルンドの特徴の1つであるスピードを活かすためですが、トランジッションサッカーで素早い攻撃を仕掛けたいユナイテッドにとって、大きな助けとなると予想できます。ちなみにホイルンドのスタッツで特徴的なのがProgressive Pases Rec(相手ゴールへ向かうパスを受け取った回数)で、90分当たり10.99回とセリエAのストライカーの中でトップの数字となっています。味方をフォローしているとも取れますが、ポジショニングの良さと奪われないという自信の表れであり、ボールを多く要求するタイプだということができそうです。また、ボールタッチエリアに関しては、ワイドに開いて受けるストライカーが多い現在ですが、やや左寄りの中央スペースが多く、最もゴールに近い位置を意識していることがわかります。しかし、アシスト数2が示すように味方とのリンクアッププレーに特化しているというよりは、やはり自分でゴールに突き進んでいくタイプのように見えますね。

Embed from Getty Images
22-23 ホイルンド ボールタッチエリア 引用元:Opta Analyst

2-3.守備とウィークポイント

続いて守備面を見てみましょう。アタランタはガスペリーニ監督の元、マンマークディフェンスを行うチームでもあります。ホイルンドは最前線でプレスのスイッチャー役を担いますが、相手CBもしくは相手アンカーにマンマークで付くこともあります。とても集中してタスクをこなしており、よく訓練されていることがわかります。相手のトラップがやや大きくなる場面などでは猛然とスプリントしてプレスを掛けるシーンもあり、キーパーからボールを奪ってゴールを決めたシーンが2つほどありました。ヴェグホルストほどではないですが、標準レベルのプレッシングは期待できそうです。ただ、パスコースを切りながらランニングしたり、カバーシャドウなどのプレス技術的にはまだ改善の余地がありそうです。また、タックルやボール奪取といった守備技術全般に関しては高くなく、守備で体力を使わずに攻撃時に残しておくといった姿勢にも見えます。

最後にホイルンドのウィークポイントを挙げておきましょう。データが示す通りホイルンドは空中戦に強くありません。空中戦勝率は37%でハーランドの50%に大きく差がつけられており、マルシャル(37%)やラッシュフォード(33%)とあまり変わらない数字です。実際にセリエAではヘディングでのゴールはなく、デンマーク代表の初先発試合となったハットトリックを決めたフィンランド戦のゴールしかありません。このあたりはユナイテッドでプレーすることであっさり改善される可能性もありますが、ベニ・マッカーシーコーチに伝授してもらうべきスキルかもしれませんね(笑)。あと、一部で言われているのがキーパーとの1対1に弱いのではないかということ。確かにそういったプレーだけを集めた動画が出回っており、ホイルンドのスキルに良くない印象を与えています。もちろん1対1を外すシーンはサッカーではよくあることでもありますし、どんな一流選手もそういったプレーだけ集めれば同じような動画ができるでしょう。確かにホイルンドはコントロールショットをあまり打ちません。ラッシュフォードと同様に強いシュートを選択することが多いです。強いシュートはキーパーにすればタイミングを読みやすい面もあり、もしかしたらそういったことも影響しているかもしれませんね。しかし、数字的にはゴール期待値と遜色ない実ゴール数を記録しているので一概に1対1に弱いとは言えないでしょう。

Embed from Getty Images

👿総括とユナイテッドにもたらすもの

いかがでしたか?やはりというか当然というか、現時点でハーランドと比較できるほどのレベルには達していません。特徴という意味では、スピードとパワーがあり、ゴール前に飛び込んで合わせるシュートを得意としているというところはハーランドと同様の特徴を有しています。一方で、シュート数自体の多さやヘディングでのゴールなどはハーランドが圧倒しており異なる特徴を示しています。しかし、興味深いのはシュートのバリエーションで、右足とヘディングの頻度ではホイルンドがハーランドを上回っています。これはストライカーとしてとても重要だと思います。ボックス内でどのようなシュートを打つのか予測しにくいというのは相手に致命傷を与える可能性が大きくなることを意味するからです。もちろん技術的にはまだまだ改善の余地があり「殺傷力」を高める必要がありますが、5大リーグの23歳以下のストライカーをゴール期待値(PK以外)の大きい順に並べた結果ホイルンドは8位に着けています。上位にはハーランドを筆頭にユスファ・ムココ、アンス・ファティ、フォラリン・バログンなども名を連ねますが、そこにホイルンドも入っています。ここにホイルンドのポテンシャルの高さが表われていると言えるでしょう。

22-23 5大リーグストライカー比較 引用元:The Athletic

ユナイテッドはこの「未完の20歳のストライカー」に7000万ユーロを支払います。これはクラブがホイルンドの「ポテンシャル」を高く評価していることの表れです。今後10年、ヨーロッパでトップクラスのストライカーとして君臨できる可能性を秘めています。もちろん、それには環境とシステム的な一致、有能な指導者が必要で、さらに本人のぶれない精神的な強さと謙虚に学ぶ姿勢も求められます。そしてそれは、今のユナイテッドがホイルンドに提供できるものであり、ホイルンド自身が持っている資質だとも思います。テン・ハーグ監督は当初、ストライカーの獲得候補の筆頭にハリー・ケインを挙げていたそうです。しかし、移籍金の高さからターゲットをホイルンドに変更。テン・ハーグ監督は特にデンマーク代表でのプレーに感銘を受けたとされています。ケインならば即戦力として申し分なかったと思いますが、ユナイテッドは今後長期に渡って活躍できるチームのアイコンと成り得るプレーヤーを選んだということです。そして何より、彼自身がユナイテッドサポーターであるという事がファンにとっては嬉しいですね。

Embed from Getty Images

ホイルンドが才能を開花できるかどうかは誰にもわかりません。しかし、今回のスカウティングで見てきたようにその素質はトランジッションフットボールに磨きをかける2年目のテン・ハーグ戦術に必ずマッチするはずです。ラッシュフォードやサンチョ、アントニーと共にフルスピードでゴールへ向かって突進するプレーを想像しただけでワクワクします(笑)。待望の若い「9番」タイプの獲得は何年振りでしょう?10-11シーズンのチチャリートまで遡る??ユナイテッドの歴史の中で偉大なストライカーはたくさんいましたが、個人的にはファン・ニステルローイやファン・ペルシのようにゴールを量産するストライカーになることを期待します!

最後まで読んで頂きありがとうございました!

コメント

タイトルとURLをコピーしました