【22-23コラム】ロナウドの衝撃インタビューと電撃的退団について想うこと

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こんにちはMasaユナイテッドです。

11月22日、クリスティアーノ・ロナウドが双方合意のもと、マンチェスター・ユナイテッドを退団することが決定しました。2度の在籍期間中346試合に出場し、145ゴールを挙げたロナウドですが、最後はクラブの許可なくピアーズ・モーガン氏とのインタビューをセッティング、クラブ批判を展開し契約解除というなんとも悲しい結末を迎えました。2021年8月、多くのファン、サポーターに歓迎されチームの救世主となるべくユナイテッド復帰を果たしたロナウドですが、そのロマン溢れる夢はロナウドの言うように「悪夢」となり双方が望んだ結末には至りませんでした。

このインタビューでロナウドが伝えたかったこととは何だったのか?そもそもロナウドのユナイテッド再加入は失敗だったのか?など、独自の考えを交えながらロナウドに関しての記事を書きます。賛否両論ある内容かもしれませんし、事実を正確に捉えられていないところもあるかもしれませんが、今回の、そしてこれまでのロナウドに対する思いをコラムにしました。

以下項目です。

①ロナウドの主張

イギリス人ジャーナリスト、ピアーズ・モーガン氏によるロナウドのインタビュー。その衝撃は全世界へと広がり11月22日、ロナウドとユナイテッドは双方合意の下契約を解除し、ロナウドの即時退団という結末へ向かうことになりました。このインタビューでロナウドはクラブ批判、監督批判、若手選手について、今夏の移籍騒動とツアー不参加について、家族についてなど、赤裸々に語っています。ロナウドは「僕には今クラブ内部で進んでいることを無視し続けることはできなかった。とても未熟で、明確な目標もなく、リーダーシップや組織もない。ただのアイディアの砂漠だ。猛スピードで変わらない限り、将来は真っ暗だ」と語り、クラブに対する危機感を強調しています。しかし、クラブがファーガソン退任以降進歩していないという内容はかなり前に報じられていますし、多くの人にとってもすでに認知されていることです。さらに昨シーズンの段階で、若手選手がアドバイスを聞かないというのもロナウド自身が語っています。内容の多くは新しくもなく、「まぁ、ロナウドはそう思ってるだろうな」という内容だったと言えます。にも拘わらず、これほどのインパクトを与えたのは、クラブの許可なくインタビューを自らセッティングし、公然と「マンチェスター・ユナイテッドに対して反旗を翻した」ためです。

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さらに「ファンは真実を知るべきだ」とも言っていますが、その内容の大半は傷ついた己の尊厳、「プライド」を取り戻すためのものです。確かに、メディアが100%真実を報じている可能性は限りなく低いですし、当事者にしかわからないこともあります。例えば、今夏のプレシーズンツアー不参加の理由が、娘さんの入院だったというのは恐らくこれまでどこのメディアも報じていないと思います。ユナイテッドの発表では「家庭の事情」とだけ示されていたはず。当時のメディアは、退団への布石とツアー不参加を関連づけて報じており、ロナウドも言っているようにクラブ内でも疑っていた人物がいた可能性が高いでしょう。

このように、真実が捻じ曲げられていることに我慢できないロナウドの心境は理解できますが、もっともロナウドが伝えたかった「真実」とは何だったのか...。恐らくは夏の移籍市場で、ロナウドを欲しがったクラブはサウジアラビアのアル・ヒラルだけだったという点ではないかと思います。当時のメディアはチェルシー、バイエルン、バルサ、ナポリなどに逆オファーを掛けるも具体的な打診には至らなかったと報じていますが、ロナウドはこれを否定。複数のオファーがあったがユナイテッド残留を決断したと言っています。つまりロナウドは、自分はまだまだヨーロッパトップクラブでプレーする資格があるし、多くのビッグクラブが欲しがる選手だと言いたいのです。しかし、多くのファンサポーターにとって、それはどうでも良いでしょう...。多くの人は、現実としてユナイテッドでプレーするならどんなスーパープレーを見せ、何をチームにもたらすのかが知りたいのです。オファーの数でロナウドの価値を知るのではなく、ピッチ上でそれを示してほしかったというのが個人的にも強く思うところです。今シーズンのロナウドは、一度も輝くことなくユナイテッドを去っていくことになりました。そして、本人の中では輝けなかった理由は貧弱なクラブであり、監督にあるとしています。

*夏の移籍騒動についての記事はこちら

②監督との関係性

ロナウドは現監督のテン・ハーグに対して「彼のことはリスペクトしていないよ。なぜなら彼が僕に対するリスペクトを見せないからね。僕に対してリスペクトを持たない人のことは、僕もけっしてリスペクトするつもりはないよ」と語り、関係性が完全に崩壊している事を認めています。スパーズ戦の途中退席で決定的となった2人の関係性ですが、ユナイテッドをずっと追っている人はテン・ハーグがロナウドをリスペクトしていないとは感じていないでしょう。ロナウドの必要性を事あるごとに訴え、コンディションさえ上がれば結果を出せると言い続けてきました。15節のヴィラ戦ではキャプテンマークも与えるなど、それなりにロナウドを気に掛けています。しかし、ロナウドが言っているのは「自分の思う形でのリスペクトがなかった」ということです。つまりは「特別扱い」を要求しているのです。

スパーズ戦の途中出場拒否と退席はその最たる例に過ぎず、結局は「スタメンで自分の好きなようにプレーさせろ」というのがロナウドの求めていることでしょう。しかし、この「特別扱い」こそがチームの競争力を低下させた要因の1つと見るテン・ハーグ監督がこれを認めるはずがありません。例えロナウドであっても、規律に反した者には厳しく対処しました。ロナウドは、スパーズ戦の事件後の出場停止は「やり過ぎ」だと言っていますが、37歳の選手がこんなことで罰せられることを恥じるのが先ではないかと思います。ただ一点ロナウドに同情するのは、確かにスパーズ戦残り3分で出場させて何になるのかというところ。これに関してはロナウドがテン・ハーグに「挑発されたと感じた」というのは理解できます。もちろんそれでも「喜んで!」と出て行くベテランもいますが、ロナウドは性格的にそうではないですね...。指示を無視するというのは擁護できませんが、そこは監督側の配慮があっても良かったのではないかと思います。ちなみにThe Athleticの報じるところではテン・ハーグ監督は就任後、ロナウドをクラブに留めておきたいと考えていましたが、4-0で負けたブレントフォード戦のあと、クラブ幹部にロナウドの移籍を認めるように訴えたとしています。テン・ハーグ監督としても早い段階でロナウドをチーム戦術に当てはめるのは困難であると判断したのは想像に難くないですし、いくら表面上はロナウドへの信頼を強調しても、態度や言葉や起用法でロナウドは監督が自分を必要としていないというのを感じ取ったということも想像できますね。

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さらに、前監督であるラングニックに対しても「監督ですらなかった人間が、どうしたらマンチェスター・ユナイテッドのボスになってしまうんだ? 彼のことは耳にしたことすらなかったよ」と発言。この発言の背後にも、ラングニックの戦術的要求(前線からのプレス)に従う気がなかったロナウドの「わがまま」があります。就任当初は4-2-2-2でロナウドを2トップで起用しますが上手く機能せず、4-2-3-1に戻しますが今度はロナウドは「2トップにしてくれ」と言い出し、さらには「(パフォーマンスの良くない)マグワイアをベンチに下げるべきだ」と直談判したと言われています。21-22シーズン第17節のブレントフォード戦では途中交代に対して明らかな不満を示すなど、ラングニック監督には全くコミットしようとしませんでした。ラングニック監督もロナウドを戦術的にプレーさせることは不可能と判断し、冬の移籍期間にロナウドの放出をクラブに訴えます。しかしこれは却下され、逆に上層部はラングニックの手腕に疑問を持ち始めます。バラバラなロッカールームとフロントの後ろ盾を失ったラングニック監督の苦労は計り知れませんし、確かに監督としては実力不足の面があったとはいえ、ラングニックに対しては同情の余地もあるでしょう。

そして、ユナイテッド加入時の監督となったスールシャールに関してはロナウドは「スールシャールの事は好きだよ。その事を僕はここに留めている。オーレ(スールシャール)は僕にとっては素晴らしい人間だ。難しかった。サー・アレックス・ファーガソンを超えるのは難しかったんだ。でも彼は素晴らしい仕事をしたと思うよ。」と言っています。ロナウドがそう感じるのは、プレーに関して自由を与え、エバートン戦のスタメン落とし後の、外部からの圧力以降は常時スタメンとして扱い「特別扱い」を受けたためだと考えられます。しかし、結果的にはロナウドの加入はスールシャールが2シーズン掛けて作り上げたスカッドのパワーバランスを崩壊させ、ロナウド加入後わずか13試合でスールシャール政権は崩壊します。もちろん、スールシャールの力量不足、マネジメントの失敗などロナウドだけの責任ではありませんが、個人的には移籍決定時の記事で「ロナウド獲得のデメリット」として懸念を示していますし、第6節のヴィラ戦での敗戦の段階で(ロナウド加入後5試合目)「ロナウド獲得の副作用」としてその獲得のマイナス面に言及しています。私と同様に獲得が決まった段階でロナウド獲得が良い結果にならないと感じていた人も結構いたはずです。

*ヴィラ戦の記事はこちら

③ロナウド加入は失敗

ロナウドの再加入は失敗だったのか?これは残念ながら失敗です...。そもそも獲得の経緯からしてクラブの無計画性を示すものとなっています。2021年の夏、ユベントス退団の動きをとるロナウドと代理人であるジョルジュ・メンデスはシティ移籍を画策します。ロナウド自身が認めているように移籍成立直前で、サー・アレックスの介入によりユナイテッドが掻っ攫う形でロナウドを獲得します。もちろん、ファーガソンの一声で全てが覆ったとは思いませんが、シティ側の躊躇とジョルジュ・メンデスの暗躍、オーナーであるグレイザー家の思い付きなどが絡んで当初の計画にはなかった移籍が起こりました。これは当時の監督であるスールシャールの預かり知らないところで進行し、コーチングスタッフの間でも否定的な意見があったと言われています。歴代最高の成績を誇るロナウドの強烈なキャラクターはまさに劇薬でした。スールシャールの作り上げたスカッドバランスは崩れ、ストライカーとして期待されたマルシャル 、グリーンウッド、カバーニなどの出場機会に影響を与えることになります。これに関しては、以前のガーディアン紙の表現が最もしっくりきます。

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振り返ってみると、この夏(2021年)、中盤やフルバックの強化ではなく、ジャドン・サンチョとクリスティアーノ・ロナウドに全力を注いだ決断は、クラブの現代史における分岐点のひとつになるかもしれない。つまり、新しい家を建てようとしていたのに、YouTubeの視聴数のために家を爆破することにしたようなものだ。

引用元:The Guardian

まさにこの通りだと思います。スールシャールの築きあげた家は、インパクトを与える為に爆破されたのです。このように加入の時点から、クラブの明確な指針のなさの産物としての側面を含んだ移籍だったと思います。ロナウドがインタビューで語ったように、ロナウド退団以降クラブのメンタリティは失われ、とてもレベルの低い基準でクラブ運営が行われてきました。スールシャールがやってきて少しは改善されたとはいえ、これは側から見ている我々も肌感覚でわかるほどのレベルの低さでした。ロナウドは加入してその現実を目の当たりにし、がっかりすると同時になんとかチームを助けようと努力します。ゴールを挙げチームを救った試合もありました。CLでは相変わらずの存在感で、まだまだ衰えていないことを示しました。しかし、その努力もチームの現状を変えるどころか、一部の選手はロナウドのアドバイスや経験を聞き入れられることなく、さらにチーム状況は悪くなるという悪循環にハマっていきます。ある意味ロナウド自身もクラブの一貫性のない補強戦略の被害者ですが、クラブ側もロナウド側も、当初思い描いた成功には程遠かったという意味でも移籍は失敗でした。ロナウド自身も「復帰は失敗」と断言しています。

④決別は避けられない

ロナウドのインタビューは到底受け入れられるものではなく、クラブは契約の解除を決定しました。表面上は「双方合意のもと契約解除」ですが、実際は違約金を払わないということからも「懲戒免職」「解雇」だとわかります。ロナウドの行為は契約違反に値すると判定されたということ。ロナウドもこうなることは予想してインタビューの公開に踏み切ったと思いますし、ロナウドがいることでチームが上手くいかないクラブ側と、これ以上テン・ハーグの元でプレーしたくないロナウド側の利害は一致していたと思います。どちらにとっても決別という道しかなかったということ。残念なことですが、クラブの取った対応は間違っていません。

今回の件に限らず、ユナイテッド加入以降多くの場面でロナウドに対する賛否両論が繰り広げられてきましたが、ロナウドを擁護する人はロナウドが特別扱いされて当然だと考えている面があると思います。確かにロナウドほどのスーパーなタレントには自由にプレーさせてその能力を最大限に活用する方が上手くいくという考えもありますし、レアルやユベントスでのロナウド、あるいはメッシやネイマールなど特別な才能を持った選手の例を見ても、そうやって上手くいくチームもあります。しかし、現在のユナイテッドで、それでは上手くいかないのはスールシャール、ラングニック、テン・ハーグの3人の監督を見ても明らかです。ロナウドを上手く扱えるほどのレベルにチームが達していないとも言えますが、個人的にはユナイテッドの目指す方向とロナウドを特別扱いすることは同じベクトル上には存在しないのだと思います。

ロナウドは間違いなく歴代最高選手の1人です。クラブでは通算701ゴール(内ユナイテッドでは145ゴール)。ポルトガル代表では118ゴールを記録。サッカー史上最多得点記録保持者にして代表得点世界記録保持者。3連覇を含めてCLを5度制覇し、ヨーロピアン・カップからの大会名変更後では歴代最多の優勝回数を経験しているロナウド。プレミアリーグで3度、スペイン・ラ・リーガで2度、イタリア・セリエAでも2度優勝し、欧州三大リーグで優勝した史上初の選手となっています。またその全てのリーグで最優秀選手と得点王を獲得し、リーグ戦、カップ戦、スーパーカップで優勝した歴史上唯一の選手。さらにCLで7度得点王を獲得し、バロンドールを5度受賞するなど数々の栄誉を手にしてきました。ユナイテッドでの多大なる貢献と、ユナイテッドの認知度を爆発的に上げたという点には心から感謝しますが、個人的には1度目の退団も(レアルに行きたいと訴え続けた)今回の退団もロナウドのエゴイスティックな態度により、胸を張って「ユナイテッドのレジェンドだ」と言える気分ではなくなってしまいました...。

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それはとても悲しく残念ですが、同時に私は03-04シーズンの開幕戦、18歳のロナウドのユナイテッドデビュー戦を忘れないでしょう。あの時のワクワク感はそれ以降の誰も超える事ができていません。ジョージ・ベストが「間違いなく最もエキサイティングなデビュー」と称した様に、あの時のロナウドには栄光の未来が見えました。理屈ではなく、感覚的にロナウドは成功すると確信させる何かがありました。まさに新時代の幕開け。あの衝撃は忘れないでしょう...。しかし、これからユナイテッドとロナウドは別々の道を進みます。ようやく軌道に乗ったユナイテッドはもう止まる事はできません。過去の栄光には敬意と感謝を抱きつつも大事なのは今であり、今が続いてできていく未来です。ロナウドとの決別は過去との決別でもあります。そしてそれはお互いにとって栄光へと続く道だと信じましょう。19年前の8月16日と同じように。

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ありがとうロナウド。そして、さようなら。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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