【21-22FA Youth Cup Final】祝!優勝!!マンチェスター・ユナイテッドU-18 強さの秘密に迫る!

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こんにちはMasaユナイテッドです。

21-22FAユースカップ決勝戦。ユナイテッドU-18はオールド・トラッフォードでノッティンガム・フォレストU-18と対戦しました。試合はキャプテン、ベネットのゴールとエース、アレハンドロ・ガルナチョの2ゴールなどで3-1でフォレストを撃破。2011年、ポグバやリンガード世代が成し遂げて以来の栄光を手にしました。トラヴィス・ビニオン率いるヤングレッズは、シアター・オブ・ドリームスに集まった67492人の観衆の前で、威風堂々とプレー。かつてユナイテッドアカデミーを率いたウォーレン・ジョイスが監督を務めるフォレストを破り、見事トロフィーを獲得しました。

今シーズン、ユースカップだけでなくU-18プレミアリーグでも印象深い躍進を披露したU-18。今回は「Class of 22」と称される彼らの強さの秘密について迫ります!

以下項目です。

👿ラインナップ

21-22FA Youth Cup Final ユナイテッドU-18vsフォレストU-18 ラインナップ

①決勝戦の総括

67000人を超える観客。チケット販売価格がわずか1£だったこともありますが、ユースレベルの試合でこれだけの観客を集めるのは恐らく例がないでしょう。それだけこの決勝戦は注目が高かったということですが、ユナイテッドU-18は臆するどころか観客を煽って味方にする大胆さを見せました。11回目、そしてポグバ、リンガードを有し栄光を勝ち取った前回優勝から11年。「Class Of 22」は偉業を成し遂げました。その強さの秘密に迫る前に、決勝戦を総括しましょう。

ラインナップは上記を参照。システムは4-2-3-1で、3-0で勝った準決勝ウルブス戦と同じスターティングメンバーでした。今大会これまで5ゴールを挙げている注目度No.1のガルナチョ(11*背番号)と、ストライカーのチャーリー・マクニール(9)を筆頭に、Nextポグバと称されるコビー・マイヌー(6)や、ノルウェーの魔術師イサーク・ハンセン=アーロン(10)なども順当に選ばれました。17歳のガルナチョは、プレミアリーグ37節のチェルシー戦で数分ながらトップチームデビューを果たしましたが、アルゼンチン代表への招集も含めてブレイクのきっかけとなったのはこのFAユースカップでしょう。そういった意味で、ガルナチョへの注目度は飛び抜けており、文字通り「ガルナチョの大会」になるのかも注目されました。

試合は、立ち上がりからハンセンやマイヌーが積極的に仕掛け気迫を見せます。13分にハンセンの鋭いドリブルがファールを誘いフリーキックに。左SBのサム・マリー(3)が蹴ったボールにCBでキャプテンのリース・ベネット(5)が頭で合わせて先制します。その後もマイヌーのパスからガルナチョがシュートを放つなど、ユナイテッドが優勢に試合を進めます。しかし、前半終了間際にジョシュア・パウエル(7)が放ったシュートをキーパーのラデク・ヴィテック(1)がキャッチミス。1-1の同点となります。

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後半フォレストもチャンスを作りますが、すぐさまユナイテッドが反撃。マクニール、ガルナチョ、フラード(2)がシュートを放ち、ストレット・フォードエンドの観客を沸かせます。64分にはハンセンとマクニールを下げてマキシ・オイェデレ(16)とジョー・ヒューギル(17)を投入。押し込みながらも中々ゴールを奪えない展開が続きます。すると77分、ペナルティボックス付近でガルナチョがザック・アボット(2)に倒されPKの判定に。これをガルナチョ自ら決めて勝ち越しに成功!ここでガルナチョはロナウドの「siuuuuuuu」のゴールパフォーマンスで観客を沸かせます。さらにアディショナルタイムの94分、アタッキングサードでボールを奪ったガルナチョが、ボックス内に持ち込み左足でシュート。これが決まって3-1!ユナイテッドが勝利。栄冠を勝ち取りました

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②身を結んだリクルーティング

それでは、これからU-18の強さの秘密を紐解いていきたいと思います。最初の強さの秘密は「身を結んだリクルーティング」です。快挙をやってのけたU-18ですが、その源流は2年前にあります。2020年9月、世界はコロナパンデミックの影響で混乱していましたが、当時のトップチーム監督スールシャールを始め、FDに就任したジョン・マートフは内部改革を徐々に進めていました。ユナイテッドアカデミーはベッカム世代(Class of 92)を筆頭に、常にトップチームでプレーできる選手を輩出し続けていますが、ファーガソン退任以降の混迷期の影響はアカデミーレベルでも見られ、アドナン・ヤヌザイやジェームズ・ウィルソンなど期待される選手がなかなか大成しない時期もありました。そうこうしている内に、育成部門でも改革を実施したシティやリバプールなどは着実に力をつけ、「若手育成」では一日の長があるはずのユナイテッドはどんどん追い抜かれていきます。

そんな状況を変えるべく、スールシャール監督はトップチームでも若手に積極的にチャンスを与え、アカデミー部門でも責任者を務めるかつての盟友ニッキー・バットやキーラン・マッケナと連携しながら改革を進めていきます。その一環が2020年夏に起こったユース年代での「海外からの選手獲得」です。この年にユナイテッドにやってきたのがアルバロ・フェルナンデス(スペイン)、マルク・フラード(スペイン)、イサーク・ハンセン=アーロン(ノルウェー)、ラデク・ヴィデク(チェコ)、ウィリー・カンブワラ(フランス)、そしてアレハンドロ・ガルナチョ(スペイン)です。

それまでのユース・アカデミーは主に国内の少年たちが獲得のターゲットであり、国外の選手はほんの一握りという状況でしたが、この年に一気に6人の海外選手が加入しました。コロナ禍という非常に難しい時期に、16,17の青年が海外の地で新たな挑戦をするというのがどれほど困難だったか、想像するのも簡単ではありません。しかしすでに19歳になり、ユースカップの決勝に出られなかったアルバロとまだ16歳でこれからの選手であるカンブワラ以外の4人は全員決勝の舞台に立ちました。彼ら自身のメンタルもさることながら、それを指導、支援したクラブも評価に値するでしょう。

さらにこの年には、国内のリクルーティングでも目覚ましい成果を上げています。この年に加入したのはチャーリー・マクニール、ジョー・ヒューギル、ローガン・パイの3人。この3人も決勝のメンバーに選出されています。シティからやってきた「ユナイテッドファン」のマクニールは非常に期待されるストライカーです。決勝の舞台からは64分で退くことになりましたが、明らかに交代に納得できていませんでしたね(笑)。この気持ちの強さもマクニールの特徴。ガルナチョとのコンビも抜群で、マクニールもガルナチョとともに決勝進出の大きな原動力になりました。サンダーランドからやってきたヒューギルもポテンシャルは特大。昨シーズンは17歳にしてU-23で10ゴールを挙げる活躍を見せました。今シーズンは怪我もあり、マクニールに序列をひっくり返されますがU-18では12ゴールを挙げチーム内得点王です。

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このように、今回の優勝は2年前の撒いた種が実を結んだと言えるでしょう。ユース年代でのリクルーティング能力の向上は、アカデミーの強化に繋がっていることは間違いありません。しかしながら2020年12月31日にイギリスがEUを離脱したことで、海外からの18歳未満の選手獲得は不可能になった為に、今シーズンには同じことは起こりませんでした。それでも国内には目を光らせており、今シーズン開幕前にはリバプールからイーサン・エニスを獲得。冬の移籍期間にはブライトンからトビー・コリアーを迎え入れています。エニスもまた決勝のメンバー入りを果たしていますし、来シーズンにはエニスがガルナチョのお株を奪うと期待しています。

③トラビス・ビニオン

強さの秘密2つ目はU-18監督であるトラビス・ビニオンです。シェフィールド・ユナイテッドのアカデミーマネージャーであったビニオンは、2019年にユナイテッドのU-14~16のコーチング責任者に就任し、今シーズンの開幕前にU-18のマネージャーに抜擢されました。シェフ・Uではユース、U-18、U-23とアカデミーを率いてきたビニオンは、ハリー・マグワイア、デビッド・ブルックス、ドミニク・カルバート=ルーウィン、アーロン・ラムズデールなどを指導したことでも知られています。

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ビニオンは今シーズン、ニール・ライアン(現U-23アシスタント)からU-18を引き継ぎましたが、最初から順風満帆だったわけではありません。U-18プレミアリーグの開幕戦、シティに3-0で負け、続くリバプール戦でも0-5と大敗。フィジカル、テクニック、メンタル、タクティクス、すべての面でこの2チームに大きく劣っているのは明らかな状態でした。ちなみに大敗したリバプール戦のスタメンのうち7人は、今回の決勝の舞台に立った選手です。この事実だけ見てもビニオンを始めコーチ陣と選手たちがどれだけ1シーズンの間で成長したのかわかりますね。

シーズンが進むにつれて、徐々に組織が整備され選手達が本来持っている才能を見せ始めます。4節のボロ戦で引き分けた後、ストーク、ニューカッスル、ウルブス戦と3連勝。ニューカッスル戦ではヒューギルのハットトリックもありました。ガルナチョはU-18とU-23とを行ったり来たりしており、完全にU-18の主力だったわけではありません。主に今シーズンチームの主軸となったのはヒューギル、ノーケット、マザー、マイヌー、エニス、フラード、ベネット、マレーなどでした。

ビニオンは選手の個性が活きるようにポジションを割り当て、主にプレスとビルドアップを整備しました。アカデミーのスカッドは非常に流動的で、メンバー固定は不可能です。時にはU-23に選手を出し、ユースからまだ15、16歳の選手を引き上げて使う必要もあります。そのような状況でビニオンのチームは「安定」して勝てたわけではありませんが、転機となったのがFAユースカップでの躍進であり、第20節リバプール戦の5-5のドロー試合です。リバプール戦では51分まで4-1の状況でしたが、そこからカンブワラ、ヒューギルのゴールで1点差に迫ります。76分には再び失点し5-3になりますが81分エニス、89分再びヒューギルがゴールを奪いドローに持ち込みました。

この試合で強いメンタリティを見せたチームはその後5試合を4勝1分けで駆け抜けます。5月13日現在U-18プレミアリーグは1試合を残していますが、ユナイテッドは3位に着けています。1位のシティには20ポイントの差を付けられていますが、最終戦4位のノッティンガム・フォレストとの直接対決に勝てば3位が確定します。そして迎えた5月14日の最終節。先制を許す苦しい試合展開ながらも、後半開始早々にノーケットが決めて同点に。試合は1-1のドローで終了し、得失点差でユナイテッドが3位の座を死守しました。この試合でも、ビニオンU-18の特徴である粘り強さを見せてくれたと思います。

④個と組織のブレンド

3つ目の秘密は、このチームを特徴付けている「個と組織の絶妙なブレンド」です。現在のU-18には非常に個の能力の高い、個性的な選手が多く在籍しています。得点力のあるウィンガーであるガルナチョ、貪欲なストライカーのマクニール、テクニシャン兼ハードワーカーであるハンセン、フィジカルとテクニックを兼備したマイヌー、パッション全開のダニエル・ゴア、ヴィディッチの強さとリオの冷静さをもつベネット、攻守に積極的な副キャプテンのフラード、ダイアゴナルの動きと視野の広いマザー、目立たないが結構イケイケな16歳のジャクソン、戦術理解度の高いマレー、長身でイケメンかつ守備範囲の広いヴィテックなど、先発メンバーだけでもとてもキャラが立っています(笑)。

今回の決勝戦は、何かとガルナチョに注目が集まる試合ではあったのですが、初めてU-18の試合を見た方は、その他の選手たちの躍動感に興味をそそられたのではないでしょうか。整列した時からゴア(8)は声を出しチームに喝を入れていました。ダブルボランチとして、攻守のバランスを取っていましたがビルドアップにもしっかり参加し、守備の場面でもハードワークが光りました。ハンセンは、この試合もっとも目を引いた選手ではないでしょうか?本当にテクニックが高く、いつ見ても関心するのですが、ハンセンの特徴は献身性でもあります。10番でありながら6番並みに守備をする選手はそう多くないでしょう。マザー(7)も献身性が光った1人。彼の特徴は「ダイアゴナル」です。動きもパスもドリブルも斜めにベクトルを持つのがとても上手い選手です。ガルナチョ同様に得点力もあるウィンガーですが、よりハードワーク色が強いです。

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このように、このチームを支えているのはこういったハードワーカー達です。それでいてしっかり自身の特徴も出せる器用さも持ち合わせています。そして、上に書いたように、ビニオン監督の元、組織的な動きができるのもこのチームの強さの秘訣です。可変システムなどの上級戦術ではないのですが、組織だったプレスとビルドアップの多彩さはよく訓練されているように思います。特にビルドアップは、CBが広がってSBを押し上げ、開いたCB間にゴアが下りてくるパターンと、マイヌーが下りるパターン。ウィンガーであるマザーがボランチへ降りるパターンとが見られました。相手の配置と、味方の位置によりオートマティックに変化させていてとてもスムーズでした。U-23の試合を見れば分かりますが、個の能力は同じく高いU-23が思うように結果を出せないのは、この組織的な動きができていないためです。

当たり前かもしれませんが、優勝決定後の選手たちの様子からは、お互いがいかに信頼し合っているか、チームとして団結しているかが伝わってきました。まさに今のトップチームに欠けている事ですね...。そしてU-18には絶対的な自信がありました。もちろん圧倒的ホームだったこともあったとは思いますが、1年間やってきたことに対する自信です。そしてそれは「この道は間違っていない」という確信でもあったと思います。

👿まとめ

今シーズン11年ぶりにクラブにユースカップのトロフィーをもたらした「Class of 22」ですが、決勝戦のチームに掛かったプレッシャーは、アカデミーレベルでは体験したことのないほど大きかったはずです。スタンドにはファーガソンやブライアン・ロブソンを始め、レジェンドたちが勢ぞろい。デ・ヘアやブルーノなどの現役選手達、友人、家族、そして大観衆が見守る状況でした。にも関わらず彼らは1-1の難しい状況を「性格(キャラクター)の強さ」で克服して見せました。

確かに冷静にU-18レベルを見た時に、シティとリバプールとの実力差はあります。上記したようにリーグ戦ではリバプールに10ポイント。シティには20ポイントもの差を付けられています。しかし、個人的にはアカデミーは結果がすべてではないと思っています。彼らは発展途上であり、成長サイクルの真っただ中です。チームとして成功を収めることも素晴らしいですが、それよりも1人1人が成長できているかどうかの方が重要でしょう。結果を見るなら、今回のユースカップのようなトーナメント戦での勝利の方が価値があるように思います。個人の成長と、チームとしての団結力を計る尺度になるからです。

優勝セレモニーでの喜びを爆発させる姿は、何度見ても良いモノですね...。特に今シーズンのようにトップチームが不甲斐ない姿を晒したシーズンの締めくくりとして、これ以上最高な事はないでしょう。若者たちはトップチームに欠けているものを見せてくれました。このクラブが何であるのかを想い出させてくれました。

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今回のユースカップの栄光は、後世に語り継がれることになります。そして、彼らはこの栄光に恥じる事のないキャリアを歩む必要があります。願わくは5年後、このチームの全員がトップチームにたどり着くことを。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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